心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.228 宵待草の灯り~月夜にうさぎ二羽

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 ウサギ2羽

何を見ているのでしょうか

何を思うのでしょうか

 

 

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私には、宵待草(いわゆる待宵草)と言えば、

先ず「待てど暮らせど来ぬ人を…」の竹久夢二の歌です。

夕暮れ時に黄色い花を開き、

夜に咲き続け、朝にはしぼむこの花の儚さを

しみじみ感じさせる歌です。

野外で見つけたときの待宵草は、

私の中に抒情豊かなメロディーとともに夢二の詩が流れて、

ちょっぴりもの悲しい気分にさせる不思議な花です。

 

 

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 ところが、妻の作ったこの「宵待草の灯り」、

月と宵待草とうさぎからは、

儚さやるせなさは感じられません。

その理由はうさぎ2羽とその佇まいのようです。

寄りそった2羽には幸せな空気が流れています。

聞けば、結婚記念にとご依頼された作品のデザインを

もとにして作られたとのこと。

なるほど!

納得です。

幸せな、満ち足りた空気感の宵待草です。

これはこれで、いいものですね。

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ご結婚記念用にとご依頼くださったお二人に、

作品を通して作り手の思いを届けたのでしょうね。

いろいろなことはあるでしょうが、

末永くお幸せにとの作り手の思いです。

 

ところで、今日24日は中秋の名月

見られるといいですね。

 

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  この作品を展示中の保育園

妻はかつてお世話になった保育園に

季節感を味わえるように作品を月ごと替えながら

展示させていただいています。

この作品は9月展示用に作りました。

いつも園の玄関に妻の作品が引き立つように、

作品世界を演出してくださって感謝しています。

先日撮影のために一時引き取りに伺いましたら、

作品の周りには季節の元気な栗が添えられていました。

このような展示を10年以上続けてくださっています。

展示をして観ていいただけることがまた、

作り手としての妻の励みです。

本当に感謝しております。

(2018.9.24 記)

No.227  隠れ家カフェ「 ローズ亭」ふたつの灯り~ローズと翡翠(ひすい)

 

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 「ローズ」~ローズ亭の薔薇文様の灯り

 

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翡翠(ひすい)」~ローズ亭の薔薇の灯り

 

垣根に沿った道からは

つい見落としてしまいそう

ここは隠れ家カフェ『ローズ亭』

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一杯の珈琲を口にするだけなのに

店主のお人柄が醸す店内の雰囲気に

じんわり感じる居心地良さ

忙しいときほど行きたくなる極上のカフェ「ローズ亭」

“心を亡くすと書いて忙しい”なら

珈琲飲んで

亡くした心をとりもどしているんだね

私の大好きな隠れ家カフェ「ローズ亭」 

 

 

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 みどりさんの育てられた「ローズ亭」のお庭の薔薇

 

「ローズ亭」店主みどりさんご依頼のふたつの灯りを

お納めしました。

妻へのご依頼に、

みどりさん、

『私の注文は後でいいから…』

そんな言葉につい、甘えてしまい、

1年と少しお待ちいただいてしまいました。

私の大好きなローズ亭に

妻の作品をお納めできて

私も幸せ。

二つのうち「ローズ」は

家紋も入れ、ご自宅用とのことです。

   

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「ローズ」のピース

 

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翡翠」のピース

 

お納めしたときに

二つの作品を店内に置いて撮影させていただきました。 

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庭の薔薇を臨む窓側に置いたときの「ローズ」

 

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テーブルに置いたときの「翡翠

シャッターを押していると、

みどりさんやお客様に

かわいがってもらってね。

そんな気持ちになりました。

(2018.9.14 記) 

No.226 檀(まゆみ)の灯り~まゆみちゃん、3さい

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まゆみちゃんが 生まれ、

この子が3さいになったらこの子の灯りを。

そうお願いされ…

もう、まゆみちゃんは、3さい。

お約束の「檀(まゆみ)の灯り」ができました。

お披露目とお渡しに、

お母さんとお兄ちゃんとまゆみちゃんが、

訪ねてこられました。

 

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まゆみちゃんの名前は木の檀(まゆみ)からとのこと。

かわいい花や実をつけます。

 

