心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.18 青い藤

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2004年夏のグループ展に向けての作品です。

No.5 行灯「藤」のペンダント版です。
行灯「藤」を製作する際に色違いの酸抜きピースを作っていました。
(ブルーonブルーのサンゴバン被せガラス)
磨りガラス風のヤカゲニーで行灯と同じように籠目模様で組みました。

 

「悠久」の製作後は卒業学年を担任したり、念願のきこえの教室への異動が叶ったり、仕事や勉強に夢中になっていたので、ほとんど製作はしていませんでした。
大切なグループ展だったので、大切に取ってあった藤のピースを使って
なんとか一作品を仕上げて出展しました。

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このグループ展で「青い藤」のペンダントを気に入り、どうしても欲しいと言ってくださった方がいらっしゃいました。
この先、家を建てるのでこの灯りに合ったステンドもお願いしたいと言ってくださいました。
田中さんとの出会いでした。

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田中さんに「青い藤」のペンダントを納めた後も製作は途絶えました。
翌年には仕事に加えて母の介護も始まり、さらには休職~退職に至ったのでステンド製作はやめるに等しいくらい長い休止期間に入りました。

 

田中さんはこの後私がステンドグラスを今日まで製作するうえでかけがえのない存在になった方です。
私は田中さんによって支えられ、ステンドをつくれるようになりました。
田中さんに出会えたのはこの「青い藤」のペンダントのお蔭です。

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また「青い藤」を某手芸メーカー主催の第1回Webコンテストに応募してみたら入賞しました。
その後、そこのSNSでは思いのほか好評で、嬉しくなって次から次へと作品を作っては公開したり、コンテストに応募したりしていました。
そのうちに、知らない方や建築家さんからの依頼が出始めました。
この「青い藤」をご覧になった方から京都の新居に合う和の灯りのご依頼を受け、和の灯りを心躍らせて創リました。
※その灯りはNo.4 「京都西陣 ~町屋のあかり~」5月12日に掲載されていますのでご興味がありましたら覗いてくださいね。                                                          

「青い藤」は私にとって忘れられない特別な作品です。
 
写真(2004・2007)&文(2012.08)   ステンドグラス*あとりえ 悠*

 

~支えられて~

 

「あなたのステンド、いいわあ」と名もない妻の作品を褒め、自宅においてくださった田中さん。

だいぶ後で知ったことですが、田中さんは小さい頃からお父様に骨董品について教わり、

さらに美術工芸品の眼識を高められ、自宅にはお眼鏡に適ったものを集めて楽しまれているという方でした。

妻は最初「私の作品がこういう方のお宅に・・・唐の名作と並べていただいて・・・」

と、とても恐縮していました。

一方でそういう方が「あなたの感性、あなたの作品が良い」と支持してくれたことに

妻は大きな自信と支えを得ました。

酸抜きのピースを使っての表現や和風のものなど、つくりたいと思うものに全霊を打ち込んでつくれるようになったのは田中さんのお蔭と感謝しています。

                    2012.8.17記