「北斎の浪のステンド」という考えたこともないご依頼に
妻は困っていましたが、
何度も試し彫りをしながら仕上げました。
作品の裏に回って彫った浪の深さをご覧下さい。
妻の作った作品の多くは手元に残っていません。
他のお客様から見たいと求められても
写真を見ていただくだけでした。
「この作品、見てみたい」等
みな様のご要望や関心の高い作品について
それぞれ所有者の方にお願いしたところ
幸いにみな様どなたも快く
「どうぞ」とおっしゃって下さいましたので、
拝借しましてこの度の作品展に展示いたします。
「檜山路の灯り」
旧家の佇まいのお宅を何度も訪ねて
この地と家を大事に守って来られたご夫妻の心にふれながら
作らせていただきました。裏表2面で春夏秋冬。
両サイドにはかわいがってきた愛犬の「もも」と「かんべえ」
妻は全く同じ作品は作れるかというと
無理と言います。
型紙におこすわけだから、
素人の私には
できるでしょ、と簡単に思っていましたが、
何年も妻の作品作りを見ていて、
妻の言っている意味が分かってきたような気がします。
私なりの理解ですが
一つの作品が生まれるのは
ご依頼の方の思いとエネルギー、
作る側の思いとエネルギーと技能、
そして材料の硝子。
作品はこれらの総和として生まれる…
いや総和でなく3者の相乗効果なのでしょう。
ご依頼内容が
妻にはステンドに合わないし技能的に無理と思えたものでも
ご依頼者の思いとエネルギーを受けて
作品完成に至ることもあったと思います。
「檀の灯り」檀(まゆみ)ちゃん3歳のお誕生記念のご依頼での制作。
灯りの形は妻が使うお茶碗の形です。 まゆみちゃんの大好きなテントウムシとブタさんのお人形さんも
まゆみちゃんを照らしています。
材料の硝子ですが
これもとても厄介なようです。
妻がよく使用する硝子の大半は
昔と同じように吹いて作る手作り硝子です。
型番が同じで見た目も同じように見えても
実は厚さは場所によって異なります。
厚さが違うと光を通したときの色合いが微妙に違います。
同じ型番の硝子を使っても
作品から受ける印象まで全く同じと言うわけには
いかないこともあります。
同じように見える双子の方々には
全く違う個性があるのと同じかも知れません。
硝子も生き物なのですね。
「碧天の星座」ご主人をなくされた方のご依頼です。
「星のドーム」をご覧になった方が、我が家に来られて硝子選びもされました。
明るい色でとのお願いでしたが、
この明るい色が作品の雰囲気を決定づけたように思います。
実は妻の作品に使用されている硝子の中には
もう生産されていないので手に入らないものが
数多くあります。
近年欧米の大手老舗硝子メーカーの廃番措置や生産中止が
続いているからです。
アンティーク硝子の良さがもっと人々に認められて、
需要が高まるといいのですが…
(2019.12.4 記)