心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.198 日本青年館の「木の灯り」(其の24)~宝塚歌劇星組公演「阿弖流為」

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どんなふうに灯っていたでしょうね。宝塚「阿弖流為」の日本青年館ホールこけら落とし公演。

 

 夢を見たのだろうか。

 真夏の夜の夢なのか。

 

 しばし、ご笑覧頂ければ幸いです。

 

 

この年になって、宝塚公演を観劇できるとは。

人生、何があるか分からないとはこのことだ。

日本青年館ホールからの招待で二人分のチケットを頂いた。

私もわくわくしたが、妻は大騒ぎだった。

 

妻は「木の灯り」をつくりながら、

これが楽屋に取り付けられたら、

出演される宝塚のスターが木の灯りを

観てくれるのだろうか…

想像もしただろう。

 

日本青年館ホールで宝塚公演をいつか観てみたい。

妻は「阿弖流為(あてるい)」は観たいけど、

人気演目でチケットは手に入らないと

諦めていた。

そのチケットが届いたのだからもう大変。

大騒ぎ。

妻は宝塚情報をネットで検索したり

原作の高橋克彦著「火怨」を求めたり、

地理や歴史の資料を集めたり、にわかに忙しくなった。

 

そこに

私が、現役時代お世話になった保護者の登坂さんから、

どうぞ、宝塚を楽しんでくださいと連絡が入った。

登坂さんは元宝塚の方で、

PTA活動にも熱心に参加下さっていただけでなく、

講師として

ヴォイスワークショップの教員研修も行って下さるなど、

私がいろいろとお世話になった方でした。

妻が日本青年館ホールの木の灯りをつくるのを知り、

ご自分の思い出の場所に飾られるのを

とても喜んでくださっていた。

その後、

私の宝塚の同期の方が出演されます、と教えてくれた。

俄然宝塚公演が身近になった。

そして、登坂さんは

宝塚時代、星組の乙原愛さんとして活躍した方とわかり、

我が家は「宝塚」の話題が日常会話となった。

 

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そんなとある日、

妻と開場より少し早めに日本青年館ホールに着いた。

新装の気持ちよい席に座り、開演を待った。

音楽が鳴り、出演者が舞台で踊り出した。

手足の先まで仔細且つ大胆に踊る。

何より踊る表情がいい。

舞台で輝く目。

開演、数十秒で

日本青年館ホール舞台の世界に私は引き込まれた。

 

阿弖流為」の舞台は東北。

時は桓武天皇の平安遷都の頃。

征夷大将軍坂上田村麻呂との戦いに臨む蝦夷(えみし)の

若き指導者阿弖流為の葛藤と仲間達の物語。

 

私の祖先は

かつて蝦夷と言われた一ノ関市に伊達騒動の頃まで

住んでいたと兄に聞かされた。

総本家の大きな倉の中の刀と槍を見せられ、

子ども心になるほどと納得した。

さらに総本家代々の家系図を元に、

二十余代遡ると、ちょうどほら伊達騒動の頃になると

指を折っての話を聞いた。

以来私はこのことを疑ったことはない。

舞台の阿弖流為とその仲間に

我が祖先が伊達騒動までは同郷だった故、

共感するのはやむをえまい。

結婚する頃に分かったのだが、

妻の父の出身も一ノ関だった。

観客席の妻と私、

心持ちひっそり蝦夷(えみし)だった。

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神戸新聞より 

終盤30分ほどは泣けて泣けて困った。

それまで展開していたストーリーが、

私の頭の中ですべてひとつのテーマで繋がった。

ひとへの信頼!ひとを信ずるということ。

そうするとわずかな台詞にさえ、

その背景と深い意味で心がいっぱいになる!

阿弖流為の仲間の小さくうなずく「うん」にさえ、

そうだね、そうだねとなる。

そしてまた泣ける。

隣のおじさんもクシュクシュうるさく泣いていた。

きっと蝦夷の筋に違いないと思った。

終わって、「いやあ、こんなに泣いだごどねがっだでぇ。」

やっぱり蝦夷だった。

  

素晴らしい舞台だった。

脚本、演出、出演者、照明、音響、その他スタッフの方々

ありがとう!

「ひとを信ずることの素晴らしさ」をありがとう!

「感動したぞー!」「ありがとう。よかったぞー。」

フィナーレとともに賛辞と感謝の声をあげたかったが、

観客席のみなさんは行儀よく拍手するだけなので、

私も目立たないよう自重した。

しかしどうしても

感動した私の拍手はバチバチバチッとなる。

すると隣のおじさんもバチバチバチッ。

オー!

私のおじさんへの信頼感も高揚。

信頼こそ、この阿弖流為のテーマなのだ。

 

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終演後、妻と私は関係者の方に

今までこんなことはないのですが…と案内され、

あろう事か、

阿弖流為桓武天皇にお会いしたようだ。

あまりに畏れ多いことで、

感激のあまりよく覚えていない。

これは家宝にします。

たしか…そう言って受け取ったサイン入りプログラム。

阿弖流為桓武天皇役お二人のお名前が記されていた。

 

そのサイン入りプログラム、

我が家の数日前からのリフォームの混乱のせいで、

妻が昨日からどこ?どこ?と必死に探している。

 

妻と私の真夏の夜の夢

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夢から覚めても感謝の気持ちはいっぱいです。

ご招待下さったホールの社長さん、

かつてお世話になり

またまたお世話になった保護者で元宝塚の登坂さん、

そして登坂さんの同期の方のお骨折りお心づかいに

心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。

 

身内ながら妻へ

ステンドを作っているお陰で私は夢を見ました。

ありがとう。

あのとき、ステンドをやめないで、

よかったね。

(2017.8.11 記)