心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No 158 とお(10)の木の灯り~その5「木の葉の標本(腊葉標本)」

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日本青年館のポスターを許可を得て転載しました。

『とおの木』は日本青年館ホールにお納めする、

 妻の10作品の灯りに指定された樹木10種。

 赤松、桂、桐、欅、栗、小楢、杉、栃、朴、山桜。

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「これは50年程前

 私が学生時代につくった葉の標本です。」

路上の朽ちてボロボロになった葉を見慣れた者には

驚きだった。

木から採ったままの姿で50年とは。

妻は、

「今、木にくっついている葉よりきれい!」と

感嘆の声をあげた。 

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『あがりこ大王』を訪ねた翌日。

森林組合長さんからのお誘いで森林組合を訪ねた。

組合長室で専任指導員の方にお目にかかり

腊(さく)葉標本を見せていただいた。

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葉を傷めないようにしながら、

一日2回、それを葉の状態を見ながら1ヶ月間

吸取紙に葉を挟んで水分をとる作業が続くとのこと。

さぞ注意力と根気のいる作業だろう。

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作業を通して今も思い出すのだろうか・・・

均一じゃないからね!

大変さがにじんでた。

自然相手はこちらが決めたとおりには行かないということか。 

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それにしても、標本づくりを指導された先生も

すごい方だと思った。

標本づくりを通して学生たちに、

木を愛することと自然とは何かを教えたのだ。

それが50年後の今も教え子の中に宿っているのだから、

本当にすごいと思う。

 

標本を一生懸命作り、今も大事に保存している元学生が

まぶしく見えた。

そう見えるのは、私が学生時代、

担当教官が嘆くほど大学の勉強をしなかったし、

その恩師に60過ぎてもまだおしかりを受けるからかも知れない。

 

それにしても見事な標本だった。

森林組合長室で出会った葉の標本に、

妻と二人で感激した。

 

 

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 三日目は秋田県林業試験研修センターを訪ねた。

森林組合長さんが会議の合間をぬって駆けつけてくれた。

葉の標本をつくられた方はここの元センター長とのことで、

同席され、さらに野外施設をご案内くださった。

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木を巡る感動いっぱいの三日間でした。

木との出会い、

そして、また忘れられない人との出会いでした。

出会った木と出会った人々すべてに

心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。

 

行って良かったねえ、

ありがたいねえ。

今日もまだ二人して言ってます。

(2016.5.21 記)

No.157 とお(10)の木の灯り~その4「鳥海山麓『あがりこ大王』の地を訪ねて」

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『あがりこ大王』は

鳥海山麓の湿原奥にある奇怪なブナの巨木。

その場に立って、

この奇怪こそ、

人を惹きつけるのだと思った。

 

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 (奇怪な樹形は多い。)

 

 ご案内の森林組合長さんは、

木の根元で、

木を指さしながら

木の話をしてくださった。

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 炭焼き用に切られても

深い雪に埋もれても

竜巻のような強烈な風に見舞われても

生きて、大きくなろうとしているブナの木。

 

そして、ここでは、木に巻き付くツタさえ

まるで蛇のように

幹にきつく巻き付いているように見えた。

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鳥海山麓湿原は

厳しい自然の中で

必死に生きる木々の生命力に満ちていた。

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ホールの木の灯りをつくる妻は

森林組合長さんの木の話に耳をそばだてながら

『あがりこ大王』への湿原の木道を往復した。

ここに来なければ味わえない木とのふれあいがあった。 

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 当日は森林組合長さんご夫妻に日が落ちるまで

鳥海山を望む一帯を木を中心にご案内いただいた。

互いに夫婦連れで同年代の4人組となり、

妻には気分が少し楽になったかもしれない。

このような配慮にも感謝した。 

 

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この日は晴天で、

雪の鳥海山は格別であった。

鳥海山が眼前に広がるたびに、

妻と私は「おー。」

ひと山越えては「おー。」

見晴らしの良い高原に出ては「わぁー。」

ご案内くださった森林組合長さんの

心憎いばかりのコースどりに

雪の鳥海山も堪能した。

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そうこうしているうちに

八塩山を越えて満開の黄桜の花見会場に着いた。

それがまた見事と言うしかない黄桜だ。

見たことのないような花の膨らみと色具合。

桜に吸い寄せられるように

妻と二人で写真を撮りつづけた。

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しかしさらに驚くべきは、

桜一面の広大な場所に

花見客は私たち4人だけだった。

日曜日の夕暮れ時、

いくら見渡しても他に人は見えなかった。

(昼は歌謡ショーもあり賑わったらしい。)

独り占めの気分で桜を楽しませてもらった。

こんな贅沢は

きっともうないだろう。

 

桜が見頃の公園に夜のとばりが下りた頃

妻のつくった試作(『山桜』)のステンドグラスを

森林組合長さんご夫妻に見ていただきたいと思った。

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他に誰もいない暗くなった公園の東屋。

そっとあかりを点灯した。

ほんのりした明るさと静寂が

あたりをつつんだ。

お二人にホールのあかりのイメージを

妻が話した。

 

喜んでいただけたようで嬉しかった。

 

※この訪問で、森林組合長さんと奥様には

 何から何までお世話になりました。

 貴重な取材の一日となりました。

 本当にありがとうございました。

 また、私たちが鳥海山麓を訪ね、

 森林組合長のご案内を頂けたのは、

 ホール代表と専務のお力添えのお陰でした。

 心より感謝申し上げます。

 

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※『あがりこ大王』の子どもかな?

