心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.264 小さなパネル「雪うさぎ~春をむかえに」

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まっしろな

どこまで いっても

まっしろな… 

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いっても 

いっても

まっしろな…

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あ…

かすかな

はるの 

におい

 

 

「春のにおい」

雪国から東京に出て

何年が経ったでしょうか。

畑のひろがる郊外の春めいた昼下がり、

田舎で暮らしていた頃感じたあのにおいを

私は突然感じました。

あ~、春のにおい。

田舎でこんな言葉はなかったように思うが、

その時感じてつぶやいた言葉。

春のにおい。

野辺に咲く可憐な花の香りではなく、

雪の下からわく土のにおいのようなもの。

ようやく凍みた大地も温もり出したのだろうか。

待ちこがれた春を身体が感じてる。

春のにおい…

 

 

「雪うさぎ」のシリーズ紹介

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妻の最初の「雪うさぎ」が誕生してから12年。

妻の作品の中でもとりわけ人気のモチーフになりました。

 

ご依頼者の方の要望をうかがいながら作る中で、

うさぎの向こうにももう1羽のうさぎがいるデザインが

増えてきました。

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パネルの雪うさぎ

今回は初めてのパネルの「雪うさぎ」。

向こう側の硝子はないので、

硝子の向こうにもう1羽のうさぎはいません。

残念なことに2羽のうさぎの心情を

想像して楽しむことはできません。

ところが

1羽だけのうさぎの背中と足跡をじっと見ていると、

1羽のうさぎの気持ちを楽しむことになると知りました。

うさぎの背中と雪に残る足跡が

見るものに想像する楽しさを与えてくれるようです。

 

(2020.2.20 記) 

No.263 妻とグリークラブ

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妻が学生時代に作ったポスター。

もう45年も前のもの。

おととい二人で押し入れから探しだした。

あった、あったと二人して感激。

 

私は授業はサボってもグリーの練習には出た。

そんな学生時代。

後輩の妻も、グリーが大好きだった。

演奏会に妻は必ず聴きに来た。

大好きだったグリーのために描いたポスター。

妻の忘れられない作品 。

 

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秋田で見たキクザキイチゲをモチーフにした作品

 

出てきた妻のポスターを見て思った。

あらー、なんか今の作品につながってるねー。

中央部のこの花、

演奏会への願いを込めた一輪?

妻は作品のつたなさを恥じていたが、

私には、

妻の現在の作品にもつながるポスターに見えた。

 

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 妻は自然の草花にふれると元気がでるという。

私にはモチーフの草花に妻の願いがこもってるように思える。

 

5年前、

私はこのグリーのOB合唱団に入団した。

団の定期演奏会も迫ってきた。

最近気ぜわしいのはこのためかも知れない。

 

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以下は5年前のOB合唱団会報誌に寄せた拙文です。

                               

  「定演の舞台」 

 私には久しぶりの大舞台。多田作品は全7曲で30分。指揮者の目と指揮棒を見ながら必死で、練習中の指摘以外に頭をよぎるものはなかった。しかし突然、“あっ、左足、しびれてる!”気づいたときにはすでに感覚がない!まだ残り2曲。これは正座のしびれ状態…退場時左足もつれて転倒!?しかもこの大ホールに緞帳が無いと言うことは1500名の皆さんの前で大転倒!!一気に悪夢が駆けめぐった。ええい、どうにでもなれー!

