心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.284 「一ノ関悠子第7回ステンドグラス作品展」のご案内

f:id:you3113:20211106221847j:plain

 

 

 

「一ノ関悠子第7回ステンドグラス作品展」

コートギャラリー・国立にて

12月2日(木)より7日(火)まで開催いたします。

時間は11時より18時まで。(最終日は15時)

ご都合がよろしいようでしたら

お越しくださいますようご案内申し上げます。

アクセスは以下のサイトでご覧ください。

コート・ギャラリー国立 (courtgallery-k.com)

 

 

コロナ禍のなか、

ステンドグラスをじっくり作ってみたいと

思われたのか

妻のもとに通う方が

口コミであっという間に10名になりました。

 

ステンド作りに没頭する心地よさを

味わっているように私には見えます。

コロナコロナと言われる日常生活の中で

自分に向き合い自分を取り戻す営みなのかも

しれません。

コロナ禍の中でも、

人間にとってステンドグラスは

見て楽しめる、作っても楽しめる

人間の生みだした奥深い遺産のように見えます。

 

人間の遺産というべきステンドグラスを

どこまで奥深く妻の作品が表現できているか、

私には分かりませんが、

ただひたすら一生懸命作ってきたことだけは

間違いないように思います。

 

それらの作品を

よろしかったらご覧いただければ幸いです。

 

f:id:you3113:20191205174812j:plain

第6回作品展での会場入り口フロア

 

私は2年前、

妻の第6回作品展を終えてすぐに

次の7回目の会場予約をしました。

その直後からです。

ダイヤモンド・プリンセス号のことが連日報道され、

私たちの日常はコロナコロナの日々になりました。

 

経験のない不安と恐怖を

いつでもどこでも感じる日々が続きました。

勤務先は100人ほどの子どもたちを預かる職場。

感染はどこでどう起こるのか…

絶対に大丈夫というものはないコロナの恐怖。

 

ふれあいの中に

子どもたちの喜びと成長があると思っていた私が

3密回避を説く立場となりました。

子どもたちの生活も私の生活も、

すべてが変わりました。

この現代において

大勢の人が入院できず、

自宅で次々亡くなるなんて…

 

第7回作品展を予約した2年前には

想像もできなかった押しつぶされそうな圧迫感。

ブログを書こうと思う気持ちも萎えました。

 

感染拡大の第5波が、

予想外の急激な減少を見せたところで

今回の第7回作品展のご案内です。

減少してこのまま終わるとも思えませんが、

ご案内のできたことをまず嬉しく思います。

 

コロナでは多くの方が亡くなられました。

知合いの方がお友達の話をされました。

「症状は軽かったけど、後遺症で今だに歩行も大変なの…」

コロナは今も私たちと一緒にいるのです。

そんな中での第7回ステンドグラス作品展でもあります。

 

妻の作品展があって…

あったから前に進むこともできる…

妻も言っていました。

「生徒さんがいる。私もやろうっていう気になれるの。」

人はつながりの中で

少し前に進めるようです。

 

f:id:you3113:20171207174807j:plain

第5回作品展会場の様子

 

 

 

 

過去に作った妻の作品3点も

お借りして特別展示します。

f:id:you3113:20150609230135j:plain

「檜山路の灯り」2015年制作 (古山様より)

 

 

f:id:you3113:20170909123243j:plain

北斎の浪のパネル 2017年制作 (大島様より)

 

f:id:you3113:20210821183121j:plain

妙高高原のペンション ボンネイジュ」 2021年制作 

(オーナーご家族様より)

 

(2021.11.10 記)

No.283 妙高高原の「BONNE NEIGE(ボン ネイジュ)」その3(完成)

f:id:you3113:20210720075714j:plain

完成したステンドグラス「BONNE NEIGE」

 

もし…あのう、

お客様はどのお部屋に宿泊されましたか?

