心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.126 鷺草のパネル~まなざし

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お父様が大事に育てられた鉢植えのサギソウ

そのサギソウを真ん中に

お父様とお嬢様の並んだ一枚の写真。

今は亡き父親の深いまなざしが

私にはまぶしかった。

そのまなざしに満ちているのは

愛(いつく)しみではないか。

 

写真のお嬢様が、

やがて私たちの娘の保育園の先生になられた。

先生のお蔭で娘は元気で保育園に通った。

 

昨年、妻の「鷺草乃原」完成の後、

ステンドグラスのご依頼をいただいた。

妻に作品をお願いしたい、

そのモチーフは

ずーとサギソウと思っていらっしゃったと

伺った。

 

なぜサギソウなのか・・・

その訳は、

一枚の写真で十分だった。

 

我が家の娘に保育園で注がれたまなざしは、

亡きお父様から注がれた深いまなざしを

お嬢様が引き継いだもののように思えた。

 

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妻の制作は、少しお待ちいただいてしまったが、

「鷺草乃原」のデザインをもとにして、

ようやく完成した。

ご依頼の「鷺草のパネル~まなざし」の制作中、

妻とどこまでできたかなど、何度も話題になった。

その度に我が家の娘の保育園時代が思い出された。

私には幸せなひと時だった。

 

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サギソウには、

人を惹きつける不思議な魅力がある。

ローザ・ロッサの作品展でも、

吸い寄せられるように見入る方が何人もいらっしゃった。

世田谷奥沢城の常盤姫にまつわるサギソウ伝説は、

忘れ去られることもなく今も残る。

羽を広げた純白のサギソウをじぃーと見ていると、

常盤姫の祈りが聴こえてくるようだ。

No 98 「サギソウ伝説」と「試し彫り」 - 心に灯るあかり *あとりえ 悠*

 

 

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こちらの写真は、

吉祥寺のお客様から妻のいただいた鉢。

春のフェアの折にわざわざ球根を

植え付けて持ってきてくださった。

教わった通りに毎日水をやり朝日にあてていたら

なんと芽が出て、もうすぐ花が咲きそうだ。

サギソウ栽培は難しいと思っていたので、

嬉しい驚きである。

 

サギソウを育てる・・・

お父様のまなざしに近づけるのだろうか。

近づけたら・・・

ふと、思った。

(2015.8.1 記)