心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.224 おおましこの灯り

f:id:you3113:20180710070210j:plain『おおましこ』は、寒くなった頃に見られる野鳥。

森や林の周辺などで「ピイーッ ピイーッ」と

短い声で鳴くそうです。

 

メスとオスは向かい合う面で…

ご依頼のお二人のご要望でした。

加えて、奥様から

オスを少し大きめに…

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これまで私の聞いたことのない『おおましこ』ですが、

ご主人のお友だちの方が撮影した写真を

見せて下さいました。 

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愛くるしい姿。

何とも言えないピンクっぽい赤。

妻はその色を出したいと必死の硝子選び。 

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ご夫妻のご依頼の最初の声は、

月を見る2羽のうさぎ。

 

満月は黄色にもできますとの妻の言葉に、

ご主人は、

青の配色で…

 

それが、

うさぎと月の2面における統一感を醸し、

味わい深い青の静けさを楽しめるものとなりました。

 

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右上隅の天使はサプライズ!?

妻に言われてから、気づきました。 確かに天使が…

私が知らないで撮影し、

入ってしまいました。 

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偶然とは言え、 

私の気持ちに他なりません。

我が家に2度訪れた際に、

お二人のこれまでの人生に

ほんの少しだけふれさせていただきました。

二人で共に生きることを決められたお二人の

幸せを心から願う私の気持ちです。

これからのお二人の人生が

天使にいつも見守られていますように…

(2018.7.15 記) 

No.223 パッカーズの灯り~ランボー・フィールドの空

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アメリカのわずか人口10万の町にある

ランボー・フィールドをフランチャイズとする

NFLグリーンベイ・パッカーズ

その大ファンという九州にお住まいの方からの

ご依頼でした。

ランボー・フィールドまで数度応援に行かれたそうで、

相当熱烈なファンの方とお見受けしました。

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アメフトを見る機会のなかった妻は、

デザイン作成にかなり時間を要していました。

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ご依頼者からのご意見を伺い、

デザインを確認しながらの作業となりました。

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また、

妻は球場のランボー・フィールドの建物も入れたいと

ティファニー工法で表現しました。

ステンドグラスの灯りらしくなりました。

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作業後半は、妻もパッカーズというチームの魅力を

語るようになっていました。

チームは北米4大プロスポーツ唯一の

「市民が所有するチーム」で、

小さな街の市民球団が大都市のお金持ちのチームに

立ち向かう姿が「ダヴィデとゴリアテの神話のように」

支持されているそうです。

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何もないがNFLタイトルならあるぞ!

なるほど!

応援したくなるチームなんですね。

(2018.7.1 記)

No.222 日本青年館ホールホワイエの「桐の灯り」~「木の灯り」(其の28)

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「木の灯り」青年館ホールさ納めたのは、

去年夏だったものなあ。

そのあと、

見たいという声に後押しされだべか、

青年館ホールから追加注文あったもの。

春に、ホールのホワイエにこの「桐の灯り」、

取り付けらえだった。

 

たいした立派な鉄の枠もこしらえでくれで、

ありがでゃあ。

催事のチケットあれば

誰でもいづでも見れるどー。

佐藤佳奈さんの書と一緒だもの。

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秋田の森林組合長さん、見てけれえ。

桐の花のうしろの山、

ご夫婦で案内してけだ、あの鳥海山だべえ。

本当にお世話になったすなあ。

また、お会いしたいすなあ。

 

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秋田の木がじっぱし使われている青年館ホール。

嬉しいでゃ。

おらの生まれた所の木だすべえ。

そのホールに、ちま(妻)のステンドだべぇ。

ありがでゃ。

えがっだあ。

 

秋田の言葉だば、

分かりにくかったすべえ。

ごしゃがにゃ(怒らない)でけれ。

へぇば。

 

 《方言と一冊の本》

 「おら おらで ひとり いぐも」(若竹千佐子著)

 方言の威力と表記の工夫に感心。

 また主人公74歳の生活力と絶え間ない想像力、

 圧倒されました。

 その影響か…

 今回突然、秋田弁で書きたくなりました。

 ー 熟考や節度ってねべぇか?

