心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.259 第6回作品展がはじまりました

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大勢のみな様のお陰です。

第6回作品展を開催できました。

ありがとうございます。

本当にありがとうございました。

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(1)ごゆっくりご覧下さい。

   お楽しみ頂けましたら嬉しいです。

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(2)ミュージアムショップのつもりはなかったのですが…

   *あとりえ 悠*関連のものも受付前に並んでいます。

   お気に入りがありましたら手にとってご覧の上

   よろしかったらどうぞお求め下さい。

 

(3)何かお聞きになりたいことがありましたら

   どうぞご遠慮なくお願いします。

   人と人とのやりとりこそ

   作品への新たな出会いと発見に

   つながる… 

   そんな気がします。

   (*あとりえ 悠*関係者は

    ネームプレートを着用)

    

   《開催3日後の追伸》

   と言っていたら

   声が出なくなりました。

   他にもスタッフがいますので、

   遠慮なくどうぞ。

   面目ない!

 

 (2019.12.8 記) 

   

 

No.258 作品展用に4点お借りしました~「北斎の浪のステンドグラス」「檜山路の灯り」「檀の灯り」「碧天の星座」

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北斎の浪のステンド」という考えたこともないご依頼に

妻は困っていましたが、

何度も試し彫りをしながら仕上げました。

作品の裏に回って彫った浪の深さをご覧下さい。

 

妻の作った作品の多くは手元に残っていません。

他のお客様から見たいと求められても

写真を見ていただくだけでした。

「この作品、見てみたい」等

みな様のご要望や関心の高い作品について

それぞれ所有者の方にお願いしたところ

幸いにみな様どなたも快く

「どうぞ」とおっしゃって下さいましたので、

拝借しましてこの度の作品展に展示いたします。

 

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「檜山路の灯り」

旧家の佇まいのお宅を何度も訪ねて

この地と家を大事に守って来られたご夫妻の心にふれながら

作らせていただきました。裏表2面で春夏秋冬。

両サイドにはかわいがってきた愛犬の「もも」と「かんべえ」

 

妻は全く同じ作品は作れるかというと

無理と言います。

型紙におこすわけだから、

素人の私には

できるでしょ、と簡単に思っていましたが、

何年も妻の作品作りを見ていて、

妻の言っている意味が分かってきたような気がします。

私なりの理解ですが

一つの作品が生まれるのは

ご依頼の方の思いとエネルギー、

作る側の思いとエネルギーと技能、

そして材料の硝子。

作品はこれらの総和として生まれる…

いや総和でなく3者の相乗効果なのでしょう。

ご依頼内容が

妻にはステンドに合わないし技能的に無理と思えたものでも

ご依頼者の思いとエネルギーを受けて

作品完成に至ることもあったと思います。

 

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「檀の灯り」檀(まゆみ)ちゃん3歳のお誕生記念のご依頼での制作。
灯りの形は妻が使うお茶碗の形です。                                まゆみちゃんの大好きなテントウムシとブタさんのお人形さんも
まゆみちゃんを照らしています。

 

材料の硝子ですが

これもとても厄介なようです。

妻がよく使用する硝子の大半は

昔と同じように吹いて作る手作り硝子です。

型番が同じで見た目も同じように見えても

実は厚さは場所によって異なります。

厚さが違うと光を通したときの色合いが微妙に違います。

同じ型番の硝子を使っても

作品から受ける印象まで全く同じと言うわけには

いかないこともあります。

同じように見える双子の方々には

全く違う個性があるのと同じかも知れません。

硝子も生き物なのですね。

 

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「碧天の星座」ご主人をなくされた方のご依頼です。
「星のドーム」をご覧になった方が、我が家に来られて硝子選びもされました。

明るい色でとのお願いでしたが、

この明るい色が作品の雰囲気を決定づけたように思います。

 

