「そこでいいよ」
そうやさしく教えてくれた搬入車整理のおじさんも…
いつも慌ただしく、
作業員をのみこんでははき出していた現地事務所も…
いつどこに消えたのだろう。
工事期間とは様相を一変させた竣工記念演奏会の7月23日、
妻と二人で日本青年館ホールでの演奏を楽しんだ。
今までお世話になった方々にお会いできた。
一緒にお仕事をさせて頂いた書道家の佐藤佳奈さんとも
お会いできた。
楽屋名の「欅」や「桜」等の室名板は
佐藤佳奈さんの書を妻がガラス板に彫刻した。
各部屋ごとに、
使用木材と室名書と木の灯りがセットの設計になっている。
佳奈さんは部屋の中用にも部屋名の書も書かれた。
素晴らしい作品で廊下に展示されている。
佳奈さんは毛筆デザイナーと紹介されることも多い。
私にはこのほうがぴったりくる。
佳奈さんはご自分のラジオ番組をお持ちで、
漢数字の三の書き方についての放送を
たまたま聞いた。
佳奈さんの言葉を通して、
私の頭の中で字のイメージがどんどんふくらんでいった。
書はイマジネーションなのだと知らされた。
止めやはねなどの細部にこだわるあまり、
字を楽しめなくなった今の私たちに、
もっと楽しめるということを教えてくれているようだ。
ジャンルにこだわらずに挑戦する佳奈さんの
活動の根源をのぞいたような気もした。
佳奈さんはたまたま私の郷里のとなりの集落ご出身で、
東京ふるさと会でご一緒した。
その際に妻は、名前を入れた色紙を書いてもらったが、
これが何度見てもいい。
実にいい。
妻が笑っている。
笑顔の妻だ。
人は生きているといろいろあるが、
笑顔が一番という色紙だ。
いつも見えるところにおいて
いい色紙を頂いたと
二人で感謝している。
(2017.7.31 記)