心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.232 いつの間にか気づいたアンティーク硝子の素晴らしさ

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「雪うさぎ」 

アンティーク硝子ってすごいですねえ

一枚の透明のブルーのアンティーク硝子に

彫って生まれた白いうさぎと白い雪と白い樹

透明なアンティーク硝子1枚から

すべての物語が生まれるのです

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アンティーク硝子は、昔からの宙吹き製法によって作られた手作り硝子。アンティーク硝子の多くは被せ(きせ)硝子で2層や3層になっています。妻は被せ硝子に砂をあてて硝子彫刻を施し、砂のあて方の様々な工夫から作品を作り出しています。妻がよく使うアンティーク硝子は、フリーモントアメリカ)、サンゴバン(フランス)、ランバーツ(ドイツ)等です。

 

 

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「紀ノ川薔薇文様の灯り」

高野山に行って室町時代舞楽衣装を知り、それを元にして生まれた作品です。見ていると、古と今、和と洋など異なるものの調和しあう心地よさを感じます。その調和は、硝子そのものが私たちの予想を超えた昔から地球の東西を行き来し人々とともにあったことと無関係ではないように思われます。6年前奈良正倉院の瑠璃色等の硝子を妻と見たときに、私は千数百年に渡り存在し続けて今あることと今も静かな輝きを放つことに心底驚きました。妻のこの作品は、4面全てに使われたアンティーク硝子がこの作品に命を吹き込んでくれたと、私は見るたびにそう感じるのです。このアンティーク硝子、妻の大好きなフリーモントのピンク被せ硝子です。

 

 

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「宵待草」

「青の世界に月夜の宵待草」と「輝く黄色の宵待草」の両面はともにサンゴバンのアンティーク硝子。黄緑色はフリーモントのアンティーク硝子です。これらのアンティーク硝子によって、それぞれの面がしっかりと一つの主張をしつつ他の面とも共存できるところがアンティーク硝子の素晴らしいところだと私は感じます。(人間もこうありたいものですが、まあ、なかなかねえ…)

 

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「クリスマスチャーム」

小さな作品にも妻はアンティーク硝子をよく使います。このような小さなものほど硝子の違いが作品の違いに表れるように思います。アンティーク硝子を使うことで落ち着きと深みのある奥行きを感じられます。硝子の向こうの景色が揺れて見えるのもおしゃれな感じで、見ていて楽しくなります。

 

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「小皿」

ご覧の通り、アンティーク硝子のたおやかさを楽しめます。2層や3層にして1枚の硝子を作ることでより上品な質感を得られる製造方法を生み出してくれた先人に感謝します。人類の貴重な財産だと私には思えます。直接見ても、透かして見ても、光を受けて影にしても楽しめるアンティーク硝子です。             

近年は高価格故でしょうか、需要と生産減少により型番廃番や会社閉鎖の声が聞かれるようになりました。もっとアンティーク硝子が見直されて多くの人々が楽しめるようになることを心から願っています。

(2018.11.20 記)