そんな会話もしたくなる

ステンドグラス「BONNE NEIGE」。

 

妻は建築模型のにわか勉強をし、

細かなところに拘り

予定より時間はかかってしまいましたが、

ようやく完成しました。

作り終えてホッとした妻の笑い声が

少し大きくなったように聞こえます。

 

妻が制作記録をまとめて、

ご依頼者にお送りしましたが、

建築模型仕様に作ったステンドグラス作品の

制作過程の中に作リ手の妻の思いも垣間見えます。

 ご紹介いたします。

 

妙高高原ペンション 

ボンネイジュさんのランプができるまで◇

 

f:id:you3113:20210815111926p:plain

f:id:you3113:20210815112056p:plain

「BONNE  NEIGE(ボン ネイジュ)」をたずねて

長い間お客様を受け入れ、お客様とともに過ごしてこられたペンション。

フランス語で「BONNE  NEIGE(ボン ネイジュ)」。

閉じらてなお愛着はつのるのでしょう。

「BONNE  NEIGE』をステンドグラスにして欲しいと制作ご依頼を受けました。

 そして妻と二人でたずねました。妙高高原の「BONNE  NEIGE」。

高原に冬の気配が忍び寄る季節でしたが心は信じられないくらいに温かくなりました。

「BONNE  NEIGE」を守ってこられた方にふれたから。(ブログNo.282より)

 

f:id:you3113:20210815112320p:plain

 

 「コッツウォルズの蜂蜜色の家」(2013年作)

この作品を見られてのご依頼だったので、

私はデフォルメした作品と想像しましたが、

「お客様がご自分の泊まった部屋が分かるような…」

とのお話。

「BONNE  NEIGE」の住宅設計図面を送っていただき、

正確な住宅模型づくりから取り組みました。

 

1.模型づくり

 f:id:you3113:20210815112456p:plain

 

送っていただいた設計図をもとに建築模型づくり。

にわか勉強で挑戦。

大きさは75分の1で小さめです。

 

f:id:you3113:20210815112707p:plain 

f:id:you3113:20210815115114p:plain

f:id:you3113:20210815115308p:plain 

設計図と写真を頼りになんとか形になりました。
模型を作って気づいたことがあります。
オーナーさんご家族の深い愛情や思い。
受け止められた建築家さんの思いや拘り。
ここに繋がって、ここを愛する多くの方々の思い。
再現する意味…

 

f:id:you3113:20210815115427p:plain

美術館のようなボンネイジュさんの建物は、

出窓や三角屋根、段違いの壁など

とても凝った作りでおしゃれです。

拙い模型でもできあがったのが

うれしくて雨上がりの朝の新緑を背景にしたり、

鏡の前で街並みのようにしたりして撮影しました。

 

2.ガラス選び~ご相談

f:id:you3113:20210815115640p:plain

選んだ候補のガラスを並べてご相談。

大切な屋根の色。

無地でなく模様もなく…

そして焦げ茶色

f:id:you3113:20210815115739p:plain

茶色のガラスは光を入れると赤に見える。

光を入れて茶色に見えるガラスは

自然光では黒すぎたり…

一番迷った屋根のガラスもご相談で決まりました。

 

f:id:you3113:20210815115852p:plain

設計図と写真でよくわからない所は

妙高にいらっしゃるお嬢さんに伺いました。

雪の重さで階段が壊れたとか、

雪が吹き込むために覆いをつけたなどのお話を聞いて

もうびっくり。

質問した箇所を撮りながらペンションの周りに咲き始めた

妙高の春の花も撮って送ってくださいました。

イカリソウ水仙クリスマスローズ(5月1日)

 

おかげでガラスも決まり、

不明なところもわかったので次の作業に進めます。

このあともお二人には

ペンションやお父さまのお話を伺ったり、

何度もお世話をおかけしました。


 