そこに、

まゆみちゃんの

お気に入りのぬいぐるみのブタさんも

いっしょに灯りの中。

まゆみちゃんのお兄ちゃんの描いた

かわいいブタさんが

硝子彫刻されました。

 

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灯りの右上に

小さなテントウムシ2ひき。

見えますでしょうか。

まゆみちゃんの好きなテントウムシです。

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七宝窯で、

硝子を何度も焼いて作りました。

試作を重ねていたら、

あらら、

テントウムシ

あふれてしまいました。

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翌日の

まゆみちゃんの

お母さんからの言葉です。

 

『昨日のステンドグラスのお披露目は、

 私にとっては

 何だか出産にも近い喜びがあり、

 今もその大切な瞬間を思い、

 今もあたたかく、

 幸せが続いています。 …

 

    家族の幸せを噛み締めることのできた

 大事なステンドグラスとなりました。…』
 

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 妻には身に余る言葉です。

 こちらこそ作らせていただきまして

 ありがとうございました。

(2018.8.19 記)

 

追伸

私には忘れられない出来事です。

 妻の作って出したババロア
 どうしても食べようとしないまゆみちゃんに、
 お兄ちゃんが美味しそうに食べ、
 まゆみちゃんのお口にも一さじ。
 お兄ちゃん、ニコ。
 まゆみちゃんもニコッ
 そして、美味しそうに食べるまゆみちゃん。
 ほんのちょっとした出来事。
 私には忘れられない出来事。

こんなこと、あるんですね。 

No.225 インディアンの祈り

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今、この瞬間、

一人の人間でどうなるものでもない…

大自然の前の人間の無力さ。

大洪水で壊れゆく人間の営みが

テレビ画面に流れました。

七夕の頃、過去に例を見ない集中豪雨に襲われた西日本。

その広島県内にある福山市のお店にお納めする作品を

妻はその時に作っていました。

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先週ようやくご注文の作品数点を作り終えて発送しました。

作品はいずれもアメリカインディアンのモチーフ。

笛を吹くと大地を草花が芽吹いて被い、

生き物には命の誕生をもたらすという豊穣の神ココペリ。

それに太陽神のサンフェイス。

こちらは幸福と豊かさと強さの象徴。

 

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妻はご注文のピュアドールオリジナルデザインの他に、

そのデザインを模した作品も作り、

発送する箱の中に入れました。

そうしましたら、

受け取ったお店が、妻の願いを理解して、

こんな紹介をして下さいました。

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押し寄せる大洪水に人はなすすべもない…

それでも人は抗う…

祈ることができます。

ココペリもサンフェイスも

インディアンの祈り

 

7年前の東日本大震災の惨状と日常生活の激変では、

妻は作品をしばらく作れなくなりました。

 

ココペリとサンフェイスの作品を

どんな気持ちで作ったのででしょうか。

祈りなのでしょうか。

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祈りは人を動かす…

そんな気がします。

 

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※作品送付先について

 インディアンジュエリー専門店「ピュアドール」

 アメリカに直接仕入れに行くなど本物で良いものを

 積極的に取り揃えている専門店です。

 突然の作品ご依頼を受けてからもう5年です。

 楽天出店など通販にも力を入れているお店です。

 

台風12号が本州に迫っています。

進路に西日本が入っています。

あまりの被害に復興もままならない状態の中、

再びの被害がないことを祈っています。

 

(2018.7.28 記) 

 

 

No.224 おおましこの灯り

f:id:you3113:20180710070210j:plain『おおましこ』は、寒くなった頃に見られる野鳥。

森や林の周辺などで「ピイーッ ピイーッ」と

短い声で鳴くそうです。

 

メスとオスは向かい合う面で…

ご依頼のお二人のご要望でした。

加えて、奥様から

オスを少し大きめに…

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これまで私の聞いたことのない『おおましこ』ですが、

ご主人のお友だちの方が撮影した写真を

見せて下さいました。 

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愛くるしい姿。

何とも言えないピンクっぽい赤。

妻はその色を出したいと必死の硝子選び。 

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ご夫妻のご依頼の最初の声は、

月を見る2羽のうさぎ。

 

満月は黄色にもできますとの妻の言葉に、

ご主人は、

青の配色で…

 

それが、

うさぎと月の2面における統一感を醸し、

味わい深い青の静けさを楽しめるものとなりました。

 

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右上隅の天使はサプライズ!?

