心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.290 秋明菊の灯り

ようやく朝夕に 

秋の気配を感じるようになりました

 

この時期 

妻と秋の七草を見に

秩父の七つのお寺を何度巡ったことでしょうか

 

藤袴の法善寺は妻のお気に入りのお寺

法善寺ではいつも時を忘れたかのようでした

そこのお庭で見たピンクと白の秋明菊

妻の心に今も鮮明に残っていることを知りました

 

この作品は

もう廃番になってしまった大事な最後の

手持ちの被せガラスに彫った「秋明菊の灯り」です

最後の1枚に彫った思いのつまった作品です

 

 

妻は

できた「秋明菊の灯り」を

9月の保育園玄関用の灯りとしてお届けしました

この春からは私も短時間勤務ですが

こちらの保育園のみな様にお世話になっています。

 

(2022.9.3 記)

No.289 紫陽花の灯り

紫陽花の灯り (制作2009~2011年)

 

梅雨空を

紫陽花が楽しませてくれます

 

 

妻が少し変わったステンドグラスのランプを作りました。

最初予定した500ピースでは足りずに

その年の紫陽花の時期が終わり

翌年300ピース、更に翌年200ピースと付け加え

ようやく完成しました。

見た目も紫陽花らしく仕上がりました。

 

硝子の色合いと同時に壁写りも楽しめます

 

作品展やフェアでは

ひと目をひくようで、

よく質問も受けます。

 

 

妻は桜の花びらをたくさん使って「花影」を作った時に

この構想を抱いたそうです。

桜の花びら1500ピースを用意して作った「花影」 (2008制作)

 

 

ところで、娘が仕事の帰りがけに「はい!お母さん。」と紫陽花を持ってきてくれました。綺麗な鉢植えのピンク色の紫陽花。妻は大事に育てていましたが、花は終わりました。それからベランダにおいて水やりをしていました。はたと思いつきました。2年前住宅の裏庭の斜面の紫陽花が1本枯れてしまった後に植えてみよう!早速妻に話して、土を掘って植えました。

 

根づくといいのですが…

雨空も待ち遠しい…

「根づいたよ!」

そう娘に伝えられたらいいんだけどなあ。

 

(2022.6.11 記)

No.288 衝立「ぶなの森の四季」

この作品を毎日何度となく見るようになりました

見ると落ち着く

そのたびに落ち着く

 

不思議な作品です

衝立のかもす何かなのか…

 

妻がどうしてこの作品を作ったのか

紹介します

 

きっかけ

妻がこの作品を作りたいと言ったのは5年前です。日本青年館ホールの「木の灯り」制作で1年間木々の様子と成長を毎日のように観察し続けていました。もっと深く知りたいと、私の郷里の秋田を訪ねて営林署関係の方々にもお世話になりました。多くの方々に支えられながら12種の「木の灯り」ができました。それからです。「ブナの森の四季」を表現したいと言うようになりました。

上:日本青年館ホール楽屋前の「木の灯り」 下:「木の灯り」鑑賞会 右:日本青年館 

 

なぜ 「ぶなの森」?

共に教員時代の昔、妻と『ぶなの森は緑のダム』という説明文のすばらしさを話題にしたことがありました。「ぶなの森」がいかに私たちに大切であるのかを分かりやすい文章構成で考えさせます。そんなことがあってから、出かけた先にぶなの森があると家族で又は二人で足を運ぶようになりました。田沢湖高原のぶなの森をまだ小さかった二人の子ども達と家族で散策したのは抱きしめていたい思い出です。二人で訪ねた石神山地のぶなの森の奥にある湖沼の神秘さは今も鮮明です。鳥海山麓のぶなの森の「あがりこ大王」の生命力に感動しました。あの説明文に出合ってから、妻の心にいつもぶなの森が宿っているように私には思えるのです。

日本青年館ホール楽屋前の「ぶなの灯り」

衝立(ついたて)がいい!