3.いよいよステンドグラス制作。ガラス作業へ

ガラスをカット→研磨→銅箔テープを巻く→はんだづけ… を

繰り返して面ごとに作っていきます。

まず壁面と窓を作り、出窓・屋根・玄関・階段…などは

あとから作り付けていきます。

f:id:you3113:20210815120223p:plain

寸法がとても大切な作品なので緊張しながら

正面壁面のガラスカットと研磨を終えました。

 

f:id:you3113:20210815120313p:plain

テープ巻き~はんだ付けをして

正面の壁面が完了しました
 

 

f:id:you3113:20210815120400p:plain

 

f:id:you3113:20210815120441p:plain

東面の壁面ができました。

段違いになっている2階の2室は北面との合わせを

調整するためまだ仮止めです。

細かいピースの幅は4mmとか5mmで、

小さな窓の桟は2mmほどになってしまうため

ガラスをカットせずに細くカットした銅箔テープを

巻いて見せかけています。
 

 

f:id:you3113:20210815120552p:plain

 ライティングしていないときのガラスはモノトーンです。

 

f:id:you3113:20210815120651p:plain


 

f:id:you3113:20210815120825p:plain

北面の設計図とガラスのケガキです。

型紙は作らずにガラスに寸法通りを

文字通り罫書いてカットします。

 

f:id:you3113:20210815120912p:plain

壁の段違いになっている1.2cm幅の面を作っています。

0.◯mmの誤差が今回の組み立てでは歪みになって

しまうためどんな小さな面でも木枠を作って

作業しています。

 

f:id:you3113:20210815121027p:plain

南面も飛び出したりへこんだり…

たいへん凝った作りになっています。

 

f:id:you3113:20210815121157p:plain

北面と西面がくっつきました。 

ライティングしてみるのが一日の終わりの楽しみです。

 

f:id:you3113:20210815121239p:plain

四つの壁面ができあがりました。

f:id:you3113:20210815121354p:plain

組み立てました。

f:id:you3113:20210815121441p:plain

玄関がつきました。

 

f:id:you3113:20210815121554p:plain

f:id:you3113:20210815121725p:plain

西面をやや南から見たところと北面~西面です。

まだ、はんだは仮止めですが、

やっと大きな屋根がつきました。

三角屋根の下の三角形の部分南面の小部屋階段…など

まだまだ未完成の箇所がありますが

だいぶ建物らしく見えるようになってきました。

 

f:id:you3113:20210815121949p:plain

南面の小部屋。

元の設計図にこの小部屋はないので

三方向から撮った写真を頼りに小さな模型を作り、

設計図を描いてガラス作業…

とても小さなピースの組み立てでした。

 

f:id:you3113:20210815122143p:plain

最後の東面ができあがって

全体の仕上げハンダを終えました。

階段をやり直し中です。

 

 ボンネイジュさんの看板。

建物につく小さいのと大きめのものを

サンドブラストで作りました。

f:id:you3113:20210815122245p:plain

f:id:you3113:20210815122307p:plain

台座です。

雪のイメージに加えてボンネイジュさんの周りの

美しい自然の四季の彩りをイメージしました。

紀州漆器の花台に穴をあけて配線をしました。

 

4.完 成

f:id:you3113:20210815122501p:plain

f:id:you3113:20210815122645p:plain f:id:you3113:20210815123152p:plain

 

  ー終わりー

 

写真、おまけのもう1枚です。

f:id:you3113:20210815123259p:plain

孫と行った「リス園」で買ったオコジョのぬいぐるみ。

灯りのついた「BONNE NEIGE」の横に。

なにやら「BONNE NEIGE」も夢のなか。

 

オコジョの生息地は中部や東北地方とのこと。

妙高高原にはいるのでしょうか… 

 

( 2021.8.17 記 )

No.282 妙高高原の「BONNE NEIGE(ボン ネイジュ)」その2(制作の過程)

f:id:you3113:20210522164654j:plain


「BONNE  NEIGE(ボン ネイジュ)」をたずねて

長い間

お客様を受け入れ

お客様とともに過ごしてこられたペンション。

フランス語で「BONNE  NEIGE(ボン ネイジュ)」。

閉じらてなお愛着はつのるのでしょう。

「BONNE  NEIGE』をステンドグラスにして欲しいと

制作ご依頼を受けました。

 

そして妻と二人でたずねました。

妙高高原の「BONNE  NEIGE」。

高原に冬の気配が忍び寄る季節でしたが

妻と私の心は信じられないくらいに温かくなりました。

「BONNE  NEIGE」を守ってこられた方にふれたから。

 