   あえー、すかたねっちゃ。

 

 ところで、

 作中の主人公桃子が

 オレオレ詐欺に引っかかっての回想場面、

 はき出すその言葉にハッとしました。(本文P51)

 子どもがかわいくて

 それで引っかかって、

 金を出すのではない。

 『子どもの生きる喜びを横合いから手を伸ばして

  奪ったような気がして仕方がない』

 それが親だ。

 我が子への贖罪なのだ!

 桃子のこの言葉に、

 私は我が子とのことを振り返って、

 そんなことはないと、

 言い切れる自信はありませんでした。

 

 『おら おらで ひとり いぐも』

 刺激的な一冊でした。 

 

 (2018.6.16 記)

No.221 茶々ちゃんと野の花のミニパネル

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朝、目覚めて

出窓の茶々ちゃんに

「おはよう」

 

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陽が昇り

抜けるような青空。

そして 澄んだ空気。

 

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昼下がり。

茶々ちゃんの下に

茶々ちゃん。

 

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いつまで散歩するの?

日が暮れたし…

おうち、帰ろうよ。

 

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今日が終わったよ。

茶々ちゃん、

ありがとう。

 

 

1ヶ月ほど前、たくさんの野の花の図案を並べ、

思案している妻に気づきました。

花の数も増えていきました。

真ん中にはかわいい犬の写真。

少し寂しげですが…

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かわいがっていた犬を亡くされた方からの

ご依頼の作品だとすぐ分かりました。

 

できた作品の茶々ちゃんを見て、

場所や時間で茶々ちゃんはどんな表情を見せるのか、

私は写真を撮りたくなりました。

※最初からの5枚はこの時の撮影したものです。

 

 

そして、ブログのためのご依頼主の方とのやりとりから

茶々ちゃんのことを教わりました。

 

生後3ヶ月後位で通称「犬捨て山」に保護され、

その1週間後にもらい受けたこと。

その時に、ご自分がこの犬の最期を看取ると

決められたこと。

とにかく茶々ちゃんは散歩が好きで、

家に帰りたくないコの字のポーズもあったこと。

15歳まで病気もなく、

老いて亡くなったこと。

昨年春はつらくて歩けなかった駅までの道も

かつて茶々と見た野の花や樹木を見ながら

今は歩けるようになられたこと。

そして、

「喪失感を埋めてくれるのはたくさんの思い出」と

加えられていました。

 

大切なものを失ったときの人の悲しみの深さは

いかばかりでしょうか。

しかし、

失ったものとの思い出がそれを埋めてくれるとの

ご依頼主の方の言葉に

私が感じたのは、

悲しみの先にある救い…

希望。

そう思って撮った写真をもう一度見ましたら

茶々ちゃんの寂しげだった表情が

やさしくやわらいでいるように見えました。

 

 

妻の作った小さなパネルが、

茶々ちゃんをかわいがってこられた方の

思い出の片隅に加えさせていただけたことを

嬉しく思います。

 

(2018.6.4  記)

No.220 菊咲一華(キクザキイチゲ)の灯り

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※作品名「青いイチゲの灯り」 現在パレントにて展示中

3月に作った妻の作品です。

秋田等北日本で見られる青い菊咲一華(キクザキイチゲ)を

サンドブラストした青色硝子。

その青の吸い込まれそうな透明感、

ふか~い湖の底をのぞくようです。

家族で帰省時よく訪れた田沢湖を思い浮かべます。

日本一の深さと摩周湖に次ぐ透明度(私の子ども時代)

北国のそんな湖畔に春を告げるイチゲ。

顔を出す頃、

湖畔は一気に春の装いと化すのでしょう。

5月中旬、

今、そんな時期でしょうね。

 

