心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.12 紫陽花の灯り

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3年前にサクラの花びらを1000ピースカットして“花影”という作品を作った時に、
紫陽花もこんな風にすれば綺麗にできるかも知れないと思って

500枚をカットしました。
4枚を花の形に組んでモールドに貼り付けていきましたが、
7割を過ぎたところで足りなくなりました。
翌年は手つかずで放ってしまい、
昨年は春早くから300ピースカットして花を作り始めましたが、
貼りたす前に紫陽花の時期が終わりました。

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作品としてのデザインや色合いはもうおかしいと思いましたが、
完成はさせようと今年、再々開しました。
何とかボール型に作ってできあがった!
と光を通してみると隙間から洩れる光りがどうしてもうるさく感じて
クリアや薄いブルー・グリーンのガラスピースをさらに200ピース作りました。

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時間と手間がかかった割にはどうと言うこともない作品になってしまいましたが、
写真を撮るとわずかに洩れる光りの影がハート型になって壁に映り、

喜ばせてくれました。

 

写真&文 2011.06 ステンドグラス *あとりえ 悠*

 

~ステンドグラスの楽しみいろいろ~

 

家人の寝静まった頃、この紫陽花のステンドグラス一つを灯すと

暗闇にぼーと光がさしこみます。

ステンドグラスは人間に闇と光を楽しむことを教えてくれたようです。

 

「闇と光」と言えば、今でもあの強烈なステンドグラス作品は忘れられません。

15,6年前の名のある有名なコンテストの創作大賞受賞作品でした。

闇が深ければ深いほど、光が煌めけば煌めくほど互いに主張し合い

見る人を圧倒し釘付けにしてしまう、そんな作品でした。

闇と光の交錯するエネルギーのほとばしるような世界です。

5400点を超えるなかからグランプリに選ばれたことも納得!

ステンドを始めた頃の妻と「すごいねえ」と作品に大きな衝撃を受けました。

 

あれから多くの時間が過ぎました。

妻はオーダーを受けた作品や自分のつくりたい作品をつくってきました。

その妻の作品の中でこの紫陽花の灯りはなぜか15,6年前の強烈なステンドを

思い出させます。

 

もともと妻の作品のモチーフは「闇」ではなく「影」だと思います。

作品は「光と影」で彩られます。

光と影は互いに求め合い、良さを引き出しつつ、共存しようとします。

グランプリ受賞作品のような見る人を圧倒し釘づけにする強烈さはありません。

それでも妻の個展や作品を見られた方から

「優しい気持ちになった」「癒された」との言葉に

「ステンドをやってて良かったね」と二人で喜び合います

優しさは他への優しさになり、癒しは人の支えにのなるのではないでしょうか。

ステンドグラスの楽しみ方はいろいろです。

 

ところで、

ステンドをやっていて、他から優しさや元気を一番多くもらっているのが妻です。

間違いなくそうでしょう。

感謝しています。

私も傍らでこんなことを勝手に楽しんでいます・・・

私も皆さんに感謝です。ありがとうございます。

                        2012.6.29 記