「BONNE  NEIGE」の模型づくり

f:id:you3113:20201119062330j:plain

妻の「コッツウォルズの蜂蜜色の家」(2013年作)

上記の妻の作品を見られてのご依頼だったので、

私はデフォルメした作品と想像しましたが、

「お客様がご自分の泊まった部屋が分かるような…」

とのお話。

妻はそれではと、

「BONNE  NEIGE」の住宅設計図面を送っていただき、

正確な模型づくりから取り組みました。

 

f:id:you3113:20210522165053j:plain

 

妻は建築模型の本を買い求めて勉強していましたが、

YouTubeが、一番よくわかった。」とのこと。

昨今、YouTubeが話題になるわけが

分かったような気がしました。

 

試行錯誤を重ねながら、

徐々に「BONNE  NEIGE」の模型が仕上がってきました。

f:id:you3113:20210522165200j:plain

かなり時間はかかりましたが、

住宅設計図から「BONNE  NEIGE」の模型の完成です。

ステンドグラス作品をつくる基ができました。

f:id:you3113:20210430082837j:plain

ここから

いよいよ硝子の特性・良さを生かしての作品づくりです。

 


「BONNE  NEIGE」 を「硝子で作る」

ご依頼の方とも相談しながら選んだサイズは75分の1。

通常の建築模型は50分の1が基本サイズとのことですから

キュートな作品になりそうな感じの大きさです。

一方、硝子切断やくっつけ作業には手間がかかるかも…

 

案の定、小さいピースがめじろおし。

f:id:you3113:20210526233215j:plain

 

さらに妻は二重窓も表現したいらしい。

毎度のことながら

制作時間や効率とは関係なく進みます。

f:id:you3113:20210519224200j:plainf:id:you3113:20210519224512j:plain

 作り方が今までとは異なる作品ですが、

ご依頼者に喜んでいただけるものにしたいと

それだけ思って作り続けているのでしょう。

 

どんな風に仕上がるのか、

楽しみです。

 

ブログを書いていたら思い出しました。

「BONNE  NEIGE」を建てて30年運営してこられた方の

「ペンションのあるじ」のネパール食べ物紀行」

f:id:you3113:20210526235216j:plain

「BONNE  NEIGE」を作られたお父さまの書かれた本

ブログを書いてて、無性に読み返したくなりました。

ネパールの山岳地帯を旅しながらの食にふれた文章は、

人のあり方を考えさせます。

魅力的な方です。

至らない自分を見られそうですが、

できたらお会いしたかったと思いました。

そして、

その死を受け入れなければならない

ご家族の思いに心及びます。

妻の「BONNE  NEIGE」があなたに届きますように。

合掌。

 

 (2021. 6.5 記)

 

追伸

あなたが大切に育ててこられた雪割草の写真が、

撮影されたお嬢様から届きました。 

f:id:you3113:20210604235047j:plain

「可憐な雪割草は自然とともに自然のままに…」

写真を見て、そんな思いがしました。

No.281 二人の船出~ご結婚おめでとう

f:id:you3113:20210311140842j:plain

 お二人が中心になって作ったステンドグラス

そうですか。

お父さまは、

はるのさんの中学生の時に亡くなられたのですか…

ヨットに乗せてもらったり海で一緒に遊んだり、

思い出はたくさんおありなんですね…

f:id:you3113:20210311180255j:plain

このまさとさんのデザイン、

元の写真ではヨットの帆の直線だった部分が…

風を受けて帆がグッとふくらんでふくらんで、

出帆(しゅっぱん)!

二人の船出、ヨーソロー!