妻は作りたい作品イメージから衝立を考え、探していました。幸いに、車で1時間ほどの場所に大きなアンティーク販売店(「古福庵」)が有り、気に入った衝立を求めることができました。驚きました。明治、大正あたりのものが結構良い状態で売られ、また求める方も相当数いらっしゃると知りました。手に入れたあとの問題はステンドグラスをはめるための衝立の加工です。こちらはかつて妻が作成した玄関ドアのパネルを組み込んだ新居を施工された斉藤工務店さんにお願いしました。腕の良い工務店さんで、実際に妻の願い通りに作ってくださいました。独自の工夫も見られ、さすがと感心しました。

 

「春と夏」

カタクリサンカヨウキクザキイチゲ・一人静・水芭蕉シラネアオイ・マイズルソウ・リス・モリアオガエル・ギンリュウソウ・ブナの芽

 

「秋と冬」

アカショウビン秋田内陸縦貫鉄道・ブナの実・オコジョ・ツリバナ・雪うさぎ・牛の親子・冠雪した森吉山頂上・秋のブナとその周辺 田沢湖・森吉山・秋田八幡平にて

 

4年後の第7回作品展(2021年冬)直前に完成

衝立は作ろうとしながらも、ついついオーダー作品等でいつも後回しになってきました。第7回作品展には出品と決め、それでようやく取りかかるようになりました。昨年になって硝子カット作業に入りました。作品展のわずか1週間前にようやく斉藤工務店さんに作品を衝立にはめて頂きました。その時はもう作品展準備で忙しく、完成の喜びを味わうよりも、間に合ったことの安堵感でいっぱいでした。

 

ようやく 今

作品展の半年後の今になってようやく衝立「ぶなの森の四季」を作り終えた満足感を二人で味わっています。私は照明の工夫などしながら衝立「ぶなの森の四季」をながめ、「頑張って作って良かったね」と妻に声をかけます。妻も作品を見ながらうなずきます。

 

(2022.5.28 記)

 

書いて思ったこと

 

この作品を見て私が落ち着くのは

ここに自分が大事にしたいものがあるからかも知れない…

最後は作品と自分の関係なのかなあ

そう思いました

衝立もその効果を十分高めてくれているように思います

 

作品と自分の関係と思えたのは

妻に作品をオーダーで求めて来られる方々を

たくさん見てきたからです

オーダーされる方は

入れたいモチーフを自分の中から探して

妻に要望します

妻はオーダーされた方といつも向き合いながら

受けた作品を作ります

まるで一緒に物語を紡ぐようにです

 

できた作品をご覧になって

みな様 とても喜ばれます

本当に嬉しそうです

その作品に自分の何かをみるのでしょうか

 

そのことを思い出しました

No. 287  一筆箋


古希を過ぎて2年目になるこの春

6年間務めた非常勤の仕事を辞めた

 

どれだけ多くの人に

どんなにお世話になったことだろうか

 

感謝の気持ちを伝えたいが

どうしたら…

 

そうだ! 

一筆箋!

妻にアイデアを伝え

そして 言った

自分で作るからね

 

そして

どうしようもない試作だけは

次々できた

 

もう時間がない!

やっぱりというか

結局 

妻が 全部作った

一筆箋は下部に妻の作品をぼかして印刷した13枚綴り

 

いつもこうだ!

すまんなあ!

 

あとで妻は

あれ 退職祝いよ

 

 

それから

串団子とともに50名の方にお渡しした御礼の一筆箋は

「お世話になりました ありがとうございました」

の直筆にすべきところがプリンター印刷

こんなはずではなかったが…

 

(2022.5.13  記)

No.286 保育園の早朝の鍵開け

4月

妻がお世話になってきた保育園の

早朝の鍵開けの仕事を始めた

いたるところの鍵を開け

掃除をして

早く来た園児たちを見守る

14年前から妻の作品を置いてくださっている保育園の玄関

週3日ならと始めた仕事なのに

毎日毎日

5時前に目が覚めるようになってしまった

 

寝坊して新聞店の店長に

起きろ!起きろ!と

ドアをドン!ドン!されたっけ

新聞配達をしていた学生時代を思い出した

 

