其の2
「青い藤」(2004年制作)
田中さんが最初にお求めくださった作品
15年程前、妻が所属するステンド教室の作品展。
妻の「青い藤」を気に入ってくださった田中さん。
生徒作品が求められるとは考えもしなかった頃。
さらに、
今度家を建てたら、またお願いね。
その後、妻は母の介護から休職、体調を崩しての退職…
ステンドを作ることのできない日々が続きました。
作品展で声をかけられてから3年過ぎて、
突然の田中さんからの連絡。
ようやくお家ができます。
お約束のように新居には妻の作品が欲しいとのこと。
自信を持てない妻に田中さんが言いました。
あなたの感性が好き!
見なくてもあなたの作品、すべて好き!
妻はどんなに励まされたことでしょう。
数年間で19点の作品を田中さんにお納めしました。
「胡蝶蘭」(2007年制作)
田中さんのご主人の好きな「胡蝶蘭」です。
宮大工さんがパネルを窓枠に取り付けました。
その頃から、妻は、
立体的な彫りができるサンドブラスト硝子彫刻と
絵付けを習うようになりました。
それらはステンド作品にいらないだろうと
私は妻に何度も言いました。
習いに出かけて行ってぐったりと疲れて帰ってくる妻。
また調子が悪くて出かけられない時も度々ありました。
「カトレア」(2007年制作)
階段の踊り場の「カトレア」のパネル
結局、
妻は硝子彫刻も絵付けも習うことをやめませんでした。
やめられなかったのでしょう…多分ね…
硝子彫刻の技法を駆使した作品「鷺草乃原」(2014年制作)
妻の作品を初めて見た人がおっしゃいます。
「わー、こんなステンドグラス、初めてー!」
そう言って喜んで見てくださるのは、
妻が必死で身につけた硝子彫刻と絵付けが
妻の作風をかもすからなのかもしれません。
2016年制作
長年あこがれてきた上村松篁の「月夜」の世界に挑みました。
彫った後、実の黄色、目の赤は絵付けして仕上げました。
硝子彫刻も絵付けもその習得をあきらめなかったのは、
妻の作品を楽しみに待ってくれた田中さんのお陰。
妻はよく言いました。
田中さんが喜んでくれる作品を作りたい…
昨年「あとりえ 悠」十周年を経て、
田中さんにお礼の報告に行きました。
田中さんはお孫さんのお世話で忙しいなか、
あのときと変わらない笑顔でお迎えくださいました。
(2019.2.19 記)