心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.13 「鷲」のパネル 

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 大切なお友だちの素敵な新居に嵌め込んでいただきました。

 

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鷲は、当時6年生だったご長男が描かれた絵をもとにデザインしました。

 

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上下のパネルのガラスやジュエルの色もご長男に決めていただきました。

      写真&文 2006.10~ ステンドグラス *あとりえ 悠*

 

 

~今、飛び立つ~

この作品は6年も前のもので、妻の文章もごくわずかです。
しかし、忘れられない記念すべき大事な作品です。

 

2005年、妻は母親を引き取っての介護と教員の仕事で疲れていました。
それでも、介護も仕事もちゃんとやらなければ・・・
その思いも叶わず、さらに体調を崩して、
秋、教員の仕事を休職しました。

 

妻は大好きなステンドも作れなくなりました。
「ステンドのガラスは全部捨てたい」と言う。
「持っててなんになるの」とも言う。


ステンドをつくるときの妻は一番生き生きしていたのに。
「ガラスを捨てるのはいつだってできるよ」と言うしかありませんでした。
それでも、いつかまたステンドのできる日が絶対来ると思わずにいられませんでした。

 

「新築する我が家に悠さんのステンドを入れたい。もし、できたらだけど。」
ステンドをつくれなくなって1年半もたった頃、

妻は友だちのひださんに言われました。
ひださんは妻の中学の同級生です。
10年ほど前の同窓会で、転居の話などをしたことが縁で、
ひださんが私たちの住む町に引っ越しをされました。
そして数年後に家を新築されました。

 

そのひださんの「つくってくださらない?」の言葉に妻はうなずきました。
自信があったわけではなく、なんとかやってみよう。
一歩を踏み出す気持ちが起こりました。

 

そうして出来たのがこの作品です。
妻はひださんによって、もうできないと思っていたステンドに向かいました。


作品ができた後も妻は度々ひださん宅にバラや草花のお世話をしながら

お邪魔していました。通ってはひださんに

「ステンドを仕事にはしないの」などと励まされました。
人は人によって立ち上がれることが本当にあるんですよね。


そうそう、昨年の個展でのことです。
ひださんはご自身の友人を次から次へとご案内し、毎日のように来てくださいました。
そして我がことのように個展の活況を喜んでくださいました。
人と人の出会いとひださんへのお気持ちにただ感謝するばかりです。


それから、「鷲」はご長男の描かれた絵がもとになっていますが、

「今、飛びたつぞっ!」 そういう「鷲」ですよね。
見れば見るほど私にはそう見えてしかたありません。
妻がこの作品を仕上げるのに、ひださんのご長男の描かれた「鷲」の元絵にも
エネルギーをもらったことでしょう。
この時期の妻に、これ以上ないいい絵をご長男に提供いただいたものです。ありがたいことです。

               2012.7.14 記