しんとした雪夜に来客が帰る。
残されたいろりの熾火(おきび)に
勢いよく息を吹きかける。
灰色がかった炭がぽーと勢いを増して燃える。
赤くなって燃える。
子ども心に
この熾火の不思議さを
炭のほてりを感じながら
見る。
数十年経て
私は「栗の灯り」に熾火のほてりを見る。
熾火(おきび)。
堂門冬二は小説「上杉鷹山(うえすぎようざん)」で
藩政改革の志の象徴として熾火を据え、
主君、家臣、農民の織りなす物語を展開させる。
家臣が命がけで炭火の火を絶やさないよう守る行為は
今の人々にはなかなか理解しにくいだろうが、
北国の小さな村で熾火のほてりを感じて育った私には、
心憎いほどよく出来た設定に思える。
論理だけで大改革など出来ないが、
鷹山だからなし得た大改革と納得する歴史小説に
なっているのは熾火ゆえだと私には思える。
熾火は人々の希望だった。
灯すと、息を吹きかけたように、
静かに赤く燃える「栗の灯り」。
日本青年館ホール出演者の方々に、
さらなる希望と活躍へのエネルギーを与えるだろう。
出演のアーティストを応援したい妻の思いのこもった作品、
もう間もなく、楽屋「栗」の前に灯る。
(2017.04.18 記)