お父様が大事に育てられた鉢植えのサギソウ。
そのサギソウを真ん中に
お父様とお嬢様の並んだ一枚の写真。
今は亡き父親の深いまなざしが
私にはまぶしかった。
そのまなざしに満ちているのは
愛(いつく)しみではないか。
写真のお嬢様が、
やがて私たちの娘の保育園の先生になられた。
先生のお蔭で娘は元気で保育園に通った。
昨年、妻の「鷺草乃原」完成の後、
ステンドグラスのご依頼をいただいた。
妻に作品をお願いしたい、
そのモチーフは
ずーとサギソウと思っていらっしゃったと
伺った。
なぜサギソウなのか・・・
その訳は、
一枚の写真で十分だった。
我が家の娘に保育園で注がれたまなざしは、
亡きお父様から注がれた深いまなざしを
お嬢様が引き継いだもののように思えた。
妻の制作は、少しお待ちいただいてしまったが、
「鷺草乃原」のデザインをもとにして、
ようやく完成した。
ご依頼の「鷺草のパネル~まなざし」の制作中、
妻とどこまでできたかなど、何度も話題になった。
その度に我が家の娘の保育園時代が思い出された。
私には幸せなひと時だった。
サギソウには、
人を惹きつける不思議な魅力がある。
ローザ・ロッサの作品展でも、
吸い寄せられるように見入る方が何人もいらっしゃった。
世田谷奥沢城の常盤姫にまつわるサギソウ伝説は、
忘れ去られることもなく今も残る。
羽を広げた純白のサギソウをじぃーと見ていると、
常盤姫の祈りが聴こえてくるようだ。
No 98 「サギソウ伝説」と「試し彫り」 - 心に灯るあかり *あとりえ 悠*
こちらの写真は、
吉祥寺のお客様から妻のいただいた鉢。
春のフェアの折にわざわざ球根を
植え付けて持ってきてくださった。
教わった通りに毎日水をやり朝日にあてていたら
なんと芽が出て、もうすぐ花が咲きそうだ。
嬉しい驚きである。
サギソウを育てる・・・
お父様のまなざしに近づけるのだろうか。
近づけたら・・・
ふと、思った。
(2015.8.1 記)