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心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.172 とお(10)の木の灯り~紅葉

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(青年館ホール側と打合せの為に持ち出した制作途中の「栗の灯り」)

 

先週末、妻のステンドづくりのため

樹木の紅葉調査に二人で私の故郷秋田をたずねました。

妻は、この2月から青年館ホールの灯りのために

とお(10)の樹木を追い続け調べていますが、

その妻が、

秋田の紅葉は一つの木の中で葉が多様に色を変えて

木に留まったまま美しい紅葉になることに驚いていました。

同じ樹木でも東京では緑から枯れて落葉するか

緑のまま落ちてしまうと盛んに言っていました。 

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そうかあ。

同じ木の葉の色、そのものが東京と違うのかあ。

だから、この見事な紅葉なんだ。 

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妻の“同じ紅葉でも東京と違う”という言葉を聞きながら、

ふと、遠い昔、私が田舎から東京に出た頃、

口ずさんだ“東京に空はない”という詩を思い出しました。

 

「あどけない話」 高村光太郎

智恵子は東京に空が無いという

ほんとの空が見たいという

私は驚いて空を見る

桜若葉の間に在るのは

切っても切れない

むかしなじみのきれいな空だ

どんよりけむる地平のぼかしは

うすもも色の朝のしめりだ

智恵子は遠くを見ながら言う

阿多多羅山の山の上に

毎日出ている青い空が

智恵子のほんとの空だという

あどけない空の話である。

 

私が上京した当時は

公害が最も大きな社会問題だった頃です。

都会のあちらこちら、

街を流れる川はヘドロと洗剤の泡で満ち、

工場や車等による大気汚染は喘息患者をうみだしていました。

今のシニア世代と言われる人たちの中に

教科書で習った智恵子の“東京にほんとの空はない”を

自分の故郷と重ねながら思い出した人は

少なくないように思います。

一方で故郷なまりの言葉遣いは嘲笑されました。

田舎から出てきて、私が秋田出身を告げると、

“お国なまりがないわね”とよく言われましたが、

“たぶん褒められただろう”嬉しさと同時に、

そしてそれ以上に、

私には大事なものを見失うような複雑な思いが

つきまといました。

私が若者だった頃の話です。

あ~、すみません。

妻の“東京の紅葉と違う”から昔話になってしまいましたね。 

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さて、今回の妻との秋田での紅葉巡りでは

東京よりも厳しい寒冷地の山々で育つ

樹木の紅葉を間近に見て、

今まで以上に樹木の生命の息吹を感じ、

厳しい中での美しさを感じることの出来る旅となりました。

妻のステンドづくりには欠かせない、

モチーフにふれることの出来た紅葉の旅でした。

 

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(来年6月竣工の日本青年館の模型。右は10月24日現在建設中の様子。) 

(2016.10.28 記)