心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.252 碧天(へきてん)の星座

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都会の雨上がりの午後

秋風がさぁーっと流れ

空はどこまでも

澄んで青く…

 

きれいだよねえ

田舎で見たような青い空

青く澄んだ空は

ただそれだけで

きれいだよねえ


 

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妻の作品「星空ドーム」をご覧になって

亡くなられたご主人のために同様の作品をと

ご注文くださった方も

亡くなられたご主人も

私と同じ郷里の方

 

 

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ご依頼の際に

明るく華やかな雰囲気で

そうお願いをされました

ご主人の亡くなられたのは冬ということで

冬の星座が4つ

それに12星座

 

妻の作り上げた作品は

透明すぎるほどの16枚の星座のピースで

ひとつの青い宇宙です

 

クリアーな硝子空間が

不思議なほど一つのかたまりとしての一体感を

かもしているのは素敵だと思いました

この「碧天の星座」を見ていると

亡くなられた方のことをほんの少ししか知らない私も

ご一緒に同じ青い空を見ている気分がするからです

 

 

アンティーク硝子を使った作品は

何度見ても飽きることはありません

朝日がさしてきたときの表情

強い日射しを受けている昼間の表情

夜のとばりが落ちて部屋に灯りがともった頃の表情

その時々で観る者の味わいに変化を与えるかのようです

まるで生きているようです

妻は「硝子がすでに藝術作品」だと言います

 

 

 

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透明なアンティーク硝子が

照度を落として青の濃さを増した時

私は不思議なことに

深さ透明度とも日本一、二と言われた郷里の田沢湖

どうしても想ってしまうのです

こんな民話のある田沢湖です

永遠の美を願った辰子姫が竜になり住んでいた湖

冬になると氷が張って住めない八郎潟から

竜になった八郎が訪れて共に住むという田沢湖

八郎と辰子姫の熱で冬も凍らず

湖は果てしなく深くなったという田沢湖

そんな民話のある田沢湖を思い出すのです

 

アンティーク硝子の透明な青に誘われるように

私ははるかな宇宙と深く澄んだ湖を行き来してしまいます

 

田沢湖の透明度31mは摩周湖に迫ると言われた…昔ね

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今ごろ郷里の秋田は

青く澄んだ空のもと

田んぼの稲穂が

黄金色に色づき始めたでしょうか

秋の風が

こうべを垂れた稲穂を

ささやくように揺らしているでしょうか

  

(2019.9.8 記)