心に灯るあかり *あとりえ 悠*

*あとりえ 悠*は妻・一ノ関悠子の小さなステンドグラス工房。妻のつくった作品を写真と文章で紹介します。ステンドグラスのよさが伝えられたら幸いです。

No.310 ステンドの教室~その2「羽生さんの硝子」

妻の2021年第7回作品展会場に展示された羽生ガラス使用の生徒作品

(国立コートギャラリーにて)

誰でも何か夢中でやっていると

様々な出会いが生まれるでしょうが、

妻にお声掛けくださった羽生さんという方のお心意気を

私は忘れることができません。

 

ある時

妻は菅谷先生同門の大先輩の羽生さんに、

「私の持っているガラスを使って」

そうお声掛けをいただきました。

 

妻と私は都心の羽生さんのお宅に車でお邪魔しました。

持ち帰り用のガラスは既に用意されていましたが、

さらに念入りにご自宅を見てまわられ

「あっ、これも持っていって」

 

高価なアンティークガラスを含めて80枚も

それらのガラスを車の荷台いっぱいにして

羽生さん宅をあとにしました。

 

帰りの車の中

妻と私は羽生さんの思いを二人でかみしめるように

帰りました。

 

そうしてすぐ

妻は、羽生さんから頂いたガラスを「羽生ガラス」として

生徒の皆さんに紹介しました。

生徒さんが作品を作る際、

羽生ガラスの使用は無料としました。

生徒の皆さんに大変喜ばれました。

 

「みんなが喜んでいます」と

妻は羽生さんに作品展のご案内を差し上げました。

羽生さんは展示会場に来られ

生徒の皆さんの作品をご覧になり

とても喜んでらっしゃいました。

 

心からステンドを愛する方のお気持ちが、

「羽生さんの硝子」として次の世代の方々に

託され生かされたように私には思えました。

 

羽生さん

あなたのお心意気を

私は大切な宝物を胸に抱えた子どものように

今でも思いだすのです。

(2023.9.26 記)

 

追伸

 「ここまで、曲がる!」妻が手術した手を私に見せます。痛い、痛いと言いながらも機能回復訓練に必死です。その効果なのでしょう。少しづつながら左手が動くようになっています。痛みをがまんできるのは、作りたい作品を早く作りたいという思いでしょう。また生徒さんの指導を8月後半より再開していますが、我が家に来られる生徒さんにも支えられています。妻にとって、作品を作りたくって我が家に見える生徒さんは、自分の分身なのでしょう。つい応援したくなるようで、手の痛みを克服する大きな原動力になっています。

そしてこんな時にも羽生さんを思い出すのです。こういう時だからこそかも知れません。羽生さんの心意気。妻には勇気づけられるステンドを愛する先人なのです。

(2023.10.15)

 

 

10月17日の羽生さんのコメントを受けて下に写真を追加しました。

昨日完成した生徒さんの作品。羽生ガラス使用。