心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.278 母の帯の灯り

f:id:you3113:20201216162554j:plain

直接拝見はしていませんが

きっと

とても素敵な

とてもとても大切な

帯に違いありません。

できあがった作品をみて

私はそう思いました。

f:id:you3113:20201114121242j:plain

 ご依頼者が送ってくださった「帯の写真」

制作にあたり、

ご依頼の方から

妻は

大切な帯の写真と

大切なその意味を

受け取ったのでしょう。

 

f:id:you3113:20201216203512j:plain

帯の絵から

「薄紫色のお灯明」ができました。

妻は

世界で最も美しいフリーモント社のガラスに

その花を彫りました。

 

f:id:you3113:20201214232506j:plain


作品ができ、

お届けの荷づくり作業の妻を見て、

私はお借りした大切な帯を

お返しする気分になりました。

大切なものを

どうもありがとうございました。

 

f:id:you3113:20201215073201j:plain

ふと 思い出しました。

50年前田舎の母が縫って送ってきた私のゆかた。

捨てられずにまだ箪笥の奥にあることを。

着ないのに。

ごく普通のゆかたでさえ、

私はまだ捨てられないでいるのです。

身にまとう衣装の不思議さ。

 

汗水たらしながら作った野菜を

リヤカーに乗せて朝市に行って売っていた母。

得たお金を握りしめるように私のゆかた生地を求めて

朝市近くの呉服屋に飛び込んだのでしょうか…

 

薄紫色のガラスのやさしさ。

心慰められる作品に仕上がったように

私には思えます。

 

 (2020.12.22 記) 

No.277 ドアの「伊勢物語」- 夢うつつ -

f:id:you3113:20201201203300j:plain

 

~お納めした髙野さんから

  その夜にメールが届きました~

 

今晩は。髙野です。

今日は素敵なステンドグラスを取り付けていただき

ありがとうございました。

写真の通り、超素敵な「窓」になりました。

心がワクワクして興奮鳴り止まず?です。

本当にありがとうございました。

 

~翌朝、また髙野さんからメールがきました~

 

お早うございます。

今朝は窓から差し込む朝日(赤い太陽光)を受けて、

雅な世界を醸し出していました。

太陽光線によって色の違いまで

楽しんでいます。

 

メールを見て妻は嬉しそうでした。 

妻が作品を作り続けることができるのは、

ご依頼者に喜んでもらえるからです。

制作過程もご依頼者と歩んでいるかのようです。

 

《制作過程》

1 もと絵

f:id:you3113:20201202000545j:plain

「小説伊勢物語 業平」髙樹のぶ子著 大野俊明 の挿絵

 

昨年、妻が作った北斎の[神奈川沖浪裏」(注1)を

気に入っていらした髙野さんから、

“そのうちお願いします”とのご依頼がありました。

 

その後、髙野さんが

ステンドをはめ込む枠をドアに設けたと

教えてくれました。

 

2ヶ月半前、

モチーフの絵が決まり、

お宅に招かれてお打合せをしました。

ご指定の絵は「伊勢物語」の「夢うつつ」。

妻は平安時代の絵巻絵は初めてでしたが、

ご依頼者のお陰でいろいろな作品に挑戦できると

意欲満々でした。

 

2 下絵とピース作り

f:id:you3113:20201202083104j:plain

左:元絵からステンド用にデザイン  右:ステンド用ピース

下絵作業は元絵の良さを

ステンドグラス作品として表す大切な過程。

下絵を何回も描きなおし、

決定前にまた髙野さんにその画像を送っていました。

絵が決定してから、

一片ごとに切ってピースにします。

 

3 ガラス選び

f:id:you3113:20201202083438j:plain

色合い、透け感など作品表現に直結します。

ピース1枚でもどのガラスをどう使うか

気を遣うところのようです。

 

どんなガラスを使うか、

髙野さんに直接見ていただいて、

説明と相談を重ねて決めました。

 

