心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.141 個展余話~あの小川三知

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個展初日の夕刻前、

初老のご婦人が

ショーウィンドウの「鷺草のパネル」を

外からのぞいていらっしゃった。

 

向きや角度を変えながら、

あまりに熱心なのぞき方につられ、

私もギャラリー内から

作品の照明の角度を少し変えて差し上げた。

 

その光の変化に気づかれたのか、

ご婦人はこちらに目を移され、

ありがとうっと微笑まれた。

 

その目を見て

私はその方が誰かに気づいた。

 

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4年前の前々回の個展の時、

貴女の作品には、日本人の情緒があるわ、

そう妻を励ましてくださった

小川三知さんの縁戚の方だった。

 

小川三知は、

妻が最も憧れるステンドグラス作家。

明治末、大正、昭和の時代に

日本の風景をステンドグラスで表現され

今も日本のステンドグラス界で

高く評価される偉大な作家。

三知の作品にふれながら育ってこられた方からの

励ましの言葉に妻はいたく感激。

 

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 ※妻のもっている本の表紙

 

その日、妻は私に

小川三知の作品の素晴らしさを訴え続けた。

確かに、欧米で生まれ発展した技法・文化から

日本人のもつ郷愁を細やかに表現した作品を残した功績は

ステンドグラスでは他に例がないだろうと思った。

この方の存在が妻の励みになっていることも知った。

 

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 ※小川三知の六枚組障子「四季」より欅  大正11年

 

個展には出会いがある。

それが妻の作品づくりを支えていると思うと

私はその出会いとそれらの人々に

ただ感謝するばかりである。

 

 

『個展余話その2』

妻は個展に伴うご購入作品送付、注文作品準備、

それに展示でお借りした作品返却と忙しいので、

片づけが思うようにいかず、

今も私がテレビを見るのに

段ボールの山ががちょっと邪魔。

だが、この山の一角があって 

時間がゆったり流れているように思えてきた。

・・・この山も悪くないようだ。

 

(2015.12.13 記)