心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.267 薔薇~一輪の生命

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薔薇の季節になりました。

多くの人々を惹き付ける薔薇。

今年はそれ故なんでしょうね。

バラ園の薔薇のつぼみ全てを摘んだというニュースが流れました。

例年10万人以上の人々が薔薇を観に集まる公園とのことでした。

 

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妻は退院後、約1ヶ月の休養を経て

ようやく制作活動に取り組み始めました。

素敵なベースを手に入れ、

薔薇の作品と決めていたみたいです。

デザインは薔薇の立体感を出すように、

少し膨らみをもたせています。

外出自粛のために硝子彫刻の機械が使えず、

サンドブラストなしの作品になりました。

その分バラの花芯は、

ガラスを窯で焼いてから入れたそうです。

やはりひと手間かけた所はきらっと光るものですね。

 

 

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今春の薔薇のつぼみがふくらむ頃、

私は久米宏のラジオ番組で、

「失われた福島のバラ園」の著者マヤ・ムーヤさんを

知りました。

後日同書を求め手にし、

福島県双葉町でバラと共に生きてきた岡田さん、

そのバラ園を世に知らしめたいという著者マヤさん、

いずれもすごい人だなあと感激しました。

また、原発隣接地のためバラ園から緊急避難したまま、

二度と足を踏み入れることのできない岡田さんの無念さが、

数々の薔薇の写真ににじみ出ているように思いました。

本の「序文に代えて」の倉本聰さんの文章が、

とても素敵でした。

「バラ、今何を想う」の題のあと、

“一輪の花にも一輪の生命がある。

 一本のバラにも一本の生命がある。”と語りかけます。

 

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私は妻の作ったこの作品にふれ、

人の生命はもちろんですが、

薔薇一輪の生命の重さも噛み締める人になれたら…

ふとそんなことを思いました。

 

(2020.5.10 記)