心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.277 ドアの「伊勢物語」- 夢うつつ -

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~お納めした髙野さんから

  その夜にメールが届きました~

 

今晩は。髙野です。

今日は素敵なステンドグラスを取り付けていただき

ありがとうございました。

写真の通り、超素敵な「窓」になりました。

心がワクワクして興奮鳴り止まず?です。

本当にありがとうございました。

 

~翌朝、また髙野さんからメールがきました~

 

お早うございます。

今朝は窓から差し込む朝日(赤い太陽光)を受けて、

雅な世界を醸し出していました。

太陽光線によって色の違いまで

楽しんでいます。

 

メールを見て妻は嬉しそうでした。 

妻が作品を作り続けることができるのは、

ご依頼者に喜んでもらえるからです。

制作過程もご依頼者と歩んでいるかのようです。

 

《制作過程》

1 もと絵

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「小説伊勢物語 業平」髙樹のぶ子著 大野俊明 の挿絵

 

昨年、妻が作った北斎の[神奈川沖浪裏」(注1)を

気に入っていらした髙野さんから、

“そのうちお願いします”とのご依頼がありました。

 

その後、髙野さんが

ステンドをはめ込む枠をドアに設けたと

教えてくれました。

 

2ヶ月半前、

モチーフの絵が決まり、

お宅に招かれてお打合せをしました。

ご指定の絵は「伊勢物語」の「夢うつつ」。

妻は平安時代の絵巻絵は初めてでしたが、

ご依頼者のお陰でいろいろな作品に挑戦できると

意欲満々でした。

 

2 下絵とピース作り

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左:元絵からステンド用にデザイン  右:ステンド用ピース

下絵作業は元絵の良さを

ステンドグラス作品として表す大切な過程。

下絵を何回も描きなおし、

決定前にまた髙野さんにその画像を送っていました。

絵が決定してから、

一片ごとに切ってピースにします。

 

3 ガラス選び

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色合い、透け感など作品表現に直結します。

ピース1枚でもどのガラスをどう使うか

気を遣うところのようです。

 

どんなガラスを使うか、

髙野さんに直接見ていただいて、

説明と相談を重ねて決めました。

 

 

4 ガラス研磨後のピースはめ

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17cm×23cmの四角の中に116個のピース。

小さいピースが多いようです。

 

5 テープ巻きf:id:you3113:20201127214447j:plain

 テープ巻き作業を見ていると、

いかにも職人さんみたいで、

私はこの作業にあこがれます。

巻き方一つで、

作品のできにも影響がありそうで…

ん~、やっぱり見ているだけがいいですね。

 

この後、ハンダ作業になります。

もっと職人さん風になります。

 

6 作品完成

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作品が完成すると出窓に置いてみます。

ガラスが自然の光を背に生き生きするように見えます。

妻も私も出窓に置いて撮る写真が好きです。

 

7 ドアにはめて完成

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最後に、

このような平安の世をステンドで表現する機会を

髙野さんにいただいたことに感謝しています。

 

私は

日本の人々が親しんできたモチーフで

もっとステンドを楽しむ機会が

暮らしの中で増えるといいなあと思います。

私は美術や美学についてはよく分かりませんが、

生活者としての暮らしの気分が変わるということを

私自身実感してきました。

同様にご依頼者の方にも、もしうまれるようでしたら…

妻の励みになると思って

妻のステンド作業を見てきました。

 (2020.12.9 記)

 

(注1)

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髙野さんのご覧になられた北斎の「神奈川沖裏浪」の作品

紹介のブログ → No.201 北斎富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」 - 心に灯るあかり *あとりえ 悠* (hatenablog.jp)