 根元近くで見つけたブナの芽と種

(2016.5.15 記)

No.156 ブログ4周年「星空のドームランプ~義兄を偲んで」

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(2008年制作 「星空のドームランプ~義兄を偲んで」)

 

今年も5月の連休がきた。

ブログを始めたのがこの連休だった。

息子に手伝ってもらって何とか立ち上げた。

もう4年がたった。

その間息子に二人目が生まれ、すでに3歳。

新しいことはどんどん起きて、月日は流れる。

妻も元気にステンドをつくり続けている。

幸いに見てくれる人もお客様も増え、忙しくしている。

 

出来事は目の前に次から次へと現れ流れていく。

しかし遠い過去の出来事は静かに湧いてくる。

湧いてくると、脳裏にとどまり消えようとしない。

亡き兄のことが思い出される。

 

ブログ第1回目に載せたのは兄を偲んで作った妻のこの作品だった。

(第1回目のブログです。ご笑覧ください。http://bit.ly/1T01Agq )

(このときのブログ作成のてんやわんやを伝える息子のブログです。   http://bit.ly/1VKUOie )

 

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(2009年 第一回個展より)

 

   「兄へ」

四方は見渡す限りの水田。

私の村は小学生十数人の小さな村だった。

高校生だった私の兄は、私たちみんなを山の分校に連れて行き、

「山の子どもたちとも一緒にあそべばえったぁ(遊ぶといいよ)。」と

小さな分校に泊まらせた。

照れながら、私たちは分校の子どもたちと川で遊んだ。

山奥の川の水のあまりの冷たさに驚き、

みんな、悲鳴をあげた。

悲鳴をあげながら、分校の子どもたちとうちとけていった。

遠い昔の夏の一コマがどうしてこんなに鮮烈によみがえるのだろうか。

思い出すといつも兄の顔も一緒だ。

いつも笑顔だ。

 

「村には文化がねえもんなあ。人の暮らすぃには必要だべぇ。」が兄の口癖だった。

村のどこにでもあるような我が家の作業小屋が特設舞台会場となった。

舞台の上に掲げられた横断幕は『村の文化祭』だった。

村中の大人、子ども、お年寄りが押し寄せてきて、

作業小屋は冬なのに熱気で暑苦しくなった。

兄の友達が何人か応援にかけつけ、兄を支えてくれたようだ。

兄も好きな落語を一席。

兄の紅潮した顔とうわずった声を思い出すと、

私は息苦しさと共に胸があつくなる。

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(2015年 市民文化祭)※兄の唱えたあの“文化祭”

 

兄は田舎の農家における長男の宿命を背負いながら、

村を変えようと必死に生きた。

私は小さい頃から兄が大好きでいつも同じようにしたかった。

その兄の生き方が少しでも学べただろうか。

何か少しでもできただろうか。

私はとても自信がない。

 

兄には世話になるばかりだった。

妻との結婚の時は、

兄は夜行で上京し、妻の父親に挨拶してくれた。

兄に会って、むずかしい顔の義父の表情がゆるんだ。

そして、兄は来たその日の夜行で秋田に帰った。

 

結婚してからは、毎年妻と、

子どもが生まれてからは家族みんなで田舎に帰った。

「よぐ来たなあ。えがった、えがった。」と

いつも嬉しそうに迎えてくれる兄だった。

妻も子どもも、田舎と兄が大好きだった。

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(2013年 第二回個展)

その兄が2008年に亡くなった。

葬儀を終えてまもなく妻がこの作品を作った。

私にもとても嬉しい作品だった。

ひとり静かにこの作品を見ていると、

兄にひと言つぶやきたくなる。

「夏の星空だば 綺麗だもんなあ。いっぺぇー、見てけれぇ。」

(2016.5.5 記) 

No.155 川越「ローザ・ロッサ」訪問~お礼と打合せ

 

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川越八幡通のブティック「ローザ・ロッサ」を二人で訪ねました。

昨年夏、妻の作品展を行ったお店です。

 

片道2時間、距離40キロも、

さわやかな好天で、気持ちよいドライブでした。

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ローザ・ロッサでは、

長く借りた作品のお詫びとお礼を述べ、

それに2回目の作品展時期の打合せをしました。

昨年の作品展は暑かったので、

今年は11月としました。

作品を直接見ていただける機会があることは、

本当にありがたい、幸せなことです。

このところ、忙しくなることばかり増えているようですが、 

お声かけをしていただいた時はその気持ちをありがたく頂戴し、

心を込め、一生懸命返作品で返していくだけなのかなあ・・・

妻の様子を見ていてそう思います。

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(2016.5.3 記)

No.154 とお(10)の木のあかり~その3「観察&試作」

「とおの木」は妻がご依頼受けた伝統ある演奏会ホールに

納める10作品の灯りに指定された樹木。

桂、桐、栗、欅、山桜、杉、栃、小楢、朴、赤松の10種。

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 (「山桜」の試作 2016年4月)

 

街路樹の育った葉

ハートだ!