妻に言われてから、気づきました。 確かに天使が…

私が知らないで撮影し、

入ってしまいました。 

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偶然とは言え、 

私の気持ちに他なりません。

我が家に2度訪れた際に、

お二人のこれまでの人生に

ほんの少しだけふれさせていただきました。

二人で共に生きることを決められたお二人の

幸せを心から願う私の気持ちです。

これからのお二人の人生が

天使にいつも見守られていますように…

(2018.7.15 記) 

No.223 パッカーズの灯り~ランボー・フィールドの空

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アメリカのわずか人口10万の町にある

ランボー・フィールドをフランチャイズとする

NFLグリーンベイ・パッカーズ

その大ファンという九州にお住まいの方からの

ご依頼でした。

ランボー・フィールドまで数度応援に行かれたそうで、

相当熱烈なファンの方とお見受けしました。

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アメフトを見る機会のなかった妻は、

デザイン作成にかなり時間を要していました。

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ご依頼者からのご意見を伺い、

デザインを確認しながらの作業となりました。

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また、

妻は球場のランボー・フィールドの建物も入れたいと

ティファニー工法で表現しました。

ステンドグラスの灯りらしくなりました。

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作業後半は、妻もパッカーズというチームの魅力を

語るようになっていました。

チームは北米4大プロスポーツ唯一の

「市民が所有するチーム」で、

小さな街の市民球団が大都市のお金持ちのチームに

立ち向かう姿が「ダヴィデとゴリアテの神話のように」

支持されているそうです。

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何もないがNFLタイトルならあるぞ!

なるほど!

応援したくなるチームなんですね。

(2018.7.1 記)

No.222 日本青年館ホールホワイエの「桐の灯り」~「木の灯り」(其の28)

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「木の灯り」青年館ホールさ納めたのは、

去年夏だったものなあ。

そのあと、

見たいという声に後押しされだべか、

青年館ホールから追加注文あったもの。

春に、ホールのホワイエにこの「桐の灯り」、

取り付けらえだった。

 

たいした立派な鉄の枠もこしらえでくれで、

ありがでゃあ。

催事のチケットあれば

誰でもいづでも見れるどー。

佐藤佳奈さんの書と一緒だもの。

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秋田の森林組合長さん、見てけれえ。

桐の花のうしろの山、

ご夫婦で案内してけだ、あの鳥海山だべえ。

本当にお世話になったすなあ。

また、お会いしたいすなあ。

 

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秋田の木がじっぱし使われている青年館ホール。

嬉しいでゃ。

おらの生まれた所の木だすべえ。

そのホールに、ちま(妻)のステンドだべぇ。

ありがでゃ。

えがっだあ。

 

秋田の言葉だば、

分かりにくかったすべえ。

ごしゃがにゃ(怒らない)でけれ。

へぇば。

 

 《方言と一冊の本》

 「おら おらで ひとり いぐも」(若竹千佐子著)

 方言の威力と表記の工夫に感心。

 また主人公74歳の生活力と絶え間ない想像力、

 圧倒されました。

 その影響か…

 今回突然、秋田弁で書きたくなりました。

 ー 熟考や節度ってねべぇか?

   あえー、すかたねっちゃ。

 

 ところで、

 作中の主人公桃子が

 オレオレ詐欺に引っかかっての回想場面、

 はき出すその言葉にハッとしました。(本文P51)

 子どもがかわいくて

 それで引っかかって、

 金を出すのではない。

 『子どもの生きる喜びを横合いから手を伸ばして

  奪ったような気がして仕方がない』

 それが親だ。

 我が子への贖罪なのだ!

 桃子のこの言葉に、

 私は我が子とのことを振り返って、

 そんなことはないと、

 言い切れる自信はありませんでした。

 

 『おら おらで ひとり いぐも』

 刺激的な一冊でした。 

 

 (2018.6.16 記)