心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.128 テレイドスコープ

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妻のテレイドスコープをご注文くださった方から、

お電話をいただいた。

届いたので早速のぞいて見られたとのこと。

その世界の美しさに昂奮する程の感激を覚えたと

お話くださった。

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1平方センチメートルに満たない小さな覗き穴の先、

鏡と水晶玉のつくりだす映像に人は何かを見る。

何が見えるのだろうか。

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 (娘さんから送られてきた画像)

 

彦一は、遠眼鏡(とおめがね)をのぞいて言った。

「これはすごい。天竺まで見える」

それを聞いた天狗は、

「ウソだろ」と言いながら

のぞきたくて大事な隠れ蓑と遠眼鏡を交換してしまう。

その後の顛末は「天狗の隠れ蓑」にゆずるが、

「ウソだろ」と言いながら

気持ちは抑えきれない。

人の心の有り様はままならない。

 

そして、見えるはずのない天竺が、

見えるか、見えないかも、

人それぞれの心の有り様だと、

私は戦後の文芸教育で優れた理論と実践を残した

西郷竹彦氏の民話について述べた言葉から教わった。

“離縁され、生まれた里に帰された女が、

湖面に映る白蛇になった自分を見て、

嘆いて身を投じた”というのは、

白蛇になってしまった女がいたのではなく、

湖面を見て、自分が白蛇に見えてしまった女が

いたということだよと。

 

西郷氏は

そう見えた人を、その心を

言葉を通してたぐり寄せ、見つめていた。

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テレイドスコープは

自分で被写体や光を求めて映像を写す。

その人のその時の気持ちのままに・・・

何が見えるのだろうか。

 

電話での

美しくって興奮したという方の声、

私には嬉しい響きだった。

 

作品&写真(2015.8.) ステンドグラス*あとりえ 悠* 

 

(2015.8.19 記)