不思議と言えば不思議なご縁です。
ご依頼主のAさんは眼科医療の専門スタッフです。
4年前、妻が眼の検査で「目を使う仕事なので心配で」と答えたら
「失礼ですが何のお仕事をされているのですか?」
この一言から、ステンドグラスについてのやり取りが始まりました。Aさんもまた、ステンドグラスが大好きな方でした。
ちょっとした一言。それがご縁となり、やがてこの度の私たちの和歌山行きとなりました。Aさんとのステンド作品の打ち合わせ、建築中のA邸見学、周辺環境を感じ取るための2泊3日の旅です。
6月17日関西国際空港からレンタカーでA邸に向かいました。A邸周辺は、背には緑濃い山が控え、自然の豊かさを感じました。
建築中のお家は新しい太い梁を何本も使い、カウンターや棚には厚くて長い一枚板を使うなど木のぬくもりを感じました。妻は、施主さん、現場監督さん、大工さん、建具屋さん方とも話ができたことを喜んでいました。
その間私は、車のキーが抜けなくなり、レンタカー会社と必死のやりとり。(キーが抜けないなんてこともあるんですね。結局、会社が代わりの車を出してくれることになって“やれやれ”)
A邸を出たあと、二人で高野山に向かいましたが、着いたら疲れが出たのか二人とも1時間ほど駐車場で寝てしまいました。眠りから覚めても妻のほうはぐったりしたままなので、喫茶店に入ってコーヒーを飲むことにしました。
そこで妻から、今回の旅が仕事であることと打ち合わせによるプレッシャーの大きさを聞かされ、私は旅行気分だった自分にハッとしました。「ごめんなさい」
(粉河寺)
妻も元気を取り戻したので、もう一度A邸近くに戻り、粉河寺と自然と夕日を見てデザインの資料収集をしました。紀ノ川の土手から夕日と山々を見やりながら二人で「いいところだね」
「来てよかったね・・・」
(紀ノ川)
それから、一週間。
妻のデザインノートはなかなかすすみません。「うーん」と唸っています。Aさんは「モチーフもすべてお任せします」とおっしゃってくださっていますが、それでも妻はAさんのことや周囲環境やモチーフのことなどあれこれ考えます。性分なのでしょうか、新しい作品のデザインはいつもこうです。妻は傍にはいないご依頼主と一緒に作品をつくっているように私には見えます。
この間、私にできるのは、「どう、コーヒーでも、飲もうか」の声かけくらいです。
決して要領が良いとは言えない妻のステンドグラスづくりですが、作品を手渡した時にご依頼主が喜んで下さる様子を見ては、このつくり方でいいんだと納得してきました。
(高野山でみた草花4種)
ちょっとした一言から始まった、Aさんのための妻のステンドグラスづくり。今は苦しみの真っ只中ですが、やがて喜んでもらえる作品が生まれることを信じて見守ろうと思います。
ミルに入れた珈琲豆をギーギーと挽いて・・・
(2013.7.1 記)