実は妻の作品に使用されている硝子の中には

もう生産されていないので手に入らないものが

数多くあります。

近年欧米の大手老舗硝子メーカーの廃番措置や生産中止が

続いているからです。

アンティーク硝子の良さがもっと人々に認められて、

需要が高まるといいのですが…

 

(2019.12.4 記)

No.257 宮沢賢治「星めぐりの歌」瞬き(またたき)

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♪あかいめだまの さそり

  ひろげたわしの つばさ…♪

妻の唇からメロディーがもれた

私の知らない歌

宮沢賢治の世界

妻は7年前の早朝保育のお手伝いのときにこの歌を知り

いつかこの作品を作り

園の方や園児さんにも観ていただける日を夢見てきた

 

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星めぐりの歌」をいつか作るためにと

妻が大切に保管していた透明の青い被せ硝子

手前と奥それぞれの星座を溶け合わせ

一つの宇宙にしてくれた

 

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サソリは

宮沢賢治の世界では特別な存在なのだろうか

銀河鉄道の夜」の車中で女の子がジョバンニに語る…

他の生き物を食べてきたサソリが

イタチに食べられそうになって必死に逃げた

井戸に落ちて死にそうな間際

自分の身体をイタチにくれてやれば

イタチも一日命を永らえただろうに

この身体をくれてやれば良かった

神さま

この次にはみんなのまことの幸せのために

私のからだをおつかいください

そう祈ったサソリの身体は

まっ赤な美しい火になって

闇夜をてらすようになった

 

♫  あかいめだまの さそり
  ひろげたわしの つばさ
  あをいめだまの 小いぬ
  ひかりのへびの とぐろ

  オリオンは高く うたひ
  つゆとしもとを おとす
  アンドロメダの くもは
  さかなのくちの かたち

  大ぐまのあしを きたに
  五つのばした  ところ
  小熊のひたいの うへは
  そらのめぐりの めあて ♬
     (宮沢賢治 作詞)

 

妻の思いのつまった作品

星めぐりの歌」瞬き

12月5日からの一ノ関悠子第6回作品展に出品します

ご都合つきましたらお越しくださいまして

ご覧頂ければ嬉しく思います

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前回の第5回一ノ関悠子個展会場(大島様撮影)

(2019.11.28 記)

No.256 モリスのささやき

 

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W.モリスは19世紀の詩人にしてデザイナー

そのデザインは今でも斬新

100年以上前の氏の作品を今も愛好する者は多い

妻が我が家の来客用として選んだ珈琲カップ

W.モリスのデザイン

 

この度の即位の礼のお祝いに

妻は自分なりの記念の灯りを作りたく

作品のモチーフに選んだのは

W.モリスのQeen Anne と名付けられた

壁紙のデザイン

 

できた灯りが

これ

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華麗なモリスもいいが

一人静かに

灯りをやや落とし

モリスのささやきに

身をひたすなんてのもいい

 

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このランプ

とても珍しい調光器付きのベースゆえ

片手で簡単に明るさが変えられる

 

面白くてついいじってしまうので

ほどほどに

(最後の2行は体験者として)

(2019.11.23 記)

No.255 ココペリ~インディアンジュエリーの「ピュアドール」さん(広島県福山市)でサンキャッチャー販売中

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ココペリは

アメリカ大陸に昔から住んでいた人々が

発芽と豊穣をもたらすとあがめていた精霊。

そのいわれと共にその姿かたちもまた

魅力的なココペリ。

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2008年制作「ココペリのランタン」

妻は数多くのココペリの作品を

作り続けてきました。

  

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妻の作品のどれかが目にとまったのでしょうか。

5年ほど前

インディアンジュエリー専門店ピュアドールさんから

制作のご依頼がきて、「サンキャッチャー」を

お納めするようになりました。

私はインディアンジュエリーとしてココペリが

専門店で扱われていることを初めて知りました。

ピュアドールさんは、

アメリカに行かれての直接買い付けや

現地作家に制作依頼されるなど

本物のより良いものを熱心に求め

販売されているお店です。

 

