心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.227  隠れ家カフェ「 ローズ亭」ふたつの灯り~ローズと翡翠(ひすい)

 

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 「ローズ」~ローズ亭の薔薇文様の灯り

 

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翡翠(ひすい)」~ローズ亭の薔薇の灯り

 

垣根に沿った道からは

つい見落としてしまいそう

ここは隠れ家カフェ『ローズ亭』

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一杯の珈琲を口にするだけなのに

店主のお人柄が醸す店内の雰囲気に

じんわり感じる居心地良さ

忙しいときほど行きたくなる極上のカフェ「ローズ亭」

“心を亡くすと書いて忙しい”なら

珈琲飲んで

亡くした心をとりもどしているんだね

私の大好きな隠れ家カフェ「ローズ亭」 

 

 

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 みどりさんの育てられた「ローズ亭」のお庭の薔薇

 

「ローズ亭」店主みどりさんご依頼のふたつの灯りを

お納めしました。

妻へのご依頼に、

みどりさん、

『私の注文は後でいいから…』

そんな言葉につい、甘えてしまい、

1年と少しお待ちいただいてしまいました。

私の大好きなローズ亭に

妻の作品をお納めできて

私も幸せ。

二つのうち「ローズ」は

家紋も入れ、ご自宅用とのことです。

   

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「ローズ」のピース

 

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翡翠」のピース

 

お納めしたときに

二つの作品を店内に置いて撮影させていただきました。 

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庭の薔薇を臨む窓側に置いたときの「ローズ」

 

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テーブルに置いたときの「翡翠

シャッターを押していると、

みどりさんやお客様に

かわいがってもらってね。

そんな気持ちになりました。

(2018.9.14 記) 

No.226 檀(まゆみ)の灯り~まゆみちゃん、3さい

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まゆみちゃんが 生まれ、

この子が3さいになったらこの子の灯りを。

そうお願いされ…

もう、まゆみちゃんは、3さい。

お約束の「檀(まゆみ)の灯り」ができました。

お披露目とお渡しに、

お母さんとお兄ちゃんとまゆみちゃんが、

訪ねてこられました。

 

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まゆみちゃんの名前は木の檀(まゆみ)からとのこと。

かわいい花や実をつけます。

 

そこに、

まゆみちゃんの

お気に入りのぬいぐるみのブタさんも

いっしょに灯りの中。

まゆみちゃんのお兄ちゃんの描いた

かわいいブタさんが

硝子彫刻されました。

 

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灯りの右上に

小さなテントウムシ2ひき。

見えますでしょうか。

まゆみちゃんの好きなテントウムシです。

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七宝窯で、

硝子を何度も焼いて作りました。

試作を重ねていたら、

あらら、

テントウムシ

あふれてしまいました。

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翌日の

まゆみちゃんの

お母さんからの言葉です。

 

『昨日のステンドグラスのお披露目は、

 私にとっては

 何だか出産にも近い喜びがあり、

 今もその大切な瞬間を思い、

 今もあたたかく、

 幸せが続いています。 …

 

    家族の幸せを噛み締めることのできた

 大事なステンドグラスとなりました。…』
 

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 妻には身に余る言葉です。

 こちらこそ作らせていただきまして

 ありがとうございました。

(2018.8.19 記)

 

追伸

私には忘れられない出来事です。

 妻の作って出したババロア
 どうしても食べようとしないまゆみちゃんに、
 お兄ちゃんが美味しそうに食べ、
 まゆみちゃんのお口にも一さじ。
 お兄ちゃん、ニコ。
 まゆみちゃんもニコッ
 そして、美味しそうに食べるまゆみちゃん。
 ほんのちょっとした出来事。
 私には忘れられない出来事。

こんなこと、あるんですね。 

No.225 インディアンの祈り

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今、この瞬間、

一人の人間でどうなるものでもない…

大自然の前の人間の無力さ。

大洪水で壊れゆく人間の営みが

テレビ画面に流れました。

七夕の頃、過去に例を見ない集中豪雨に襲われた西日本。

その広島県内にある福山市のお店にお納めする作品を

妻はその時に作っていました。

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先週ようやくご注文の作品数点を作り終えて発送しました。

作品はいずれもアメリカインディアンのモチーフ。

笛を吹くと大地を草花が芽吹いて被い、

生き物には命の誕生をもたらすという豊穣の神ココペリ。

それに太陽神のサンフェイス。

こちらは幸福と豊かさと強さの象徴。

 