 

4 ガラス研磨後のピースはめ

f:id:you3113:20201202083720j:plain

 

17cm×23cmの四角の中に116個のピース。

小さいピースが多いようです。

 

5 テープ巻きf:id:you3113:20201127214447j:plain

 テープ巻き作業を見ていると、

いかにも職人さんみたいで、

私はこの作業にあこがれます。

巻き方一つで、

作品のできにも影響がありそうで…

ん~、やっぱり見ているだけがいいですね。

 

この後、ハンダ作業になります。

もっと職人さん風になります。

 

6 作品完成

f:id:you3113:20201128152921j:plain

 

作品が完成すると出窓に置いてみます。

ガラスが自然の光を背に生き生きするように見えます。

妻も私も出窓に置いて撮る写真が好きです。

 

7 ドアにはめて完成

f:id:you3113:20201201203300j:plain

 

最後に、

このような平安の世をステンドで表現する機会を

髙野さんにいただいたことに感謝しています。

 

私は

日本の人々が親しんできたモチーフで

もっとステンドを楽しむ機会が

暮らしの中で増えるといいなあと思います。

私は美術や美学についてはよく分かりませんが、

生活者としての暮らしの気分が変わるということを

私自身実感してきました。

同様にご依頼者の方にも、もしうまれるようでしたら…

妻の励みになると思って

妻のステンド作業を見てきました。

 (2020.12.9 記)

 

(注1)

f:id:you3113:20170909123242j:plain

髙野さんのご覧になられた北斎の「神奈川沖裏浪」の作品

紹介のブログ → No.201 北斎富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」 - 心に灯るあかり *あとりえ 悠* (hatenablog.jp)

No.276 妙高高原の「BONNE NEIGE (ボン ネイジュ)」その1 (取材訪問)

f:id:you3113:20201119062329j:plain
妻の「コッツウォルズの蜂蜜色の家」(2012年制作)を

ご覧になった方からのこんなご依頼でした。

 

 

35年前、

お父様が始めた妙高高原のペンション。

ときには40名のお客様をお泊めし、

家族みんなで切り盛りしてきました。

昨年お父様が亡くなられた後、

ペンションの営業をやめられました。

お父様、家族の思いのつまっているペンションを

ステンドグラスにして欲しい。

 

そんなご要望に、

 紅葉の便りが聞かれるようになった頃、

雪の降る前にとあわてて、

ペンションのある妙高高原に妻と向かいました。

高原をそよぐ空気の中で、

ペンションの佇む風景を直接目にしたい…

 

f:id:you3113:20201116010654j:plain

(ペンションのお客様だった佐藤明氏の描いた「BONNE  NEIGE」)
 

東京にお住まいのご依頼者から

今もペンションにお住まいのお母さまと妹さまに

ご連絡がなされていて、

私達は心あたたまる数々のおもてなしを受けました。

急な訪問にもかかわらず…

ただただ感謝です。 

 

f:id:you3113:20201122001444j:plain

ペンション近くの「いもり池」
 

妻と私が感じたのは

現地を訪ねることのできた感激よりも、

ペンションを守ってこられた方々の思い。

人の繋がり、人のあたたかさでした。

 

f:id:you3113:20201122001518j:plain

青い空とBONNE NEIGE 

 

妻はどんな「BONNE NEIGE」を

ステンドで表すのでしょうか。

来年5月の3回忌までに完成させるそうです。 

私はおもてなしくださったお二人を思い出しながら、

どんな作品ができるのかとても楽しみになりました。

(2020.11.25 記)

 

No.275 海の作品~「海月(くらげ)の水族館」他

f:id:you3113:20200924093211j:plain

「海月(くらげ)の水族館」

夏も終わる頃に

ようやく「海月(くらげ)の水族館」が完成した。

作品制作前に

妻と「すみだ水族館」に行ってクラゲを見た。

水中のクラゲの可愛らしさに

何度もシャッターを押した。

 