 

妻はこの夏にも

20点近くのココペリのサンキャッチャーを

ピュアドールさんにお納めしました。

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ピュアドール PURE DOLLさんの作品紹介

https://bit.ly/2Okw4O9

 

なお、妻のココペリを含めた各種作品は

吉祥寺中道通りのブティック「パレント」さんや

稲城の隠れ家カフェ「ローズ亭」さんでも

お取り扱いいただいています。

 

 

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中央が「ココペリのランタン」:前回の個展会場入口

来月12月5日からは

国立駅前のギャラリーで個展を開催しますので

ご興味がある方はどうぞお気軽にお越し下さい。

 

(2019.11.16 記)

NO.254 ご案内申し上げます~妻の個展

 

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一ノ関悠子第6回作品展を12月5日から10日まで

国立市駅前のコートギャラリーで行います。

よろしかったらどうぞご観覧くださいますよう

ご案内申し上げます。

 

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「妻の個展」

最初で最後の個展だからね

妻がそう言ったのは10年前

聞いた家族はみんなで手伝った

息子も娘も

初めてだし、最後だし…

最後だからねえ…

 
そして

2回目も

3回目も

4回目も

5回目も

“これが最初”の言葉はなくなったが

“これが最後”と言ってきたような気がする

 

もうすぐ6回目の今

この間そのつぶやきを聞いた

これで最後かなあ…

やっぱり

 

f:id:you3113:20171210164354j:plain第5回個展の玄関口

 

妻の

“これで最後"は

本心

いろいろな思いのなか

最後と思って頑張ってきたのだろう

最後だから

頑張れたのだろう

 

最後と思わなければ

できなかったのだろうか

ふと考える

私には分からない

深い井戸から汲んだ澄みきった水の冷たさは分かっても

土中の井戸の中は誰にも分からないということかも…

 

f:id:you3113:20171209173355j:plain受付から見える展示会場 

 

妻はいつも言う

この作品で喜んでもらえるかしら?

個展が近づくと言う

個展に来られた方が楽しんでくれるかしら?

 

f:id:you3113:20171209133959j:plain受付前談話&パネルコーナー

 

妻の普段の制作活動をそばで見ていると

実に不合理で無駄が多い

なのに妻の作品を求めてくださる方が増えてきたのは

この不合理で無駄に見えるなかでの

作品作り故かも知れないと思うようになった

 

f:id:you3113:20171207174806j:plain終了時刻の迫った展示会場

 

地球の片隅まで

一瞬にして情報が届く世の中で

喜んでもらえるかしらと

ひたすら祈るように作った作品を

誰かがじーっと観てくださることを想像すると

なんだか私は嬉しくなる

 

作品と人とが

こころやすらかに巡りあえますように…

 

 

(2019.11.4 記)

No.253 「富士山と梅のお灯明」~おじいちゃんと見た富士山

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ーまもなく春の頃にー

妻が担任の頃お世話になった保護者の方が

我が家に来られました。

妻と積もる話を楽しくされていましたが、

亡くなられたお父様のお灯明を作りたいとのお話でした。

息子さんにデザインを少し考えてもらおうとも…

息子さんは妻のかつての教え子で、

当時は体育と図工のセンス抜群の

とてもかわいい子ども…

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ー初夏にー

その子が親子で我が家に来られました。

 久しく会ってない教え子の成長した姿に

妻は感激していました。

私から見てもまばゆい立派な好青年。

デザインを学ばれて

今はその関係のお仕事をされているとのことでした。

来られたこの日は

作品のイメージの打合せと実際にガラスをいろいろと

ご覧になって使いたいガラスも決めて帰られました。

 

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ーそして夏にー

どんなお灯明にするか

妻はその形と下絵をメールで頂きました。

何度かのやりとりをした後に

息子さんの描かれたイメージを元に

ステンドグラスの図案にしました。

かつての教え子とこんなふうに

一緒に仕事ができて 

良かったなあ、いいなあと

私は妻を見ながら思いました。

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ーようやく完成ー

ご依頼からかなりお時間をいただきましたが

ようやく完成しました。

 