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妻はご注文のピュアドールオリジナルデザインの他に、

そのデザインを模した作品も作り、

発送する箱の中に入れました。

そうしましたら、

受け取ったお店が、妻の願いを理解して、

こんな紹介をして下さいました。

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押し寄せる大洪水に人はなすすべもない…

それでも人は抗う…

祈ることができます。

ココペリもサンフェイスも

インディアンの祈り

 

7年前の東日本大震災の惨状と日常生活の激変では、

妻は作品をしばらく作れなくなりました。

 

ココペリとサンフェイスの作品を

どんな気持ちで作ったのででしょうか。

祈りなのでしょうか。

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祈りは人を動かす…

そんな気がします。

 

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※作品送付先について

 インディアンジュエリー専門店「ピュアドール」

 アメリカに直接仕入れに行くなど本物で良いものを

 積極的に取り揃えている専門店です。

 突然の作品ご依頼を受けてからもう5年です。

 楽天出店など通販にも力を入れているお店です。

 

台風12号が本州に迫っています。

進路に西日本が入っています。

あまりの被害に復興もままならない状態の中、

再びの被害がないことを祈っています。

 

(2018.7.28 記) 

 

 

No.224 おおましこの灯り

f:id:you3113:20180710070210j:plain『おおましこ』は、寒くなった頃に見られる野鳥。

森や林の周辺などで「ピイーッ ピイーッ」と

短い声で鳴くそうです。

 

メスとオスは向かい合う面で…

ご依頼のお二人のご要望でした。

加えて、奥様から

オスを少し大きめに…

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これまで私の聞いたことのない『おおましこ』ですが、

ご主人のお友だちの方が撮影した写真を

見せて下さいました。 

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愛くるしい姿。

何とも言えないピンクっぽい赤。

妻はその色を出したいと必死の硝子選び。 

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ご夫妻のご依頼の最初の声は、

月を見る2羽のうさぎ。

 

満月は黄色にもできますとの妻の言葉に、

ご主人は、

青の配色で…

 

それが、

うさぎと月の2面における統一感を醸し、

味わい深い青の静けさを楽しめるものとなりました。

 

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右上隅の天使はサプライズ!?

妻に言われてから、気づきました。 確かに天使が…

私が知らないで撮影し、

入ってしまいました。 

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偶然とは言え、 

私の気持ちに他なりません。

我が家に2度訪れた際に、

お二人のこれまでの人生に

ほんの少しだけふれさせていただきました。

二人で共に生きることを決められたお二人の

幸せを心から願う私の気持ちです。

これからのお二人の人生が

天使にいつも見守られていますように…

(2018.7.15 記) 

No.223 パッカーズの灯り~ランボー・フィールドの空

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アメリカのわずか人口10万の町にある

ランボー・フィールドをフランチャイズとする

NFLグリーンベイ・パッカーズ

その大ファンという九州にお住まいの方からの

ご依頼でした。

ランボー・フィールドまで数度応援に行かれたそうで、

相当熱烈なファンの方とお見受けしました。

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アメフトを見る機会のなかった妻は、

デザイン作成にかなり時間を要していました。

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ご依頼者からのご意見を伺い、

デザインを確認しながらの作業となりました。

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また、

妻は球場のランボー・フィールドの建物も入れたいと

ティファニー工法で表現しました。

ステンドグラスの灯りらしくなりました。

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作業後半は、妻もパッカーズというチームの魅力を

語るようになっていました。

チームは北米4大プロスポーツ唯一の

「市民が所有するチーム」で、

小さな街の市民球団が大都市のお金持ちのチームに

立ち向かう姿が「ダヴィデとゴリアテの神話のように」

支持されているそうです。

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何もないがNFLタイトルならあるぞ!

なるほど!