2013年3月の玄関

 

現在も鍵開けの仕事をされている元園長さんに

仕事の手順を教わった

 

最後に妻の作品の置かれた玄関に案内された

元園長さんは妻の作品の灯りをともし

「希望の光よ」

とおっしゃった

 

こんなに大事にされていたのか…

 

あらためて

感謝した

 

(2022.4.30 記)

No.285 第7回作品展を終えて

 

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12月7日に第7回作品展を無事終えました。

ご来場くださいましたみな様

ご支援くださいましたみな様に

心よりお礼を申し上げます。

 

第7回作品展会場入口に展示した

妻のご入場者への挨拶文です。

続きを読む

No.284 「一ノ関悠子第7回ステンドグラス作品展」のご案内

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「一ノ関悠子第7回ステンドグラス作品展」

コートギャラリー・国立にて

12月2日(木)より7日(火)まで開催いたします。

時間は11時より18時まで。(最終日は15時)

ご都合がよろしいようでしたら

お越しくださいますようご案内申し上げます。

アクセスは以下のサイトでご覧ください。

コート・ギャラリー国立 (courtgallery-k.com)

 

 

コロナ禍のなか、

ステンドグラスをじっくり作ってみたいと

思われたのか

妻のもとに通う方が

口コミであっという間に10名になりました。

 

ステンド作りに没頭する心地よさを

味わっているように私には見えます。

コロナコロナと言われる日常生活の中で

自分に向き合い自分を取り戻す営みなのかも

しれません。

コロナ禍の中でも、

人間にとってステンドグラスは

見て楽しめる、作っても楽しめる

人間の生みだした奥深い遺産のように見えます。

 

人間の遺産というべきステンドグラスを

どこまで奥深く妻の作品が表現できているか、

私には分かりませんが、

ただひたすら一生懸命作ってきたことだけは

間違いないように思います。

 

それらの作品を

よろしかったらご覧いただければ幸いです。

 

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第6回作品展での会場入り口フロア

 

私は2年前、

妻の第6回作品展を終えてすぐに

次の7回目の会場予約をしました。

その直後からです。

ダイヤモンド・プリンセス号のことが連日報道され、

私たちの日常はコロナコロナの日々になりました。

 

経験のない不安と恐怖を

いつでもどこでも感じる日々が続きました。

勤務先は100人ほどの子どもたちを預かる職場。

感染はどこでどう起こるのか…

絶対に大丈夫というものはないコロナの恐怖。

 

ふれあいの中に

子どもたちの喜びと成長があると思っていた私が

3密回避を説く立場となりました。

子どもたちの生活も私の生活も、

すべてが変わりました。

この現代において

大勢の人が入院できず、

自宅で次々亡くなるなんて…

 

第7回作品展を予約した2年前には

想像もできなかった押しつぶされそうな圧迫感。

ブログを書こうと思う気持ちも萎えました。

 

感染拡大の第5波が、

予想外の急激な減少を見せたところで

今回の第7回作品展のご案内です。

減少してこのまま終わるとも思えませんが、

ご案内のできたことをまず嬉しく思います。

 

コロナでは多くの方が亡くなられました。

知合いの方がお友達の話をされました。

「症状は軽かったけど、後遺症で今だに歩行も大変なの…」

コロナは今も私たちと一緒にいるのです。

そんな中での第7回ステンドグラス作品展でもあります。

 

妻の作品展があって…

あったから前に進むこともできる…

妻も言っていました。

「生徒さんがいる。私もやろうっていう気になれるの。」

人はつながりの中で

少し前に進めるようです。

 

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第5回作品展会場の様子

 

 

 

 

過去に作った妻の作品3点も

お借りして特別展示します。

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「檜山路の灯り」2015年制作 (古山様より)

 

 

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北斎の浪のパネル 2017年制作 (大島様より)

 

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妙高高原のペンション ボンネイジュ」 2021年制作 

(オーナーご家族様より)

 

(2021.11.10 記)