心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.300 聖夜「かしのきのツリー」~子ども心の平和

子どものために作った「かしのきのツリー」に寄りそうオコジョの親子

 

~とおいむかしの話~    

 

       「子ども心の平和」

 あれは私が小学校2年の時、テレビもまだない遠い昔の事です。私が生まれた村は戸数18戸の小さな村。村の子ども達は皆一緒にチャンバラごっこなどしていつも遊んでいました。あるときガキ大将が「町に行くぞっ!」とみんなを連れて行きました。そして下級生に命じて漁師の生けすの鯉を盗み、ガキ大将が釣った事にして村に帰りました。何度か続くうち、私も命じられ、いやと言えず盗みました。

 ある日、寝ようとした枕元に母がいました。「村で子ども達が鯉を盗ってるという噂だけど、シゲオ、おめえだば盗ってねえべ…」静かに、それだけ言って母は部屋を出て行きました。その小さな後ろ姿が焼き付いて、私はただただ泣きました。布団を被って泣きました。

 何日かして、ガキ大将がまた言いました。「町に行くぞ!」とっさに「おら、行がねっ。」そうしたら、ガキ大将にけしかけられた仲間に蹴られ、殴られました。村で遊べる子どももいなくなりました。不思議なことに、もう母を悲しませずにすむという穏やかな気持ちになりました。子ども心で感じた平和でした。

 その平和を導いたのは枕元のあの母の一言です。やがて、私も子どもを育て、孫の成長を見るようになって、あの時の母の言葉は親の祈りだと思うようになりました。

 

 

~聖夜「かしのきのツリー」~           

妻が早朝アシスタント勤務した保育園の子どものために作った「かしのきのツリー」。妻は忙しくなり、お世話になったこの園を辞めることになりましたが、子ども達に気持ちを届けるつもりで作ったそうです。

それから6年、今は私がこの保育園の早朝鍵開け勤務です。

(先の文章は保育園職員が「平和」のテーマで求められて書いた拙文です。)

 

(2022.12.23 記)