これも桂の木!

 

「とおの木」のうちの多くが我が家の近くにも

生えていると妻は言います。

何しろ2月から「とおの木」のいろいろなことを知りたいと

集めた図鑑や木に関する本を繰り返し読み、

カメラ、メモ帳、スケッチブックを携えて出歩いています。

デザインが決まるまでは続くでしょうね。

 

「とおの木」の冬芽から青葉に至るまでの様子を

妻は自分で撮った写真から整理しました。

ご覧ください。

 

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 妻は近所、市内、市外の中からとおの木を見つけ、

それぞれ観察用の木を特定しました。

私は参加する時間的余裕も気持ちもなく

「気をつけて」「無理しないで」コール。

遠い所に3,4回車を出しただけ。

10カ所も繰り返し通い続けるその行動に

行かないことに決めておいて良かったと

しみじみ思います。

 

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ここにまとめたものを載せましたが、

観察者の妻の感動がまるでありませんね。

よろしかったら、妻のつぶやきのまとめ”togetter”をご覧ください。

 

http://togetter.com/li/964200

『10の木の灯り~その1』あとりえ  悠

「 2017年の春に向けて制作する灯りは木がモチーフです。10種類の木材を使ったお部屋の扉横につける灯りを制作するための準備です。灯りの制作に向けての日々のツイートや冬の木の観察から春の芽吹きまでと試作の灯り制作途中までをまとめました。」
 

「10の木の灯りには花や実、葉、樹皮、木材の感じや繋がる生き物等々などをモチーフとして入れたいと考えています。 塗装のこともあり実際に木材の色と合わせるのは難しいと思われますが扉に使われる木材の色に似た色を灯りにも入れたいなぁと今は思っています。 」

 

(2016.4.27 記)

 

 

No.153 吉祥寺Paleんtte(パレント)~春のフェア前日

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前日の22日は朝から妻と作品搬入の準備。

 

窓を開けたら、

すぐ近くの林からウグイスの鳴き声。

 

このウグイスも春先は、“ホー、ホケホケホケー”

おやおや今年も、新人さんがデビューしたんだね-。

などと思っていたら、

もう“ホーホケキョ”です。

ウグイスの親戚でもないのに、

鳴き方に安堵したりするものです。

 

そんなウグイスの声を背に準備。

3時には車に作品を積み込み、

吉祥寺パレントに向かいました。

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店長さんの

“ここもどうぞ。”

“こちらも使ってください。”

のお言葉に甘えて飾っているうちに、

婦人服のブティックは

妻のステンドの作品で一杯になってしまいました。

申し訳ないような、でもありがたいような・・・

4時間で作品展示を完了。

 

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今回のフェアには、

個展以降制作の作品でブログで紹介されてない作品が

何点かありますので紹介します。

 

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『春を待つうさぎのランプ』

 

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 『節分草と東一華の灯り~青』

 

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『蓮のアロマランプ』

 

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『赤い金魚のアロマランプ2016』

 

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キャンドルホルダー~きつね・金魚』

 

(2016.4.22 記)

No.152 “きつね”の初作品~ミニパネル

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「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする。」

と言って、濡れて牡丹色になった両手を母さん狐の前にさしだしました。

母さん狐は、その手に、はーっと息をふっかけて、

ぬくとい母さんの手でやんわりと包んでやりながら、

「もうすぐ暖かくなるよ。・・・」

※「手ぶくろを買いに」新見南吉作 より

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これまでうさぎやリスなどを作品のモチーフに入れてきましたが

作品をよく見てくださる方がきつねを大好きと知って

きつねの作品を約束したそうです。

 

妻が作品づくりのために集めた絵本の一部です。

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きつねの出てくる有名な絵本は多いですね。

そして、子ぎつねがかわいい!

 

 

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今回は

ブラストした後に絵付けをちょっぴり施して仕上げました。

こんなふうに趣きが変わるんですね。

 

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               (作品サイズ12.3cm×16.5cm)

夕日を受けてもまた趣きが変わります。

硝子の特性でしょうか。

1枚1枚の手作り硝子そのものが芸術作品と言われます。

 

23日(土)24日の吉祥寺paleんtte(パレント)さんに出品します。

※参照http://bit.ly/1TWZzUc

 

 (2016.4.20 記)