心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.258 作品展用に4点お借りしました~「北斎の浪のステンドグラス」「檜山路の灯り」「檀の灯り」「碧天の星座」

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北斎の浪のステンド」という考えたこともないご依頼に

妻は困っていましたが、

何度も試し彫りをしながら仕上げました。

作品の裏に回って彫った浪の深さをご覧下さい。

 

妻の作った作品の多くは手元に残っていません。

他のお客様から見たいと求められても

写真を見ていただくだけでした。

「この作品、見てみたい」等

みな様のご要望や関心の高い作品について

それぞれ所有者の方にお願いしたところ

幸いにみな様どなたも快く

「どうぞ」とおっしゃって下さいましたので、

拝借しましてこの度の作品展に展示いたします。

 

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「檜山路の灯り」

旧家の佇まいのお宅を何度も訪ねて

この地と家を大事に守って来られたご夫妻の心にふれながら

作らせていただきました。裏表2面で春夏秋冬。

両サイドにはかわいがってきた愛犬の「もも」と「かんべえ」

 

妻は全く同じ作品は作れるかというと

無理と言います。

型紙におこすわけだから、

素人の私には

できるでしょ、と簡単に思っていましたが、

何年も妻の作品作りを見ていて、

妻の言っている意味が分かってきたような気がします。

私なりの理解ですが

一つの作品が生まれるのは

ご依頼の方の思いとエネルギー、

作る側の思いとエネルギーと技能、

そして材料の硝子。

作品はこれらの総和として生まれる…

いや総和でなく3者の相乗効果なのでしょう。

ご依頼内容が

妻にはステンドに合わないし技能的に無理と思えたものでも

ご依頼者の思いとエネルギーを受けて

作品完成に至ることもあったと思います。

 

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「檀の灯り」檀(まゆみ)ちゃん3歳のお誕生記念のご依頼での制作。
灯りの形は妻が使うお茶碗の形です。                                まゆみちゃんの大好きなテントウムシとブタさんのお人形さんも
まゆみちゃんを照らしています。

 

材料の硝子ですが

これもとても厄介なようです。

妻がよく使用する硝子の大半は

昔と同じように吹いて作る手作り硝子です。

型番が同じで見た目も同じように見えても

実は厚さは場所によって異なります。

厚さが違うと光を通したときの色合いが微妙に違います。

同じ型番の硝子を使っても

作品から受ける印象まで全く同じと言うわけには

いかないこともあります。

同じように見える双子の方々には

全く違う個性があるのと同じかも知れません。

硝子も生き物なのですね。

 

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「碧天の星座」ご主人をなくされた方のご依頼です。
「星のドーム」をご覧になった方が、我が家に来られて硝子選びもされました。

明るい色でとのお願いでしたが、

この明るい色が作品の雰囲気を決定づけたように思います。

 

実は妻の作品に使用されている硝子の中には

もう生産されていないので手に入らないものが

数多くあります。

近年欧米の大手老舗硝子メーカーの廃番措置や生産中止が

続いているからです。

アンティーク硝子の良さがもっと人々に認められて、

需要が高まるといいのですが…

 

(2019.12.4 記)