心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.157 とお(10)の木の灯り~その4「鳥海山麓『あがりこ大王』の地を訪ねて」

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『あがりこ大王』は

鳥海山麓の湿原奥にある奇怪なブナの巨木。

その場に立って、

この奇怪こそ、

人を惹きつけるのだと思った。

 

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 (奇怪な樹形は多い。)

 

 ご案内の森林組合長さんは、

木の根元で、

木を指さしながら

木の話をしてくださった。

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 炭焼き用に切られても

深い雪に埋もれても

竜巻のような強烈な風に見舞われても

生きて、大きくなろうとしているブナの木。

 

そして、ここでは、木に巻き付くツタさえ

まるで蛇のように

幹にきつく巻き付いているように見えた。

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鳥海山麓湿原は

厳しい自然の中で

必死に生きる木々の生命力に満ちていた。

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ホールの木の灯りをつくる妻は

森林組合長さんの木の話に耳をそばだてながら

『あがりこ大王』への湿原の木道を往復した。

ここに来なければ味わえない木とのふれあいがあった。 

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 当日は森林組合長さんご夫妻に日が落ちるまで

鳥海山を望む一帯を木を中心にご案内いただいた。

互いに夫婦連れで同年代の4人組となり、

妻には気分が少し楽になったかもしれない。

このような配慮にも感謝した。 

 

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この日は晴天で、

雪の鳥海山は格別であった。

鳥海山が眼前に広がるたびに、

妻と私は「おー。」

ひと山越えては「おー。」

見晴らしの良い高原に出ては「わぁー。」

ご案内くださった森林組合長さんの

心憎いばかりのコースどりに

雪の鳥海山も堪能した。

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そうこうしているうちに

八塩山を越えて満開の黄桜の花見会場に着いた。

それがまた見事と言うしかない黄桜だ。

見たことのないような花の膨らみと色具合。

桜に吸い寄せられるように

妻と二人で写真を撮りつづけた。

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しかしさらに驚くべきは、

桜一面の広大な場所に

花見客は私たち4人だけだった。

日曜日の夕暮れ時、

いくら見渡しても他に人は見えなかった。

(昼は歌謡ショーもあり賑わったらしい。)

独り占めの気分で桜を楽しませてもらった。

こんな贅沢は

きっともうないだろう。

 

桜が見頃の公園に夜のとばりが下りた頃

妻のつくった試作(『山桜』)のステンドグラスを

森林組合長さんご夫妻に見ていただきたいと思った。

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他に誰もいない暗くなった公園の東屋。

そっとあかりを点灯した。

ほんのりした明るさと静寂が

あたりをつつんだ。

お二人にホールのあかりのイメージを

妻が話した。

 

喜んでいただけたようで嬉しかった。

 

※この訪問で、森林組合長さんと奥様には

 何から何までお世話になりました。

 貴重な取材の一日となりました。

 本当にありがとうございました。

 また、私たちが鳥海山麓を訪ね、

 森林組合長のご案内を頂けたのは、

 ホール代表と専務のお力添えのお陰でした。

 心より感謝申し上げます。

 

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※『あがりこ大王』の子どもかな?

 根元近くで見つけたブナの芽と種

(2016.5.15 記)