我が家に作品のお受け取りに来られたお二人は

妻の作ったお灯明をご覧になって

おじいちゃん、喜んでいるねと

二人で互いにおっしゃっていました。

さらに息子さんは

かわいがってくれたおじいちゃんが

車で富士山に連れていってくれたことも

なつかしそうに話されていました。

実はお二人の過去のそんなことも知らず

制作前に送られた富士山の絵を見た時に

私はとっさに一輪の花のサンドブラストのほうがと

思ったことがありました。

しかし今は

亡くなられた方と残された方をつなぐお灯明に

この富士山こそ必要不可欠だったと思えるのです。

私はおじいちゃんを偲ぶお孫さんの言葉に

自分の軽率さを恥じました。

 

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我が家で作品をお渡しした際に、

妻は使用したガラスについての説明書も渡しました。

作品には稀少硝子が多く使われているので

稀少硝子のすばらしさも楽しんで欲しいという

妻の気持ちでしょう。

 

ー「今回使用のガラスについて」ー

使用ガラスについて 以下の25種類のガラスを使用いたしました。

◇フリモント社(アメリカ)製◇  
背面の青と緑とクリア三層・湖の濃い青(白被せ)・青緑クラッケル・マーブルの4種。オーナーのジム・フラナガンさんが一人でブローをしています。昔ながらの作り方にこだわってご自身が気に入ったガラスを作り続けておいでです。重いガラスを竿先につけてとりまわすため、1日数枚ほどしか作れないとても貴重で稀少な美しいガラスです。

◇サンゴバン社(フランス)製◇  
メジロを彫っている複色緑系・乳白被せの淡い青・ご家紋を彫った乳白被せの3種。ルイ14世が作った王立ガラス工場が現在まで続く古い伝統のある有名なガラスメーカーです。アンティークガラス独特の気泡があり色合いが豊かで歪みやグラデーションも魅力です。被せガラス(二層のガラス)は特有の深い色合いを見せてくれます。

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◇ランバーツ社(ドイツ)製◇  
青のクラッケル。ドイツが誇るアンティークガラスのメーカーで職人さんが1枚1枚宙吹きで作り上げる芸術品。気泡やすじ、流れなど透かすとキラキラ輝いて見え独特の落ち着いた色合いを見せてくれます。

◇ヤカゲニー社(アメリカ)製RGシリーズ◇
空・山(緑・薄青・茶・白・淡い青緑)・梅の蕾・メジロなど8種。ティファニーランプに多く用いられる色の美しいガラスを作っているメーカーです。一枚の板の中にも色の濃さが変化し、その中にあるソフトなモトルは透け感があったり、不透明であったり、優しい質感を持ったガラスです。

ウロボロス社(アメリカ)製◇
富士山のオレンジ混じり・富士山の白・梅の花・木・蕾・山の水色・上下の茶・サイドの混じりなど8種。ティファニーガラスの再現を目指して創立されたアメリカのガラスメーカーで美しいアートガラスを生産しています。ミルフィーユのように色がおり混ざっていて特にランプ用ガラスで高い評価を得ています。

◇ココモ社(アメリカ)製◇ 

虹色加工のキラキラ凸凹したガラス~マシンメイド。

*富士山の白とサイドの混じりガラスはフラクチャーガラスと言ってティファニーによって開発された貼り付けガラスと呼ばれているガラスです。非常に薄いガラス片を付着させていますのでガラス片が剥がれる場合があります。手で触れる際にはお気をつけください。
*クラッケルというのはヒビ入り二層ガラスです。美しい燦めきや壁写りを見せてくれます。職人さんが一つ一つ手作りしたガラスの美しさをどうぞお楽しみください。

 

(2019.10.22 記)