「橅(ぶな)の灯り」は
「とお(10)の木の灯り」制作途中に受けた
日本青年館ホールからの追加注文でした。
「ブナ」を制作できることに妻も私も喜びました。
『ぶなの森は緑のダム』。
わかりやすい文章構成で
ブナの森がいかに私たちに大切であるのか考えさせる
小学校の教科書にのっている説明文です。
子ども達と熱心に取り組んだことを記憶しています。
(退屈だと思っていた子もいたでしょうね。ごめんね)
もう30年も前になります。
妻も同様にこの文章を気に入っていました。
どこか遠くに行くと、
ブナのあるところに私たちの足は向きました。
白神山地のブナ林を歩いたのは6年前。
白神山地は行こう、行こうと言いながら
なかなか実現しなかったのですが、
私の定年退職後やっと行くことができました。
ブナの木立から時折のぞく真夏の青空,
少し汗ばみながら私たちは歩きました。
行き着いた先の小さな沼の青さ、
ブナ林の中で立って見たりしゃがんで見たり、
その青さが忘れられません。
秋田の森吉山は広大なブナ林と季節の草花が多く、
妻のお気に入りの場所です。「花の百名山」のひとつです。
私は山頂まで20分要するゴンドラから望む景色に
大満足です。高所恐怖症であることを忘れます。
2度訪ねましたが、妻はまた行きたいとしきりに言います。
私もこのゴンドラはどうと言うことはないので、
「機会見つけていこうね」と余裕で応えます。
昨年の5月は妻と鳥海山麓のブナの原生林を巡りました。
地元の森林組合長さんご夫妻のご案内で
ブナとふれあう楽しい散策でした。
奇怪な形状のブナを見ながらたどり着いたのは
山道奥の樹齢300年のブナ「あがりこ大王」。
大王のまわりのたくさんのブナの実生(みしょう)に、
私はその一見の弱々しさに生命の神秘さ、
そして逞しさも感じました。
ところで、ブナ巡りで妻は何を見たのでしょうか。
この作品に
妻の見たもの、
見たいものがあるのだと思いました。
(2017.6.28 記)