心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.4 京都西陣 ~町家のあかり~

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過去に作った「青い藤のペンダント」を見て気に入ってくださった方から
新築邸和室の壁掛け照明のご依頼をいただきました。
3月にお目にかかり、ガラスサンプルをお渡ししながら、ご相談しました。
ガラスだけで見たのと、あかりが入ったのとではずいぶん感じが変わるために
クリア~白~ブルーお好きそうなガラスを10種用いて試作の灯りを作りました。

                                 

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試作品を持って京都に打ち合わせに出向きました。
建築中の素晴らしい町家のお宅を拝見し、
建築家の横関さんともたくさんお話しし、電気屋さんともご相談できました。
その結果、製作する灯りは玄関灯と和室の置き型照明に変更となりました。

和室の照明は形をうんと縦型にして置き型に変更…80cmは大きいけれどできそう。
ですが、玄関照明は全面をガラスにして完全防雨型にするという未経験のものでした。

いろいろ見たり、調べたりして、悩みに悩み、
夜中に飛び起きて「そうだ!!」と思いついた結果、
既製のエクステリアランプにシェードとして被せることにして
試作品を作りました。

                                                   

模型も試作も完成して、いよいよ本製作です。
「京都の灯り」という響きが私を夢見心地にしてくれます。
「京都の灯り、京都の灯り…」
って心の中でつぶやきながら作業をしています。
素敵なお家に入る灯りを作るなんて、すごいプレッシャーですが、
うれしい気持ちが勝っています。

和室灯は初めての五角柱にしてみました。
見る角度によって、2面が見えたり3面が見えたりします。

 

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青がお好きな依頼主さんはクリアな青を入れたがっていましたが、
青い光は冬は寒そうだね…というご主人の言葉に逡巡されていました。
灯りのついていないときは青い表情で、
灯りを入れたらあたたかくて柔らかな色になる
そんな青いガラスを選んで入れました。

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玄関灯は「フクロウの灯り」です。
中学生の息子さんがデザインしたフクロウをブルー系のガラスに沈め彫りしました。
同じフクロウをミニミニサイズで作り、和室灯の中にこっそりと忍ばせました。
いつか気が付いて下さったらうれしいです。

 

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出来上がった作品を抱えて京都にむかいました。
仮住まいのお家で梱包を解いて組み立てて点灯することになりました。
和室灯の梱包材をはずしている途中に、
依頼主さんは「あっ!」と叫んで、
340枚のピースに隠された1枚のフクロウさんのピースに気づかれました。
そして、お母様、妹さんと一緒にとてもとても喜んでくださいました。
フクロウをデザインされた息子さんもとても喜んでくださいました。

 

灯りをつけた照明を右から左からうれしそうにずっと見てくだっている
依頼主さんのお顔がとても美しくて、まぶしくて、泣きそうになりました。
その表情は今もまだ心に刻み込まれています。
よかったね、よかったね、と言いながら京都を後にしました。

 

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           写真と文(製作日記より抜粋) 2008年夏~秋 

                ステンドグラス  *あとりえ 悠*
   

   「日本の住まいや暮らしに合ったステンドを楽しめるようにしたい。」と

妻はよく言います。
「古典文様とか和風のモチーフのあかりを作りたい。」
「暮らしの中にさりげなくお気に入りの灯りを置きたい。」とも言います。
この麻の葉をモチーフにしたステンドはそれを表した作品です。私も大好きです。

このステンドを横に二つ並べた時のあかりは自分のいる空間を作品の世界でつつみます。

二つを上下につなげる前に、冒頭の写真のように二つを並べて楽しみました。

和の心を感じ、それは幸せな時間でした。

 

なお完成した施主さんの住宅は本やWebで紹介されています。

 〇書名「最高の若手建築家20人」エクスナレッジムック

   〇ザ・ハウス@建築家

  ザ・ハウスで叶えた夢の家 事例No.163 広々と暮らせる京都の町家

   http://thehouse-a.jp/tatetaie/163.html 

 

                                2012.05.12 記