応援したくなるチームなんですね。

(2018.7.1 記)

No.222 日本青年館ホールホワイエの「桐の灯り」~「木の灯り」(其の28)

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「木の灯り」青年館ホールさ納めたのは、

去年夏だったものなあ。

そのあと、

見たいという声に後押しされだべか、

青年館ホールから追加注文あったもの。

春に、ホールのホワイエにこの「桐の灯り」、

取り付けらえだった。

 

たいした立派な鉄の枠もこしらえでくれで、

ありがでゃあ。

催事のチケットあれば

誰でもいづでも見れるどー。

佐藤佳奈さんの書と一緒だもの。

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秋田の森林組合長さん、見てけれえ。

桐の花のうしろの山、

ご夫婦で案内してけだ、あの鳥海山だべえ。

本当にお世話になったすなあ。

また、お会いしたいすなあ。

 

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秋田の木がじっぱし使われている青年館ホール。

嬉しいでゃ。

おらの生まれた所の木だすべえ。

そのホールに、ちま(妻)のステンドだべぇ。

ありがでゃ。

えがっだあ。

 

秋田の言葉だば、

分かりにくかったすべえ。

ごしゃがにゃ(怒らない)でけれ。

へぇば。

 

 《方言と一冊の本》

 「おら おらで ひとり いぐも」(若竹千佐子著)

 方言の威力と表記の工夫に感心。

 また主人公74歳の生活力と絶え間ない想像力、

 圧倒されました。

 その影響か…

 今回突然、秋田弁で書きたくなりました。

 ー 熟考や節度ってねべぇか?

   あえー、すかたねっちゃ。

 

 ところで、

 作中の主人公桃子が

 オレオレ詐欺に引っかかっての回想場面、

 はき出すその言葉にハッとしました。(本文P51)

 子どもがかわいくて

 それで引っかかって、

 金を出すのではない。

 『子どもの生きる喜びを横合いから手を伸ばして

  奪ったような気がして仕方がない』

 それが親だ。

 我が子への贖罪なのだ!

 桃子のこの言葉に、

 私は我が子とのことを振り返って、

 そんなことはないと、

 言い切れる自信はありませんでした。

 

 『おら おらで ひとり いぐも』

 刺激的な一冊でした。 

 

 (2018.6.16 記)

No.221 茶々ちゃんと野の花のミニパネル

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朝、目覚めて

出窓の茶々ちゃんに

「おはよう」

 

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陽が昇り

抜けるような青空。

そして 澄んだ空気。

 

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昼下がり。

茶々ちゃんの下に

茶々ちゃん。

 

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いつまで散歩するの?

日が暮れたし…

おうち、帰ろうよ。

 

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今日が終わったよ。

茶々ちゃん、

ありがとう。

 

 

1ヶ月ほど前、たくさんの野の花の図案を並べ、

思案している妻に気づきました。

花の数も増えていきました。

真ん中にはかわいい犬の写真。

少し寂しげですが…

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かわいがっていた犬を亡くされた方からの

ご依頼の作品だとすぐ分かりました。

 

できた作品の茶々ちゃんを見て、

場所や時間で茶々ちゃんはどんな表情を見せるのか、

私は写真を撮りたくなりました。

※最初からの5枚はこの時の撮影したものです。

 

 

そして、ブログのためのご依頼主の方とのやりとりから

茶々ちゃんのことを教わりました。

 

生後3ヶ月後位で通称「犬捨て山」に保護され、

その1週間後にもらい受けたこと。

その時に、ご自分がこの犬の最期を看取ると

決められたこと。

とにかく茶々ちゃんは散歩が好きで、

家に帰りたくないコの字のポーズもあったこと。

15歳まで病気もなく、

老いて亡くなったこと。

昨年春はつらくて歩けなかった駅までの道も

かつて茶々と見た野の花や樹木を見ながら

今は歩けるようになられたこと。

そして、

「喪失感を埋めてくれるのはたくさんの思い出」と

加えられていました。

 

大切なものを失ったときの人の悲しみの深さは

いかばかりでしょうか。

しかし、

失ったものとの思い出がそれを埋めてくれるとの

ご依頼主の方の言葉に

私が感じたのは、

悲しみの先にある救い…

希望。

そう思って撮った写真をもう一度見ましたら

茶々ちゃんの寂しげだった表情が

やさしくやわらいでいるように見えました。

 

 

妻の作った小さなパネルが、

茶々ちゃんをかわいがってこられた方の

思い出の片隅に加えさせていただけたことを

嬉しく思います。

 

(2018.6.4  記)