可愛らしさに妻は声をあげ、

糸を引くような動きの美しさに見とれていた。

f:id:you3113:20200903142136j:plain

すみだ水族館で撮影

 

9年前、

妻はご依頼された「海のパネル」を作っている時に

東日本大地震による津波が東北地方を襲った。

あまりにも大きな被害ゆえか

妻はステンド作りが辛くなり、

遠ざかりかけた。

ご依頼主に励まされて

何とか完成にこぎつけてお納めした。

f:id:you3113:20110323113701j:plain

お納めした「海のパネル」

しかし、この作品の納入後すぐに

妻は海の作品「碧生~あお」を作った。

津波の寄せる海の底に静かに生きる貝の生命に

生きる思いをよせたのでしょうか。

f:id:you3113:20111231134133j:plain

作品「碧生~あお」

数十本の針金のように尖ったホネガイの瑞々しさが

愛おしく思えた。

f:id:you3113:20200927012423j:plain

 

「海月(くらげ)の水族館」は

海の作品5作目。

f:id:you3113:20200919065625j:plain

「海月(くらげ)の水族館」

コロナ禍のなかで完成というのも

海の不思議な力でしょうか。

(2020.9.30 記)

No.274 作品の貸出し「であい の ひととき」を始めます

「であい  の  ひととき」

f:id:you3113:20100223205937j:plain

          あとりえ悠の灯りを

          ご自分の部屋で

          ご自分でともす

          部屋中が

          それまでと違う空間に

          なるでしょう
           
          そんな

          ひとときを

          どうぞお楽しみください

 

 

 

f:id:you3113:20200812223946j:plain

 

かりた人と作品がほんの短い期間に

忘れられない良い出合いとなるように

「であい の ひととき」と名付けました。 

 

そして

貸出用フォトブック「であい の ひととき」を

作りました。

 

「であい の ひととき」の活動紹介です。

 

◎「あとりえ 悠」作品を

 ご自宅で、ご自分で

 灯りをともして楽しむ機会になれば

 とても嬉しく思います。

◎期間は1週間で、貸し出し料2千円です。

 このお金は活動継続の為に使わせていただきます。

◎この活動を支援してくださる方で

 ご近所在住の方がいらっしゃったら

 「協力者」としてご一緒にのんびり

 また楽しく取り組もうと思います。

◎作品の貸し出し対象者は

 過去「あとりえ 悠」に関係された方か

 「協力者」の友人の方。

 貸出し方法も「直接顔を見て、手から手へ」が

 いいなあと思っています。

◎ステンドグラスはとても丈夫ですが、

 万一破損が生じても損害賠償を求めません。

 コロナ禍でやり残したことに気づき、

 コロナ給付金で後押しされた活動です。

 続けられる限り頑張ります。

◎どなたでも

 また私のような高齢の人には特に

 心から安心して楽しんで頂けることが

 一番大切だと思って取り組みます。 

f:id:you3113:20171210164355j:plain

一ノ関悠子作品展会場入口に並ぶ「あとりえ 悠」の作品

 

(2020.8.20 記)

No.272 「ココペリ」~コロナ禍の中で最も多かったご依頼

f:id:you3113:20200220081655j:plain

(その1)吉祥寺「パレント」春のフェア出品用 (予定4月:中止)

 

コロナ禍の世の中

この春から夏までの

妻への作品ご依頼で多かったのは

ココペリ。

たまたまなんでしょう…が。

一つのモチーフが突出するのは

初めてです。

 