 

私はまさとさんのデザインしたこの面を見ると、

二人の思いとお二人の親御さんのお気持ちが

いろいろうかんできて

私も胸がいっぱいになるんですよ。

f:id:you3113:20210311180106j:plain



まさとさんとはるのさんは

4月に結婚式を挙げられました。

 

はるのさんのお母さまへの感謝と結婚の記念に、

二人でステンドグラスのランプをあげたいと

妻が相談を受けたのは昨年11月。

 

美大卒のまさとさんならと、

妻はデザインも制作も二人が中心になって作れるように

お手伝いしたいと提案しました。

 

f:id:you3113:20210514225924j:plain

お二人は結婚式の準備の合間を縫って、

何度も我が家に来られては制作作業をされました。

 

f:id:you3113:20210514225819j:plain

お二人は互いに気遣いながら、作業に集中

 

 

力を合わせて作品制作に向かう二人の姿に

私は「がんばれよ」と声をあげたい気持ち,

そして同時に、

「自分も…もう少しがんばれるのかな…」と

励まされる気分になりました。

f:id:you3113:20210515072741j:plain

春暖のベランダで二人して休憩

 

二人の作品制作は妻には特別な時間でした。

教員時代に4年間担任したまさとさんが

はるのさんと二人して船出するこの時に

思いがけず関わることができたからです。

f:id:you3113:20210311140622j:plain

桜の季節にお二人の挙式がイメージされます

 

親思いのやさしいお二人のお母さまへの贈り物、

いいのができましたね。

生前ヨットにはるのさんを乗せられたお父様、

お二人の船出をどんなにか喜ばれていることでしょう…

 

はるのさん、まさとさん。

ご結婚おめでとうございます。

 

(2021.5.15 記)

No.280 行灯「紀の川」2021

f:id:you3113:20210415040200j:plain

 行灯「紀の川」2021:初代は行灯「紀の川」(2013年制作)

モチーフは室町時代舞楽装束の薔薇文様。

600年も前の日本にあったこの文様が、

西洋で生まれた硝子に彫られ、

今この時代の私達にもみずみずしさを感じさせます。

f:id:you3113:20210414075241j:plain

ご依頼者は我が家に来られたその時に、

玄関に置いてある行灯「紀の川」に

一目惚れされていたそうです。 

f:id:you3113:20210410182125j:plain

人と作品との出合いは様々です。

作る人とモチーフとの出合いもまたいろいろです。

私は妻がよくぞこの「薔薇文様」にたどり着いたと、

その偶然に感謝しています。

f:id:you3113:20210503102737j:plain

室町時代舞楽衣装「薔薇文様」

 

たまたまの偶然が重なり…

偶然の七つ目が二人で尋ねることになった高野山の宝物殿。

妻はここで

紀の川」のモチーフとなる薔薇文様に出会いました。

出会いは必然かなあ…

私は妻の薔薇文様の作品を見る度に思ってしまいます。

硝子を通る光で表現される薔薇文様が

あまりに素敵なのです。 

f:id:you3113:20210415052932j:plain


薔薇文様に出会ってから

薔薇文様をモチーフにした作品を数多く作ってきました。

素人目には、制作は面倒くさそうです。

まん丸の硝子ピースを作り、

下絵を描いたシールをカットし、それを彫刻。

その丸いピースの周囲の大きなピースもまた面倒そうです。

f:id:you3113:20210502234142j:plain

一枚の硝子に描かれたように薔薇をはめるために、

受ける硝子だけ見ると摩訶不思議な形状になります。

また、世界最高と言われるフリーモントの美しい硝子を

使うことが多いのですが、

厚さが2~6mmと一定してないので、

グラデーションを損なわないように

繋げてカットする苦労もあるようです。

f:id:you3113:20210502234229j:plain

 

薔薇文様のモチーフで

多くのご依頼作品を作ってきた妻ですが、

いくつ作ってもこの刳れのカットは緊張するといいます。 

 

f:id:you3113:20210413224501j:plain

左:行灯「紀の川」2021     右:行灯「紀の川」(0013年制作)

ご依頼の行灯「紀の川」2021が完成した翌日、

我が家の初代の行灯「紀の川」を並べてみました。

ご依頼の方のご要望を伺いながら作った行灯「紀の川」2021。

ほぼ同じ行灯なのに、

表情がすでにご依頼者を向いているように思いました。


この作品は

お仕事を現役でご活躍されているお母さまへの

贈り物として、ご依頼者からご注文をいただきました。

 

