心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.184 日本青年館ホールの木の灯り(其の12)~「欅の灯り」完成

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※左面:春  右面:冬 

 

私には身近過ぎるように思える欅だが、

ひと冬前に始まった欅とのふれあいに、

妻は何を感じたのだろうか。

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欅のすべての始まりは冬。

欅の古木の穴に宿るスズメ。

春を焦がれる実生(みしょう)を宿す欅。

木枯らしにゆれる小枝にも、

期待はふくらむ。

 

春、

見ると、

赤くかわいらしい花。

 

 

 

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※左面:秋 右面:夏 

夏、木陰飛び交うルリビタキ

幸せを呼ぶ青い鳥。

日本青年館にも大きな欅。

 

紅葉した葉の奥に

ふんわりと秋の欅並木。

 

 

 

組み立て前の冬から始まる欅の四季。 

※右から冬、春、夏、秋

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“身近なものほど気づかない

 見ようとしなければ見えない”

私は小さい時から欅を見て育ったが、

こんな花をつけるとは知らなかった。

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花は妻に教わった。

妻は感受性が強く

作品作りには役だつようだが、

疲れないかと気の毒に思うこともある。

私は自然に見えてきたもので十分な質。

妻は私の鈍感力が羨ましいとよくいう。

褒められたのか、

しょうがないねと言われているのか

よく分からない。

踏み込まないようにしているから、

ひと時幸せだ。

(2017.3.15 記)

No.183 日本青年館ホールの木の灯り(其の11)~「桂の灯り」完成

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妻と1年前の冬に「とおの木」探しをした。

桂の木は近所にはないと思っていた。

春になって、妻がここにも、あそこにもと

近所の街路樹3カ所で桂の木を見つけた。

案外身近に見られる木だと知った。

丸い小さなハート型の可愛いらしい葉が特徴。

色づいた秋の葉は甘い香りで、ある地方では“おこうの木”とも。

 

冬の栄養源の桂の木の実を食べに来た“マヒワ

群れて食べに来る。

人に可愛がられたきた鳥だが弱い鳥で、

漢字では“弱い”という字をあてて“真鶸(マヒワ)”

桂の木に寄り添い共に生きている。

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昨日、設計されている方が

急ピッチで進む建設中の建物の様子の写真を送ってくださいました。

ますます完成が楽しみになりました。

公式ホームページではホール会場等の完成予想図もご覧頂けます。

  http://www.nippon-seinenkan.or.jp/dai-hall/index.html

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ホールの楽屋等11の部屋の入り口の使用木材は

部屋ごとに松、桂、栗、欅、桜、杉、栃、橅、楢、桐、朴の11種。

11種の木の室名の掲げられた部屋入り口を

それぞれの木を表現した妻のあかりが照らす設計です。

 

(2017.3.5 記)

No.182 幼稚園のパネル「光に向かう子ら」~その3「完成」

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無邪気なかわいらしさ。

妻の作品には今までなかった雰囲気です。

園との図案のやりとりで生まれたからでしょうか。

ようやく残りの右片面も2週間前に完成しました。

 

2面併せて、82cmx153cmのサイズ。

これまでこのサイズのご依頼は、

大きいから無理と大手の工房を紹介していました。

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このサイズが可能になったのは、結婚して家を出た娘の、

いや、娘の部屋のおかげです。

娘が出たあと放置されていた部屋を、

1年ほど前、妻にステンドを教わりたい人のために

二つ目の工房にしました。

この作品が作れるのは、娘の部屋のおかげね、と

妻と何度も何度もそんな話をしました。

本当は、まあ、私としては娘が結婚して家を出ても

部屋はそのままでいいかなと思うところもあったのですが、、、

 

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部屋を作業場に変えた勢いのまま、

娘の部屋のドアは、

外され、穴を開けられ、ブラケットを取り付けられ、

作品の出来具合を確認するための工房一部と化しました。

もう娘の戻る部屋はなくなりました。

(娘が結婚してもう4年よ、と妻が横で言ってます。)

 

この無邪気なかわいい作品を見ると、

未来に向かって歩んでね、と

娘からのエールのようにも思えてくるから

・・・

困ったものです。

 

(2017.2.25 記)

No.181 日本青年館ホールの木の灯り(其の10)~「松の灯り」完成

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生まれたばかりの松ぼっくりを食べるリス

かさの大きく開いた松ぼっくり

ピンととんがった松葉

花粉をつけた松の花

そして見守る松の樹皮

 

何度も何度も

樹木にふれ・・・

息づかいを感じ・・・

ようやく灯りになりました

 

日本青年館ホール11種の木の灯りに込めた

生きものたちの四季を通しての共生と成長への願い

ホールの舞台に立つアーティストの

成長とさらなる活躍への祈り

 

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 この「松の灯り」は

日本青年館ホール完成後

地下1階の連なる楽屋奥の「ピアノ庫」前を照らし、

観客に満足を届ける人々を見守るのでしょう。

 

