雪の森でトナカイを見つめていたうさぎが
春を迎えました。
あたたかい野原にはたくさんの草花が
咲き乱れています。
うさぎはお日さまをまぶしそうに見上げながら
日向ぼっこをしています。
その視線の先には…蝶々が舞っています。
野バラは満開です。
とってもいい香りで綺麗ですけれど、
棘があるし、蜂も来ているから気をつけてね。
サンドブラストのうさぎは彫り方を工夫して立体感を出しました。
二面合わせてみるとうさぎが蝶々を見上げているようになっています。
写真&文 2008.04 ステンドグラス *あとりえ 悠*
参考資料 「輝きの手彫りガラス」 マコー社
「ENOA」さんのうさぎ語のイラスト
~ もうひとつの花野原 ~
この作品をご覧になった方から、作品を譲って欲しい旨のご連絡をいただきました。
コンテスト向けの作品は細工も凝り、半端でない材料費と手間がかかっていることや
翌年の個展に出品するために手放せない事情を伝え、ご希望に沿えない旨の返事をしました。
その2日後にメールが来ました。
大切な方を亡くされて間もないことの書き出しの後、次のように続いていました。
2か月過ぎても悲しみはとまらず、夜、子どもが寝静まってから一人泣いていました。
子どもは気づいていたんですね。
お友達のお母さんに「お母さん、大丈夫なの?」と聞かれた時、
「たまに泣いている。」と答えていたそうです。
そんな時にWebコンテストで花野原を見て
「うわあ、きれい。」と言ったのを聞いて、子どもも覗きに来ました。
「マミー、やっと笑ったね。」と言いながら。
私 :「こんな素敵なステンドグラスが家にあったらいいね…」
息子:「じゃあ、『これくださいな』ってメールすればいいよ!」
私 :「これは売り物じゃないし。高いから無理よ。」
息子:「そんなのやってみなきゃ分からないじゃん。」
「マミーが笑ってくれるなら少しくらい高くってもいいよ。」
「僕、おもちゃもお菓子もがまんするから。」
夢にも思わなかった内容に涙が止まりませんでした。
夫も「心を込めて作りなさいね。」と言いました。
この方のための灯りを新たに作らせていただこうと思いました。
亡くなられた方が蝶になってうさぎを見守っているように図案を変えました。
完成して、直接お会いしてお渡ししました。
-以下ご依頼くださった方のブログより抜粋-
私のこの作品に対する思いも伝え、出来上がったのがこの「愛しい灯り」です。
息子と二人、部屋の電気を消してしばらくランプを眺めていました。
「ここはうさぎちゃん。ここは蝶々。ここは・・・」
物語ができそうです。
これから毎晩、この灯りの下でいい夢を見ながら寝られそうです。
今回 ~もうひとつの花野原~ の掲載にあたり、
ご依頼してくださった方と何度かやり取りをしました。
お菓子もがまんすると言ってくれた息子さんも今は見上げるほどに成長されたそうです。
そして、あの時にこの作品に出会えた幸せを伝えてくださいました。
妻がご依頼を受け、デザインをし、製作してお届けする過程はまるで物語です。
妻はご依頼してくださった方にいろんなことをよく聞き、つくります。
妻はその物語を協同でつくりあげているように思います。
そのことは良い作品をつくるというエネルギーになっています。
~もうひとつの花野原~ をご依頼くださった方から、
妻は大きなエネルギーをいただきました。
こちらのほうこそ、あらためて感謝申し上げます。
2012.05.19 記