行灯「紀の川」2021:初代は行灯「紀の川」(2013年制作)
600年も前の日本にあったこの文様が、
西洋で生まれた硝子に彫られ、
今この時代の私達にもみずみずしさを感じさせます。
ご依頼者は我が家に来られたその時に、
玄関に置いてある行灯「紀の川」に
一目惚れされていたそうです。
人と作品との出合いは様々です。
作る人とモチーフとの出合いもまたいろいろです。
私は妻がよくぞこの「薔薇文様」にたどり着いたと、
その偶然に感謝しています。
たまたまの偶然が重なり…
偶然の七つ目が二人で尋ねることになった高野山の宝物殿。
妻はここで
「紀の川」のモチーフとなる薔薇文様に出会いました。
出会いは必然かなあ…
私は妻の薔薇文様の作品を見る度に思ってしまいます。
硝子を通る光で表現される薔薇文様が
あまりに素敵なのです。
薔薇文様に出会ってから
薔薇文様をモチーフにした作品を数多く作ってきました。
素人目には、制作は面倒くさそうです。
まん丸の硝子ピースを作り、
下絵を描いたシールをカットし、それを彫刻。
その丸いピースの周囲の大きなピースもまた面倒そうです。
一枚の硝子に描かれたように薔薇をはめるために、
受ける硝子だけ見ると摩訶不思議な形状になります。
また、世界最高と言われるフリーモントの美しい硝子を
使うことが多いのですが、
厚さが2~6mmと一定してないので、
グラデーションを損なわないように
繋げてカットする苦労もあるようです。
薔薇文様のモチーフで
多くのご依頼作品を作ってきた妻ですが、
いくつ作ってもこの刳れのカットは緊張するといいます。
左:行灯「紀の川」2021 右:行灯「紀の川」(0013年制作)
ご依頼の行灯「紀の川」2021が完成した翌日、
我が家の初代の行灯「紀の川」を並べてみました。
ご依頼の方のご要望を伺いながら作った行灯「紀の川」2021。
ほぼ同じ行灯なのに、
表情がすでにご依頼者を向いているように思いました。
この作品は
お仕事を現役でご活躍されているお母さまへの
贈り物として、ご依頼者からご注文をいただきました。
喜んでいただこうと
妻はサプライズでサイドには麻の葉文様を入れました。
麻の葉文様はよく育つと産着等に利用されてきましたが、
他にも無病息災や長生きなどの願いで使われる文様です。
今般、人気になっている文様でもあります。
正面上部の大きなピースは、
元の作品は桃ですが薔薇をご要望されました。
美柑のピースは同じ硝子がなく、彫り方を変えました。
他の薔薇文様の色もお好きな色合いを選んで
いただきました。
一見同じように見える行灯「紀の川」ですが、
妻とご依頼者の話し合いをしながら作る過程に置いて、
更にご依頼者のお気持ちもがこもる作品になって
いくようです。
これが、できあがったときに、
ご依頼者を向いている作品に見える原因なのかも
知れません。
もう少し詳しく言うと、
ご依頼者のお母さまを向いている作品になったように
思います。
ようやく完成しました。
お待たせしました。
(2021.5.5 記)