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ホールにある楽屋などの11の部屋の入り口の使用木材は

部屋ごとにそれぞれ異なり、

松、桂、栗、欅、桜、杉、栃、橅、楢、桐、朴の11種。

この11種の木の室名の掲げられた部屋入り口は

室名の木が使われ、

その木を表現した妻のあかりが照らす設計です。

 

 

※冒頭の写真提供:Kさん(妻の工房でステンドを学んでいる方)

(2017.2.17 記)

 

No.180 幼稚園のパネル「光に向かう子ら」~その2「片面終える」

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パネルの片面ができた。

ステンドは何百年も持つそうだ。

大規模な改築修繕の行われた幼稚園もこれから50年はもつだろう。

50年後、その頃私は・・・

とても生きていない。

すると妻が言った。

この幼稚園の子どもたちがまだ元気よ。

なるほど・・・そうだね。

  

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※ペーストをぬる前にケイム(鉛線)を磨く作業

 

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※ハンダ付けの作業

 

妻は、

作品を子どもたちに見てもらえるのが嬉しいと言う。

片面ができて、

妻とのやりとりから

「光に向かう子ら」の

妻の未来への思いを知った。

(2017.1.25 記)

 

 

No.179ご成人内祝い~うさぎのお祝い皿

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今まで我が家にお母様や妹さん家族と

ご一緒に来られて妻の作品をご覧になり、

何度かご注文を頂くことのあった方からのご依頼でした。

お嬢様の成人を祝ってくださる方への内祝い用との

ことでした。

 

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お嬢様の成人式を心待ちにされていたのでしょうね。

十分な準備をうかがわせるご要望が寄せられました。

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ご要望を元に妻との相談を重ねて

次のように作品イメージが出来ました。

形状はお皿で、下部にうさぎ。

うさぎは以前買い求められた時のうさぎ。

うさぎの視線の先の月は、月に代えて花。

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花はお嬢様が成人式の時に着られる着物の花柄。

お皿のサイズは底面が名刺大。

そしてお皿は同じデザインで色を違えての6作品。

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妻には作っていて嬉しい作品なのでしょうね。

作っているとき、作品の話をするとき、

心が弾んでいるようでした。

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 ※届いた作品をご依頼主様が撮影し、送ってくれました。

ご依頼主様に作品をお送りしたところ

内祝いとして用意した箱に、

お嬢様ご自身がのし表書きをされたという、

何とも心温まるお知らせにほんのりしました。

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ご成人のお嬢様、また祝福されるみな様に

心よりお祝い申し上げます。

おめでとうございます。

 

(2017.1.13 記)

No.178 幼稚園のパネル「光に向かう子ら(仮題)」~その1「下絵完成」

 

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※幼稚園取材時、手を繋ぐ子らの撮影をさせてもらいました。

 

幼稚園の窓の制作, 決まったのは11月。

日本青年館ホールの11個の灯り納入が6月。

その他新築される方からやお取扱いのお店からのご注文品、

成人式の内祝い、初節句のご依頼等々

諸々立て込んだ厳しい状況のように思えるのですが、

幼稚園のパネル納入2月の作品ご依頼を

妻は受けることにしました。 

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※取付場所の踊り場の窓は82cm×154cm。

今までは大型作品のご依頼の場合、他の工房を紹介してきましたが、

今回は左右半分ずつの制作が可能でした。幸いでした。

 

正直な所この仕事は、私にとっては特別でした。

妻が受けてくれたのは、私にはとても嬉しいことでした。

園長さんは私の大学時代のグリークラブの先輩で

「伝説のテナー」と言われた方でした。

学生時代あんな風に歌えたらと、

憧れ、練習に励んだものです。

そんな先輩のお役に立ちたいと思っても、

ステンドを作るのは妻です。 

 

いつも子どもたちのことを頭に置いている妻、

作ったステンドが子どもたちといることが幸せだという。

そんな気持ちも働いたのでしょうか。 

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※園を訪ねて相談しながら、モチーフが決まっていきました

 

それから妻は時間を見つけて園を訪ねて取材したり

園と図案の打合せしたり。

5度の園とのお打合せを経て、ようやく図案がかたまりました。 

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※5枚目が最終図案となりました。

 

その間に私の母が亡くなり、妻も私の田舎に滞在。

何日もステンド作業の全く出来ない期間もありました。

思うように時間がとれず、制作予定はかなり遅れ、

妻はかなり焦っていました。

そこで晦日大晦日は思い切ってステンド最優先。

何とか大晦日の夜に型紙ができました。

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これが終わるとガラスカットの作業に入ることができます。

型紙のピース一つ一つに番号がふられます。

思った以上に多いピースを見て

“ピースは全部でいくつ?”

と妻に聞いたら、

“お父さんの誕生日の数字!”

と言うので、“514か?”と聞いたら

“そう!” 

 と言ったあとすぐ

“あっ、2個それより多い!”

とのこと。

結局私の誕生日とは関係ありませんでした。

 

ようやく少し先が見えました。

妻はほっとしていました。

私もほっとしました。

厳しい日程の中、体調をこわさず、

何とか期限内に完成出きるようひたすら願うのみです。

 

(2016.1.3 記)