 幸いになんとか歌い切って終わった。退場時すべての神経とエネルギーを左足に集中。たぶん退職後これほどの集中力発揮はない。誰にも気づかれないようにソデを目指して歩き、無事に生還。ほっとした。後を続いて歩いてこられた先輩が「足、つりましたあ?」やさしく声をかけてくれた。その時、私は歌い終えたことより、そのやさしい言葉の響きに感動した。後日、その先輩も入団直後の舞台で同様の体験者と知った。

 「妻の後押し」             
 今回、グリーOB合唱団入団と定演出演は妻の後押しがなければ、いずれもなかった。私は、横浜は遠いし、時間はないし、その都度妻に言うのだが、グリーの好きな妻にはこの日本語がなかなか通じない。それに、私の同期はもち論前後の代のメンバーの名前や歌った曲も知っている~!グリーのミサ曲も歌える~!等々迫る。私も聞き流すがなかなか手強い。とうとう入団を決めた。練習日に妻はいつも喜んで見送ってくれる。私も歌える喜びを味わって帰宅だから、今は入団して良かったと妻に感謝している。

 定演の日、妻は喜び勇んで横浜みなとみらいホールに聴きに来てくれた。友達も誘って。忙しくて来られなかった息子や娘にはLINEでホールの写真を送るなど大騒ぎだ。まあ、想定内だ。だが、私が足をしびれさせながら死にものぐるいで歌っていることを知らずに“お父さん幸せそう”とのコメント付きだった。ん~…想定外の足のことは後で一応伝えた。

 もう後戻りはできないが、賑やかな老後も悪くないと思う。グリーのお蔭である。私の過去の思い出だったグリーは、こうしてまた思い出を作るグリーになった。 

 まだ入団されてないOBの方、貴方もいかがでしょうか。

 

追伸

当日県立音楽堂に1100名の方にお越しいただきたいと

OB合唱団員一同練習と入場者獲得に奮闘中です。  

(2020.2.2 記)

 

《ちょっとした後日談》

このブログを見た後輩から、次の年の演奏会は確か自分のデザインと思うとの連絡がきた。たまたま今回探したパンフレット6枚にそれらしいものがあったので画像を送った。それ!とのこと。その彼は今は広島在住。定演の練習のために早朝の飛行機に乗り込み練習に来る。その後の人生に図らずもまた交錯することがあるということも、あのグリー故でしょうか…

 

※第14回定期演奏会

 新型コロナウィルス対応により7月25日に延期決定。

 ご来場予定されている方には、ご迷惑をおかけします。

 (2020.2.22 追記)

 7月の定演も中止が決定しました。

 今はみんなで練習のできる日を心待ちにしています。

 みな様もご健康にはどうぞお気をつけください。

 (2020.4.21 追記)

No.262 作品展を写真で楽しむ~フォトブック「*あとりえ 悠*第6回作品展」

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この硝子の表情を見て!

作品が息をしているみたい…

長い間ステンドグラスを

プロとして撮ってこられた方の写真に

妻と感心しています。

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第6回作品展の初日、

会場内の作品を撮影して頂きました。

いろいろな制約がある中でしたが、

午後から夜までの間,

全ての作品が写真におさまりました。

 

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10数年前、

1冊の写真集を持った妻のつぶやきを

今でも覚えてています。

いつかこんなのができたらいいなあ…

ステンドグラス作家のずしりと重い立派な装丁の写真集。

今回妻の作ったフォブックは

妻がかつて夢見たような写真集の豪華さはありません。

でも私達には嬉しい一冊。

写真に収まった作品が嬉しそうで…

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祈るように作った妻の作品と、

硝子作品撮影のプロの写真をもとに作られたフォトブック。

ご覧になった方が

作品展の雰囲気と作品の表情を楽しんで頂けたら嬉しいです。

このフォトブックを

もし希望される方がいらしゃるようでしたら

下記にご連絡ください。

shigeo.ichinoseki@gmail.com

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*あとりえ 悠*では以下のフォトブックも作成しています。

1 「*あとりえ*第5回作品展」  

   それまでの国立駅前「ブランコ通り」のギャラリーが

   手狭になったのでコートギャラリーで開催しました。

   作品の展示しやすい立派なギャラリーで

   私たちは感激しました。

 

 「木の灯り*あとりえ 悠*」

   日本青年館ホール楽屋等 2017 

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   妻が春夏秋冬の木々に寄りそい作った「木の灯り」。

   日本青年館ホール楽屋前の12種の「木の灯り」です。

   東京オリンピックで新国立競技場建設となり、

   隣接の日本青年館は新しい場所に誕生。

   新国立競技場がテレビに映る度に

   私は木の灯りを思い出します。

 