一枚のアンティーク硝子(宙吹硝子)に

あれこれ想像が湧いてきます。

たった一枚のピースで。

すごい硝子です。

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実は、妻のこの作品は、

2年前に見た鳥海山山麓での菊咲一華を

モチーフにしているとのこと。

私には見た記憶がなかったのですが、

妻はその可憐さに感激していたようです。

「あったかなあ…」

妻は写真も撮っていたとのこと。

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※2016年5月 鳥海山山麓にて妻の撮影

なるほど。咲いていたんですね。

ん~、見たような気がしてきました…

 

このとき妻の作りたいと思った菊咲一華は、

2年経て「青いイチゲの灯り」として完成しました。  

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※ピースごとに作り、並べた状態

この青、いい硝子だねえと言ったら、

妻がサンゴバン社(仏)のアンティーク硝子と、

教えてくれました。  

北斎富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」の浪も

この硝子を使って表現したそうです。

※参照→https://bit.ly/2IC9jVe

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※灯りを通すと違う顔に見えます。

妻はアンティーク硝子はそのものが芸術品だと言います。

今も昔と変わらず職人の方が吹いて作る硝子です。

素人の私が見ても何となくその良さは分かります。

硝子なのに、置く場所や時間でその表情は変わり、

まるで生き物のようです。

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この硝子のお陰で、妻の表現したい日本の四季が

より深まるように思います。

それ故か妻は作品にあったアンティーク硝子を

いつも探し求めます。

この数年、口惜しいことに

世界有数のメーカーの生産中止や廃番等が続きます。

もっとこの硝子の良さが世の中に伝わるといいのにと

思います。

 (2018.5.14 記) 

No.219 作品からの呼びかけ?~紀ノ川薔薇文様のアロマランプ&牡丹のアロマランプ

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※ついつい、見てしまう作品… 『紀ノ川薔薇文様のアロマランプ』

この作品を見ているのが好きでねえ。

何度みても飽きないし、いくら見てもいいんですよね。

やがて、私はこうして何度も作品を見ているのは、

私が作品に呼びかけられるからじゃないか、

なんて思ったりして。

そのうちに、

作品に心があるのか!?

ふと思ったり…

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※パレントフェアにて出品。時と所によって違う表情になります。即日売約済

そんな時、比較認知科学者の森山徹氏が

「ダンゴムシに心はある。石にもある」

と唱えていると知りましてね。

ならステンドの作品に心がないわけがない!

と森山氏著『ダンゴムシに心はあるのか』を読みました。

冒頭著者の『私のいう心とは』が長々続き…

ちょっと不安…

なんか違うかなあ。

それでも、その後の緻密に延々と続く歩行実験は、

ダンゴムシがかわいくなり、付き合いました。

ダンゴムシ、大好きになりましたよ。

それで、ダンゴムシの心って?

残念ながら、私にはよく分かりませんでした。

 

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 ※この作品も困ったことに呼びかけて来ましてね…『牡丹のアロマランプ』

ダンゴムシに心を求めることをあきらめたら、

西郷竹彦氏の文芸教育論を突然思い出しました。

40年前に私が学んだ氏の理論では、

『呼びかけられた』のは、『呼びかけられた』と

思った私がいるということ。

『民話の蛇になった女から何を読み解くか』で西郷氏は

実家に戻された嫁が途中の湖で水を飲もうとしたとき、

湖面に映った蛇になった自分の姿に驚くのは、

自分の姿が蛇に見えた一人の人間がそこにいた、と。

それは語り手の中に語り手の真実があるということ。

 

これはいい。

これなら、

妻の作った作品に心を感じる私がいてもいいかあ。

そういうことにして、

あれこれ考えるのはもうおしまいにしました。

  

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※青緑のアンティーク硝子は、困るほどいい! 完成直後に売約済み

