心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.238 生かされて紡ぐ「あとりえ 悠」の作品~其の2

  其の2

 

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「青い藤」(2004年制作)

田中さんが最初にお求めくださった作品

 

15年程前、妻が所属するステンド教室の作品展。

妻の「青い藤」を気に入ってくださった田中さん。

生徒作品が求められるとは考えもしなかった頃。

さらに、

今度家を建てたら、またお願いね。

 

その後、妻は母の介護から休職、体調を崩しての退職…

ステンドを作ることのできない日々が続きました。

作品展で声をかけられてから3年過ぎて、

突然の田中さんからの連絡。

ようやくお家ができます。

お約束のように新居には妻の作品が欲しいとのこと。

 

自信を持てない妻に田中さんが言いました。

あなたの感性が好き!

見なくてもあなたの作品、すべて好き!

妻はどんなに励まされたことでしょう。

数年間で19点の作品を田中さんにお納めしました。

 

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胡蝶蘭」(2007年制作)

田中さんのご主人の好きな「胡蝶蘭」です。

宮大工さんがパネルを窓枠に取り付けました。

 

 

その頃から、妻は、

立体的な彫りができるサンドブラスト硝子彫刻と

絵付けを習うようになりました。

それらはステンド作品にいらないだろうと

私は妻に何度も言いました。

習いに出かけて行ってぐったりと疲れて帰ってくる妻。

また調子が悪くて出かけられない時も度々ありました。

 

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「カトレア」(2007年制作)

階段の踊り場の「カトレア」のパネル

 

結局、

妻は硝子彫刻も絵付けも習うことをやめませんでした。

やめられなかったのでしょう…多分ね…

  

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硝子彫刻の技法を駆使した作品「鷺草乃原」(2014年制作)

 

妻の作品を初めて見た人がおっしゃいます。

「わー、こんなステンドグラス、初めてー!」

そう言って喜んで見てくださるのは、

妻が必死で身につけた硝子彫刻と絵付けが

妻の作風をかもすからなのかもしれません。

 

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2016年制作

長年あこがれてきた上村松篁の「月夜」の世界に挑みました。

彫った後、実の黄色、目の赤は絵付けして仕上げました。 

 

硝子彫刻も絵付けもその習得をあきらめなかったのは、

妻の作品を楽しみに待ってくれた田中さんのお陰。

妻はよく言いました。

田中さんが喜んでくれる作品を作りたい…

 

昨年「あとりえ 悠」十周年を経て、

田中さんにお礼の報告に行きました。

田中さんはお孫さんのお世話で忙しいなか、

あのときと変わらない笑顔でお迎えくださいました。

 

(2019.2.19 記)