 「吉祥寺パレント2019春」  

   パレントは吉祥寺中道通りにあるブティック。

   6年前から春と冬の年2回のフェア。

   他に「2018の春」「2018冬」もあります。 

 「紀ノ川薔薇文様」

   心に灯るあかり*あとりえ 悠*一ノ関悠子 

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   和歌山の方からのご依頼で高野山を訪ねて

   室町時代の薔薇文様に出会いました。

   優れた文様がアンティーク硝子と出会い

   まるで現代に生き返ったようです。

   妻の作品の重要なモチーフです。

 

 「心に灯るあかり」

   妻のステンドグラス作品紹介のブログより 

   恥ずかしながら私の気まぐれブログの抜粋です。

   妻が体調を壊したときから今まで

   頑張ってこられたのはステンドのお陰。

   支えてくださった方々のお陰。

   感謝の気持ちで作成の小誌。  

   ※フォトブックはいずれも1冊1000円です。

   (2020.1.13 記)

No.261 迎春 2020年~今年もよろしくお願いします

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硝子作品に深い造詣と豊かな撮影経験を有したプロ写真家に

妻の作品展出品作品を撮影していただきました。

写真集代わりのフォトブックを作成中です。

2020年

今年はどんな1年になるのでしょうか

 

新年に抱く期待や不安

いつの間にか

今年はこれとこれをしよう

そんなふうに変わっていると気づいた 

 何十回もの新年を重ねたからだろうか

 

作品展を終えてから

多くの方から様々な言葉をいただきました

過分なお言葉に妻は恐縮しながら

これまで得られた人との関係を大切に

また作品を通して新たに生まれる関係も大切に

作品作りに励もうとしています

私もまたそんな妻の応援が少しでもできればと思います

 

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新春には2年後の作品展の会場を押さえます

これからも

大勢の方々にお世話になることも多いと思います

どうぞよろしくお願いいたします

 

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みな様にとってこの1年が良い年でありますよう

お祈り申し上げます 

 (2020.1.2 記)

No.260 第6回作品展~どうもありがとうございました

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12月5日から10日までの妻の第6回作品展を

無事に終えることができました。

ひとえに応援くださるみな様のお陰と

心より感謝申し上げます。

本当にありがとうございました。

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一つ一つの作品に妻は作り手として言葉を添えました。

説明の中に作り手の思いもにじんでいるように思いました。

作品と説明のカード双方をじっくりご覧になる方が多く、

妻と私には嬉しい光景でした。

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 ※今回の写真は大島様撮影によるものです。

 大島様、ありがとうございました。

作品展を終えてもう一週間です。

終わってからご来場された方々から何度も

「よかったよ。」「またやってね。」

との嬉しいお声を頂きました。

喜んでもらえた満足感で心いっぱいになります。

その都度妻と嬉しいねと顔を見合わせます。 

もう1回ぐらいできるかなあ…

そんな話をします。

 

一方で申し訳なく反省していることがあります。

作品展によく来られていた方やお世話になっている方なのに

他のご来場の方への対応のため気づかずに

ご挨拶もせず大変失礼をしてしまいました。

申し訳ありませんでした。

どうぞお許しください。

 

終了後家の中に積まれた40数個の段ボール。 

目にしたときよぎる不安。

2年後もまだこんなに膨大な作業ができるだろうか…

搬出入は時間と競争しながら大人6,7人での作業。

会期期間中の運営には常時4,5人でなんとか対応。

それをこなすための細かい妻の準備作業…

 

(2019.12.17 記)

 