喜んでいただこうと

妻はサプライズでサイドには麻の葉文様を入れました。

麻の葉文様はよく育つと産着等に利用されてきましたが、

他にも無病息災や長生きなどの願いで使われる文様です。

今般、人気になっている文様でもあります。

f:id:you3113:20210413225531j:plain

正面上部の大きなピースは、

元の作品は桃ですが薔薇をご要望されました。

美柑のピースは同じ硝子がなく、彫り方を変えました。

他の薔薇文様の色もお好きな色合いを選んで

いただきました。

f:id:you3113:20210413191422j:plain

一見同じように見える行灯「紀の川」ですが、

妻とご依頼者の話し合いをしながら作る過程に置いて、

更にご依頼者のお気持ちもがこもる作品になって

いくようです。

これが、できあがったときに、

ご依頼者を向いている作品に見える原因なのかも

知れません。

 

もう少し詳しく言うと、

ご依頼者のお母さまを向いている作品になったように

思います。

 

f:id:you3113:20210415052003j:plain


ようやく完成しました。

お待たせしました。

(2021.5.5 記)  

NO.279 どんぐりの灯り

f:id:you3113:20210311134025j:plain

あかちゃんをあずかる「どんぐり保育室」で働かれる皆さんから

「どんぐりの灯り」のご依頼を受けました。

f:id:you3113:20210311213022j:plain

8名の方お一人お一人に

f:id:you3113:20210311135442j:plain

ご自分の灯りに使いたいご自分の好きな硝子と

その並べ方を決めていただきました。 

 

f:id:you3113:20210311211738j:plain

選ばれた硝子には、

様々な気持ちが込められていることを知りました。 

 

 

f:id:you3113:20210311133841j:plain

みな様お一人おひとりの思い出だったり…

 

f:id:you3113:20210311214320j:plain

  

f:id:you3113:20210311213837j:plain

新しい自分であったり…

 

f:id:you3113:20210311134644j:plain

憧れであったり …

 


それぞれの灯りが

お一人お一人の心に届くように

妻は夢中で作っていました。

 

そうして、

8つの灯りができました。

f:id:you3113:20210418000343j:plain 

(2021.4.21 記)

 

追伸

4ヶ月ぶりのブログです。

書こうと思いながらも

なかなか書けないまま

時間だけが過ぎていきました。

「どんぐり保育室」の皆さんと

妻とのやりとりを見て、

ああ、書きたいなあと思いました。

それでアップできたのかもしれないなあ…

No.278 母の帯の灯り

f:id:you3113:20201216162554j:plain

直接拝見はしていませんが

きっと

とても素敵な

とてもとても大切な

帯に違いありません。

できあがった作品をみて

私はそう思いました。

f:id:you3113:20201114121242j:plain

 ご依頼者が送ってくださった「帯の写真」

制作にあたり、

ご依頼の方から

妻は

大切な帯の写真と

大切なその意味を

受け取ったのでしょう。

 

f:id:you3113:20201216203512j:plain

帯の絵から

「薄紫色のお灯明」ができました。

妻は

世界で最も美しいフリーモント社のガラスに

その花を彫りました。

 

f:id:you3113:20201214232506j:plain


作品ができ、

お届けの荷づくり作業の妻を見て、

私はお借りした大切な帯を

お返しする気分になりました。

大切なものを

どうもありがとうございました。

 

f:id:you3113:20201215073201j:plain

ふと 思い出しました。

50年前田舎の母が縫って送ってきた私のゆかた。

捨てられずにまだ箪笥の奥にあることを。

着ないのに。

ごく普通のゆかたでさえ、

私はまだ捨てられないでいるのです。

身にまとう衣装の不思議さ。

 

汗水たらしながら作った野菜を

リヤカーに乗せて朝市に行って売っていた母。

得たお金を握りしめるように私のゆかた生地を求めて

朝市近くの呉服屋に飛び込んだのでしょうか…

 

薄紫色のガラスのやさしさ。

心慰められる作品に仕上がったように

私には思えます。

 

 (2020.12.22 記)