「ダンゴムシに心はあるのか」の本、他に使えそう。

勤め先のやんちゃな「そら君(仮称)」、

ダンゴムシ、大好きでね。

「集めたダンゴムシ、部屋には持ってこないでね。」

とそら君に言うとき、ダンゴムシの話がいっぱいできそう…

(2018.5.3 記)

追伸

「ダンゴムシに心はあるのか」の本で、

本を売る編集者、出版社のプロ根性をみました。

私のようにとびつく人が相当いたのか半年で第5刷り。

この手の普通は売れない本をねえ。

ただ、著者のダンゴムシ愛はほんといいですね。

救いです。

No.218 日本青年館ホール「木の灯り」(其の27)~「桐の灯り」第貳(だいに)

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※このたび追加注文で日本青年館ホールにお納めした作品

昨年末、日本青年館ホールから再度のご依頼でした。

“今度は催事入場者のどなたにでもご覧いただけますよ。

”なんと嬉しいお言葉でしょう。

妻と大喜びしました。

 

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※2階ホワイエと取付予定の同階階段周辺。

 設置場所は2階ホワイエに続く階段近くに、

佐藤佳奈さんの書と共に展示予定とのこと。

最初はもう一作品を設置条件に合わせて、

「木の灯り」のイメージでとのことでしたが、

打合せの中で「桐の灯り」になりました。

 

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森林組合長さんご夫妻にご案内していただいたときの鳥海山

私は妻の作った「桐の灯り」を見ると、

秋田の鳥海山をご案内くださった森林組合長さんご夫妻を

思い出します。

妻が「桐の灯り」のデザインで2,3日行き詰まったとき、

できた!と嬉しそうに言ってきました。

桐の花の背景を鳥海山にしたら

うまく全体がおさまったとのこと。

その時、一日中時間をかけて鳥海山山麓をご案内くださった

ご夫妻の笑顔も作品に重なって見えるようでした。

妻の孤独で厳しい作品づくりには

いつも誰かの応援があるように思います。

だから、作品を作り続けていられるのでしょう。

 

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※「桐の灯り」2017年制作

今回の「桐の灯り第貳(だいに)」は基盤が同じ物が

どうしても入手できず、妻は思わぬ苦労を重ねていました。 

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 ※前回と今回の基盤は見た目はわずかの違いですが、作る上では別作品。

できあがってみると、廊下歩行者が横から見ても

作品イメージのつかみやすいものになったように見えます。

大勢の人が行き来する賑やかな場ですが、

見る人に爽やかな感じを与えられることを願っています。

妻は基盤の違いをうまく生かしながら制作できたと、

ほっとしていました。

最初の予定よりも設置のための壁工事も

大がかりになるようですが、

いつ、どんなふうに展示されるか

楽しみです。

 

ウルトラマンと桐》

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今年も桐の花が咲き始めました。

私が桐の花で最も印象深いのは、

小田急線祖師谷大蔵駅北側にある広場に立つ桐です。

円谷プロが近くにあるので駅広場にはウルトラマンの像。

何度乗り降りしても広場に行くことはなかったのですが、

たまたま2年前の春、広場に行って、ウルトラマンに驚き、

そのウルトラマンのように大空を見てさらに驚きました。

「おー、こんな所に! 地上高く見事なきれいな桐!」

写真はそのときの一枚です。

この「桐」、ウルトラマン

地球と一緒に守られているような雰囲気を醸し、

ふつふつと何故か可笑しさと嬉しさがこみ上げました。

さらに後日、地域の方から教わりました。

実はこの桐の木、

駅舎改築時に伐採される予定だったものが、

住民の署名活動で中止になり、生き延びたものとのこと。

それから、この広場の桐は私には特別なものとなりました。

20年ほど前切られるはずだった桐の木が、

今春も、駅広場でウルトラマンや地域の方々に見守られて

見事な花を咲かせているでしょう。

   (2018.4.24 記)