No.259 第6回作品展がはじまりました

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大勢のみな様のお陰です。

第6回作品展を開催できました。

ありがとうございます。

本当にありがとうございました。

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(1)ごゆっくりご覧下さい。

   お楽しみ頂けましたら嬉しいです。

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(2)ミュージアムショップのつもりはなかったのですが…

   *あとりえ 悠*関連のものも受付前に並んでいます。

   お気に入りがありましたら手にとってご覧の上

   よろしかったらどうぞお求め下さい。

 

(3)何かお聞きになりたいことがありましたら

   どうぞご遠慮なくお願いします。

   人と人とのやりとりこそ

   作品への新たな出会いと発見に

   つながる… 

   そんな気がします。

   (*あとりえ 悠*関係者は

    ネームプレートを着用)

    

   《開催3日後の追伸》

   と言っていたら

   声が出なくなりました。

   他にもスタッフがいますので、

   遠慮なくどうぞ。

   面目ない!

 

 (2019.12.8 記) 

   

 

No.258 作品展用に4点お借りしました~「北斎の浪のステンドグラス」「檜山路の灯り」「檀の灯り」「碧天の星座」

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北斎の浪のステンド」という考えたこともないご依頼に

妻は困っていましたが、

何度も試し彫りをしながら仕上げました。

作品の裏に回って彫った浪の深さをご覧下さい。

 

妻の作った作品の多くは手元に残っていません。

他のお客様から見たいと求められても

写真を見ていただくだけでした。

「この作品、見てみたい」等

みな様のご要望や関心の高い作品について

それぞれ所有者の方にお願いしたところ

幸いにみな様どなたも快く

「どうぞ」とおっしゃって下さいましたので、

拝借しましてこの度の作品展に展示いたします。

 

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「檜山路の灯り」

旧家の佇まいのお宅を何度も訪ねて

この地と家を大事に守って来られたご夫妻の心にふれながら

作らせていただきました。裏表2面で春夏秋冬。

両サイドにはかわいがってきた愛犬の「もも」と「かんべえ」

 

妻は全く同じ作品は作れるかというと

無理と言います。

型紙におこすわけだから、

素人の私には

できるでしょ、と簡単に思っていましたが、

何年も妻の作品作りを見ていて、

妻の言っている意味が分かってきたような気がします。

私なりの理解ですが

一つの作品が生まれるのは

ご依頼の方の思いとエネルギー、

作る側の思いとエネルギーと技能、

そして材料の硝子。

作品はこれらの総和として生まれる…

いや総和でなく3者の相乗効果なのでしょう。

ご依頼内容が

妻にはステンドに合わないし技能的に無理と思えたものでも

ご依頼者の思いとエネルギーを受けて

作品完成に至ることもあったと思います。

 

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「檀の灯り」檀(まゆみ)ちゃん3歳のお誕生記念のご依頼での制作。
灯りの形は妻が使うお茶碗の形です。                                まゆみちゃんの大好きなテントウムシとブタさんのお人形さんも
まゆみちゃんを照らしています。

 

材料の硝子ですが

これもとても厄介なようです。

妻がよく使用する硝子の大半は

昔と同じように吹いて作る手作り硝子です。

型番が同じで見た目も同じように見えても

実は厚さは場所によって異なります。

厚さが違うと光を通したときの色合いが微妙に違います。

同じ型番の硝子を使っても

作品から受ける印象まで全く同じと言うわけには

いかないこともあります。

同じように見える双子の方々には

全く違う個性があるのと同じかも知れません。

硝子も生き物なのですね。

 

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「碧天の星座」ご主人をなくされた方のご依頼です。
「星のドーム」をご覧になった方が、我が家に来られて硝子選びもされました。

明るい色でとのお願いでしたが、

この明るい色が作品の雰囲気を決定づけたように思います。

 

実は妻の作品に使用されている硝子の中には

もう生産されていないので手に入らないものが

数多くあります。

近年欧米の大手老舗硝子メーカーの廃番措置や生産中止が

続いているからです。

アンティーク硝子の良さがもっと人々に認められて、

需要が高まるといいのですが…

 

(2019.12.4 記)