心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.220 菊咲一華(キクザキイチゲ)の灯り

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※作品名「青いイチゲの灯り」 現在パレントにて展示中

3月に作った妻の作品です。

秋田等北日本で見られる青い菊咲一華(キクザキイチゲ)を

サンドブラストした青色硝子。

その青の吸い込まれそうな透明感、

ふか~い湖の底をのぞくようです。

家族で帰省時よく訪れた田沢湖を思い浮かべます。

日本一の深さと摩周湖に次ぐ透明度(私の子ども時代)

北国のそんな湖畔に春を告げるイチゲ。

顔を出す頃、

湖畔は一気に春の装いと化すのでしょう。

5月中旬、

今、そんな時期でしょうね。

 

一枚のアンティーク硝子(宙吹硝子)に

あれこれ想像が湧いてきます。

たった一枚のピースで。

すごい硝子です。

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実は、妻のこの作品は、

2年前に見た鳥海山山麓での菊咲一華を

モチーフにしているとのこと。

私には見た記憶がなかったのですが、

妻はその可憐さに感激していたようです。

「あったかなあ…」

妻は写真も撮っていたとのこと。

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※2016年5月 鳥海山山麓にて妻の撮影

なるほど。咲いていたんですね。

ん~、見たような気がしてきました…

 

このとき妻の作りたいと思った菊咲一華は、

2年経て「青いイチゲの灯り」として完成しました。  

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※ピースごとに作り、並べた状態

この青、いい硝子だねえと言ったら、

妻がサンゴバン社(仏)のアンティーク硝子と、

教えてくれました。  

北斎富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」の浪も

この硝子を使って表現したそうです。

※参照→https://bit.ly/2IC9jVe

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※灯りを通すと違う顔に見えます。

妻はアンティーク硝子はそのものが芸術品だと言います。

今も昔と変わらず職人の方が吹いて作る硝子です。

素人の私が見ても何となくその良さは分かります。

硝子なのに、置く場所や時間でその表情は変わり、

まるで生き物のようです。

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この硝子のお陰で、妻の表現したい日本の四季が

より深まるように思います。

それ故か妻は作品にあったアンティーク硝子を

いつも探し求めます。

この数年、口惜しいことに

世界有数のメーカーの生産中止や廃番等が続きます。

もっとこの硝子の良さが世の中に伝わるといいのにと

思います。

 (2018.5.14 記)