心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.119 続 「檜山路」考 

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【制作過程1 お宅を訪ねる】

 

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【制作過程2 周辺を見てまわる】

 

前回のブログで、妻の作品名「檜山路」について

中西悟堂の歌集「檜山路」の題名から感じたことを述べたところ、

「檜山路」に住まわれているご依頼主様から

お便りをいただきました。

一読して、そこに住まわれている方の文章に

中西悟堂氏にも内田康夫氏にもない強烈な説得力を覚えました。

その土地で長く生きて来られた方の智に

私は学ばねばならない多くを知ることとなりました。

ブログにその文章掲載のご承諾のお願いをし、

紹介できることを嬉しく思います。

 

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【制作過程3 デザイン・下絵・型紙づくり】

 

・・・・・以下転載・・・

(冒頭の挨拶文3行省略)

 

初夏のような強い日射しが続いておりますが、池の辺りでは、

気の早いモリアオガエルが仲間を呼び求めて鳴き始めました。

 

   く檜山路ー考>

①檜は古事記の中に出てくるほどの、

古からのー級の建策材であるが、

成長が遅く不足がちで需要を賄えていなかった。

そのため天然の自生木よりも人間の手によって植林されたものが多い。

天を目指して直立する姿、手入れの行き届いた林には

人工的な美しさがある。

日の出町大久野地区は

昔から質の良い天然樅の産地であり大径木も多く、

このため塔婆用の材をつくる地場産業が盛んだった。

従って、日の出町を代表する自然木は檜ではなく

樅の木が妥当である。

悟堂の時代でも日の出町の檜はほとんど人間の手によって

植林されたものだったはずである。

③自然の中の命を慈しむ悟堂にとって、

野どりは一つのシンボルであり、

特徴的な囀りのイカルの声(姿を見つけることは難しい)は愛らしいが

やはり特別の存在ではなく野どりの一種にすぎないのではないか?

④イカルは日の出町全体に生息する野どリである。

主に木の実や草の実を食べて生きている。

そう考えるとイカルが鳴くのは、

樅の木や他の雑木であるのが自然であり、

あえて歌の中で檜になっているのは偶然とは思えない。

意味があるのではないか。

⑤檜山路は路の名前である。峠に続く道の名前である。

人間が峠を越えるために歩き続けることによって、

また時には人間の手によって補修されることによってでき、

使われてきた道である。

従って峠の手前側も向こう側も檜山路であり、

我が家とは反対側の旧家にも檜山路の屋号を持つ家がある。

ちなみに我が家の屋号は檜山路御前(ひやまじおまえ)であり、

略して檜山路と親戚は言っている。

⑥檜山路峠の持つ意味についてのブログにおける考察については、

大いに賛同する。峠には確かにそういう感動があると思う。

その意味でも、五日市→大久野村→檜山路峠→吉野梅郷吉川英治

という悟堂の足取りは、峠の向こう側からこちら側へと来て、

我が家の前を通って梅郷に向かったものと思われる。

檜山路峠は、向こう側から来た方が道のりが長く峠越えの気分も

強かったのだと思われる。

⑦私は悟堂にとっての檜山路とは、人間の生活と自然との融和を

願った表現なのではないかと思う。

きっと悟堂の言う檜山路・峠とは、

日本全国各所にあるのではないかと思う。

その意味において檜山路・峠は、

悟堂の内では既に固有名詞の域を出ており、

だからこそ檜山路・峠はシンボルとして歌集名になり得たのでは

ないだろうか。

 

・・・転載終わり・・・

 

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【制作過程4 ガラス選び】

 

この文章を読み終えた時、結論部分は中西悟堂氏や内田康夫氏と

重なる部分はあるものの、二人の文章では味わえない痛快さを

感じました。

その地を愛し、そこで長く生きて来られた方の生き方をも

同時に強く感じたからです。

今回の「檜山路」考を通して、

妻の作品「檜山路」が時空を超えたその自然への愛おしさに加えて

そこに住まわれる人間の生き方も想像できるものになりました。

 

お忙しい中、このような文章をお寄せていただいたことに

心より感謝申し上げます。

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【制作過程5 ガラスカット・テープ巻き】

(2015.5.11 記)