ココペリは

コロンブスの大陸発見前から

その地に住んでいたネィテブアメリカンの精霊。

豊作・子宝・幸運をもたらすと

言われてあがめられてきました。

 

f:id:you3113:20200530190316j:plain

(その2)「ココペリのランタン」S様 納品3月     
※中には燭台がおけるように扉付き

 

f:id:you3113:20200224214248j:plain

(その3)「アロマのココペリ」H様 納品2月

※世界最高の品質を誇る仏独米3社のフルアンティークガラスによる作品

 

f:id:you3113:20200703100700j:plain

(その4)ココペリのキャンドルホルダー」隠れ家カフェ「ローズ亭」様 出品7月

 

 

f:id:you3113:20200726115444j:plain

f:id:you3113:20200727002416j:plain

(その5)「ココペリのキャンドルホルダー8面L」 K様 納品8月 

 

(2020.8.1 記)

 

No.271 お誕生祝い~周極星のランプ 

 f:id:you3113:20200528175618j:plain


私達がお世話になってきた登坂さんからのご依頼です。 

登坂さんのお世話になってきた方にお子さんが誕生し、

そのお祝いにとのことでした。

 

登坂さんには私の現役時代、

教員の研修講師や子どものためのPTA活動等々に

いろいろお世話になりました。

また私の退職後

妻は登坂さんに励まされました。

日本青年館ホール「木の灯り」制作時

宝塚で活躍していた登坂さんが使用したホールとのことで、

妻は創作意欲がいっそう湧きあがるようでした。

 

 

f:id:you3113:20200528001537j:plain


《作品納品時に登坂さんに送った妻の手紙(抜粋)》

星組」で活躍された登坂さんの繋がりで星を、また「周」というお名前から広い空や宇宙を連想いたしました。モチーフの一つは周くんのお誕生の星座であるみずがめ座を彫りました。
またいろいろ調べているうちに『周極星』に辿り着きました。周極星(しゅうきょくせい、英: Circumpolar star)とは、地球上のある地点で沈まない星のこと。つまり天の北極または天の南極に近接し絶対地平線下に沈まない星をさすそうです。周極星の一つである天のめあての星「北極星(ポラリス)」をもつこぐま座をお入れしました。

周くんの健やかなご成長とご家族のお幸せをお祈りしながら心を込めて作らせていただきました。

 

f:id:you3113:20200528002216j:plain


 

 ~十数年も前のこと~

 

入学式翌日の職員室

突然一人の1年生の母親が来られて

私の子どもが帰ってこない!

子どもはどこ? 

その声は静かでしたが

はっきり響きました。

新米校長の私も

学年の先生達も

これは大変!

間もなく

子どもは学童クラブで見つかりましたが

学年の先生方を中心に

必死に相談しました。

明日は

子どもが間違えずに帰ることができる方法に。

先生達は何年も続けたやり方を

その日のうちに変えてくれました。

あの母親の声を聞いたから…

私もまた

学校や子どものことで思案するとき

あの時の

あの声を思い出すようになりました。

ただ子を思う親の

心の叫びなのでしょう…

 


あの声を届けてくれた登坂さんに

新米校長への贈り物に

私はいつも詫びつつ

いつもいつも感謝してきました。

 

f:id:you3113:20200528002113j:plain

 

登坂さんは

国内外で活躍されている声の専門家。

登坂さんの素敵なHPを

どうぞのぞいてみてください。

声って?

私はHPからのBLOGの登坂さんの文章を読んでいて

ふと職員室でのあの声をまた思い出していました。

https://noriko-tosaka.com/about/

 

 

f:id:you3113:20200529044513j:plain

 

このHPをデザインをされた方が、

赤ちゃんの誕生された方と伺いました。

登坂さんの二人のお子さんも、

この方に遊んでもらったことがあったそうです。

私の知っている小学生だった登坂さんの二人のお子さん

それはもう大きく立派になられていて

ほんとうに驚きました。

時代が変わる!

人の成長にふれる!

本当にうれしいものです。

 

そして周くんも

やがてそのように成長していくのでしょう。

周極星のように!

遠くで静かに

私もまたその成長を祈らせていただきます。

 

 (2020.6.27.記)